法定共用部分と規約共用部分

 共用部分の区別ないし種類として、法定共用部分、規約共用部分というのがありますが、問題は法定共用部分、規約共用部分とは何かということです。そしてまた、法定共用部分といういい方は適当ではないのではないかと考えられます。建物区分所有法が制定された当初は、そういういい方でよいのではないかと思って、そういういい方をしてきたのですけれども、考えてみますと、法定共用部分といういい方をすると、これはもう法律の上で当然そういうことに決まっているという感じがするのです。ところが、一つの建物部分が法定共用部分であるといいましても、その一棟の建物全体の区分の仕方によって専有部分ないしその一部になることもあり得るわけです。そういうことからすると、いわゆる法定共用部分というのは、実は法律で共用部分が定まっているというよりは、むしろ当事者の区分の仕方によって定まってくるというほうがピッタリするのです。もちろん、これは建物部分としての共用部分についていっているわけです。したがって、法定共用部分でなくて性質・構造上当然の共用部分とか、あるいは単に当然共用部分というべきではないかと思いますので、ここでは性質・構造上当然の共用部分と呼ぶことにします。なお、規約によって共用部分となるものがありますが、これについては規約共用部分という呼び方でなんら問題はないと思います。

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 この二種類の共用部分はそれぞれ違うわけで、このことは建物区分所有法第三条の第一項と第二項で規定されています。そして、第一項によると、共同の廊下とか階段室というのは当然に共用部分となる、つまり、性質・構造上当然の共用部分ということなのです。
 しかしよく考えてみると、どういう建物部分が性質・構造上当然の共用部分であり、どういう建物部分が規約共用部分であるかということは、はっきりしているような、はっきりしていないような問題でありまして、これについては法務省の民事局の通達・回答や裁判所の判例がいくつもあります。
 例えば電気室とか機械室とか、あるいは管理事務室というような建物部分が、性質・構造上当然の共用部分か規約共用部分かで問題になっています。住居専用の一棟二戸建の単純な棟割長屋の場合はともかくとして、いわゆる鉄骨鉄筋コンクリート造の中高層あるいは超高層ビルディングでありますと、ビル全体のための電気とか上下水道、冷暖房等々の各種の機械装置が設けられているし、またそういうものをコントロールする設備がビルのどこかに設けられているのですが、そのような電気とか各種の機械装置などを操作し制御する設備のおかれている部屋を電気室とか機械室というように呼ぶのであって、この種の電気室とか機械室を性質・構造上当然の共用部分とみるべきか、あるいは規約共用部分とみるべきかに関し、建物区分所有法の立法当初と現在とでは、だんだんと解釈が変わってきているということができます。
 建物区分所有法が判定された当時は、立法に関与された関係者の解説や説明によりますと、電気室とか機械室とか、あるいは管理事務室などというような類いの部屋はすべて規約共用部分であって、規約にそのように定めなければ、建物区分所有法でいう共用部分にはならないということであったのですが、その後電気室、機械室は原則として性質・構造上当然の共用部分とみるべきであるという通達が出されたわけです。
 それからまた、いわゆる下級審判例ですけれども、電気室とか機械室が管理人室、管理事務室を兼ねているというか両者が一体をなしている場合について、そのような建物部分は規約で「これを共用部分とする」と書いてなくても、性質・構造上当然の共用部分であるとみるべきであるという判例が出ています。
 そういうような状況にありまして、いずれにしても、その種の建物部分をどう扱うかは一つの大きな問題です。
 考えてみると、電気室とか機械室とか、あるいは管理事務室などというような類いの建物部分は、仮に規約で定めていなくても、常に性質・構造上の共用部分といいきってよいかどうかということになりますと、これまた問題のところではないかと思います。
区分所有
 例えば図は地上十階地下一階の大きなビルディングですが、このビルを仮にアーイの断面で左右二つの建物部分に区分して、甲部分をM会社、乙部分をN会社が所有するというような場合において、両方が共同で地下一階に電気室、機械室を設けないで、それぞれ各自自前の電気室、機械室を設けることは、もちろんかまわないのでありまして、そのような場合には、当然電気室、機械室はそれぞれの専有部分ないしその一部ということになります。この点はM、N両会社が各自別々に地上一階に管理事務室を設けた場合も同じことです。
