建物区分所有法

 建物の区分所有は、従来、日本では民法第二〇八条で「数人ニテー棟ノ建物ヲ区分シ各其一部ヲ所有スルトキハ建物及ヒ其附属物ノ共用部分ハ其共有二属スルモノト推定ス、共用部分ノ修繕費其他ノ負担ハ各自ノ所有部分ノ価格二応シテ之ヲ分ツ」と規定していたのですが、これはたった一か条でありまして、しかも内容がきわめて簡単であるために、最近盛んに行われるようになった共同建築ビルとか、分譲マンションとか、あるいは都市再開発法に基づく共同ビルとか、そういったような各種のビルの階層別ないし階層的区分所有ということについては、はなはだ不備、不十分であるということで、民法第二〇八条に代わる法律として、「建物の区分所有等に関する法律」が昭和三七年に制定され、昭和三八年四月一日に施行されて今日に及んでます。
 「建物の区分所有等に関する法律」という名前は長いので、ここでは建物区分所有法と略称することにしますが、これは全文三七か条から成っております。この法律が制定された当時は、日本では区分所有の例がまったくなかったわけではありませんが、きわめて少なかったのです。そのために、建物の区分所有という法律関係がどのようなことになるのかということについて、必ずしも十分な認識なり把握なりが、法律家のあいだにおいてもなかったということがいえるのではないかと思います。

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 もちろん、いろいろな文献、とくに外国の立法例などを通して、だいたい予想はしていたのでありましょうし、そういう作業のつみ重ねによって建物区分所有法が制定されたのでありましょうが、実際にこの特別法を制定してそれを実施してみると、立法当時関係者が予想もしなかったような種々さまざまな問題が出てくるとか、立法当時の立法趣旨とはかなり距離のある違った適用の仕方、あるいは解釈運用がなされる条文が生ずるとか、興味あるいろいろな難しい面倒な問題が続出してきているという状況であります。
 そこで、建物区分所有法の立法に関与された東京大学法学部の民法の星野教授が、法律雑誌の「民法関係法改正の諸問題」という座談会で、建物区分所有法が実に不備でいたるところ問題だらけであるというような趣旨のことを言っておられますが、いずれにしても、将来多少の立法的手当をしなければならないことになるのではないかと考えられるわけです。
 それでは、どのように立法的な手当をしたらよいかということになりますと、これがまたなかなか難しい問題ではないかと思うのです。というのは、日本では建物区分所有の歴史的なつみ重ねがほとんどなく、きわめて新しいのです。法律上の制度としては、明治二五年の法典論争で施行が無期延期された旧民法財産編の第四〇条に建物区分所有の規定があり、また、現行民法にはさきほど述べましたように第二〇八条という条文が明治二九年の制定当時からあったのですけれども、実際にはほとんどそれが使われることなく、永い間、いわば眠れる制度であったということなのです。したがって、建物区分所有が実際上社会の注目をうけ広くおこなわれるようになったのは、昭和三〇年代の後半にはいってからのことではないかと思われます。まだ近々十年余りの歴史しかないといっても過言ではないくらいであり、そのように歴史が浅いものですから、これからどういう成長をし発展していくか、まだはっきりしない面もあり、基本的枠組みは固まりつつあるにしても、細部については流動的な点が少なくありません。
 それからまた、建物区分所有のうちでも、とくに一階部分は誰それ、二階部分は何某というように、階層別ないしは階層的に区分所有する場合は、一つには建築技術との関係もあって、まだこれからいろいろ新しい問題が出てくるでしょうし、変わっていくだろうと考えられます。
 それに加えて、都市計画とか都市再開発というような観点からも、いろいろと問題が出てきておりますし、いずれにしても、従来の伝統的な土地建物という考え方では、区分所有というのは必ずしも十分に法律的な規制をすることができない、という問題があるのではないかと思われます。
 さらにまた、とくに実際上しばしば問題になる事例としては、例えば、分譲マンションの場合ですと、その区分所有者ないし区分所有者(賃貸人)からの賃借人たちの間で、共同の建物部分とか敷地の管理をめぐって、いろいろトラブルが起きるという事例があるし、あるいはまた、分譲した不動産会社ないしその系列管理会社と分譲をうけた区分所有者との間のさまざまなトラブルとかいったようなことについても、一つには、法律上の制度の不備、欠陥という点もあると思います。しかし、それと同時にまた、そこに住んでいる人たちの意識や生活の仕方・態度等にも、相当問題があるというように考えられます。
 そういったようなことを考えてみますと、単に法律の条文をあれこれと改正すれば、それでうまくいくとばかりもいえないのではないかということがあり、いずれにしても非常に難しい。それからまた、日本では、従来、建物の区分所有に関する研究の蓄積に乏しく、判例もまたごくわずかしかないという状況のなかで、具体的にどのように改正するかということになりますと、法律上の議論がはっきりしないこともあって、実際には、いきなり建物区分所有法を改正するのは非常に難しいのではないかというように思われます。

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