 結局のところ、電気室とか機械室とか、あるいは管理事務室などというような類いの建物部分が、性質・構造上当然の共用部分であるか、それとも専有部分ないしその一部であるかということは、建築上の設計図の引き方によっても決まってくるでしょうが、しかし、区分の仕方などの関係もあるのであって、だからその建物部分が電気室とか機械室とか、あるいは管理事務室だからということだけでは一概にどちらともいいきれないと思います。
 したがって、そういうことからすると、従来の一般の見解は必ずしも適切でなかったということになります。また、ビル全体の利用のために必要な各種配線配管設備の元締めになる装置を設けた部屋は性質・構造上当然の共用部分とするというように、立法的にはっきりさせたらよいのではないか、というような意見もあるかと思いますが、しかし、これもさきほど述べたようなことからして適当とはいえないし、たいして問題解決に役立たないだろうと思います。
 むしろ大事なことは、根本的には一棟の建物をどのように区分して、どの建物部分を専有部分とし、どの建物部分を共用部分とするかという区分の仕方によって、同じ建物部分でありながら、場合によっては専有部分ないしその一部になるだろうし、場合によってはまた共用部分になることもあるということ、つまり絶対的にこうだというようには決まらないし、決められないということを起点として、建物区分所有法の解釈運用を考えることだと思うのです。いうなれば建物部分の性質の相対性ということです。
 それから、仮に電気室とか機械室とか、あるいは管理事務室というのが専有部分の一部ではなくて共用部分だとされる場合においては、それが性質・構造上当然の共用部分であるか、規約共用部分であるかが問題になります。
 例えば、分譲マンションにおける売買契約書とか管理規約書などをみてみますと、そこでは建物の基体部分とか共同の廊下、階段室、エレベーターとか、電気機械室、管理事務室等々が共用部分として羅列されておりますが、その中には性質・構造上当然の共用部分もはいっているし、また規約による共用部分と目されるものもはいっているし、要するにごちゃまぜに全部並べて、それですませてしまっているのですから、今さらそれらの共用部分が性質・構造上当然の共用部分であるか、規約共用部分であるかということを問題にしなくてもよいのではないかというように思っている向きもあるかもしれませんが、むしろ、そのような売買契約書、管理規約書などのほうこそ問題だと思います。しかし、そのような具体の契約書、規約書類の吟味は、ここではさておくこととして、次に性質・構造上当然の共用部分と規約共用部分とを区別する標準ないし基準について、解釈論的に検討することにします。
 その点についてですが、電気室、機械室などという名前で呼ばれる建物部分に電気設備、機械設備が設けられる前、設けられた後、さらにそれらが撤去された場合で、その建物部分が性質・構造上当然の共用部分であることについて影響がないかどうかを考えてみるとよいと思います。
 例えば、区分所有されている中高層ないし超高層ビルの地下一階に電気室、機械室があり、そこにはそのビル全体に必要な電気、上下水道、冷暖房等々に関する諸設備の元締めになる設備が設けられている場合には、さきほど言及した通達や判例の見解ですと、そのような部屋は別に規約で定めなくても当然に共用部分である、つまり性質・構造上当然の共用部分であるということなのです。これは妥当な結論であり、モの限りではなんら問題がないといってよいのですが、しかし、それではその部屋にあるそういう設備を全部撤去し、もう再びこの部屋にはおかない、もっと別の管理しやすい場所におくということで撤去してしまった場合においてはどうかということなのですが、この場合であっても、従来その部屋にそういう設備がしてあったのだから、撤去後も依然としてその部屋は性質・構造上当然の共用部分であるとみるべきであるというのだとすると、そのような見解にはとうてい肯定し難いものがあるといわざるを得ないのではないかと思います。
 むしろ、そうだとすると、建物区分所有法制定当初いわれていた見解、つまり、ビル全体のために必要な電気、上下水道、冷暖房などの諸設備の元締めになる設備が設けられている電気室、機械室であっても、規約によって共用部分とするということが定めてない限りは共用部分とはならないという考え方のほうに分があるようにも思われます。
 結局、この考え方ですと、その種の建物部分は専有部分ということになり、特定の者の所有に属することになります。それではそのような電気室、機械室が仮に特定の区分所有者の専有部分であるという考え方によるとして、その部屋の中にビル全体のために必要な諸設備の元締めになる設備が設けられている場合、その点をどう説明するかですが、債権関係または物権関係としていろいろな法律上の説明が可能だと思いますけれども、いずれにしてもそこになんらかの契約関係を設定し、あるいは擬制せざるを得ないということになり、契約関係だとすると第三者との対抗関係はどうなるかという問題も出てくるでしょうし、これはかなり厄介なことになってくると思います。
 そうしますと、この種の建物部分は、やはり性質・構造上当然の共用部分であるというふうにしておいたほうが、より実際に妥当する適当なことなのではないかというような感じがするのです。しかし、さきほどいったように、その部屋から機械設備を撤去してしまったのちはどうするかということになると、性質・構造上当然の共用部分だという考え方では、うまく辻つまが合わないようにも思われます。
 ということは、規約による共用部分であるという考え方をとってもうまく説明のできない、あるいは不都合な面がある。さらばといって、性質・構造上当然の共用部分であるというようにいっても、それでうまく説明のできる点もあるけれども、うまく説明できない点もあるというようなことで、どちらの考え方にも問題があるように思われるのです。
 窮極的には共用部分というものをどう考えるかという問題にほかならないと思うのですが、多少観点を変えて、共用部分とされる原因、つまり共用部分の成立原因、発生原因のほうから考えてみると、さきほどの割り切れない問題も案外うまく割り切れるのではないかと思っている次第で、次にそのような観点から検討することにします。
 従来、一般説は、ある建物部分が共用部分になる法律上の原因には二つもり、一つは規約による場合、もう一つは性質・構造上当然そうなる場合というように考えてきているのです。もちろん基本的にはそれでよいのでしょうけれども、しかし、さきほど挙げた電気室、機械室、管理事務室などの建物部分が性質・構造上当然の共用部分であるかどうかという問題との関連において、共用部分の成立原因、発生原因を考え直してみるべきではあるまいかということから、その点に関し、私はかねてから次のように提案しているのです。
 共用部分の成立原因、発生原因には三つありまして、第一の成立原因、発生原因は規約です。本来、専有部分となるに適する建物部分について、これを区分所有者全員が共用部分にしようということでそのことを建物区分所有法第二三条以下に基づく規約で定めれば共用部分になります。例えば、いわゆるゲスト・ルームはこれに当る場合が多いでしょう。
 第二の成立原因、発生原因は建物の区分ないし区分の仕方です。ある部屋が専有部分となるか、共用部分となるかということは、このビル全体をどういうふうに区分するか、つまり、言い方を換えれば、一棟の建物のうちのどの建物部分を専有部分と決めるかということによって、あとの共用部分ということは自動的に決まるのであって、それは専有部分の位置づけの問題であるということです。なぜかといいますと、区分所有の場合は一抹の建物は必ず専有部分と共用部分の二種類の建物部分に区分けされるのであって、専有部分でもない、共用部分でもない建物部分というのはあり得ないことになっているからです。例えば階段室、廊下がある特定の区分所有者だけの専有部分の一部をなすものであるか、それとも、関係区分所有者らの共用部分であるかということは、いま述べた建物区分の仕方によって決まるのであって、その建物部分が階段室だから、あるいは廊下だからということで当然に共用部分となるわけではありません。
 第三の成立原因、発生原因は、共用の機械、器具、設備の恒常的設置であって、そのような機械、器具、設備が恒常的なものとして設置された部屋は当然に共用部分ということになります。
 そして、共用部分の成立原因、発生原因の第一が規約共用部分という観念と結びつくのです。また、共用部分の成立原因、発生原因の第二が性質・構造上当然の共用部分という観念と結びつくのはもちろんですが、しかし、共用部分の成立原因、発生原因の第三も性質・構造上当然の共用部分という観念と結びつくのではないかと考えております。
 例えば、さきほどらい何回もとりあげた電気室、機械室などというような建物部分は、共用部分の成立原因、発生原因のいずれとも結びつくものであるということができます。すなわち、一棟の建物の区分の仕方いかんによって共用部分となるし、規約によって共用部分とすることができますが、しかし、そうではなくて、共用の機械、器具、設備をその部屋に恒常的に設置することによって、その建物部分(部屋)が共用部分となることもあるわけです。いま述べたことをさらにやや詳しくいいますと、ある特定の部屋を共用の電気室、機械室にしようということで、まだ共用の電気設備、機械設備を恒常的に殷殷してはないが、しかし、規約でその部屋を共用部分と定めれば、その時から共用部分になりますし、また、規約に定めていなくても、ビル全体のために必要な電気設備、機械設備をその部屋に設けようということでそれらの設備を設置したら、その時点で当然に共用部分になるということであり、そうである以上、その部屋からそういう設備を撤去してしまって、再びその部屋には設けないということであれば、その時点でその部屋は性質・構造上当然の共用部分でなくなってしまうことになります。しかし、あらかじめ規約でその部屋を共用部分とすると定めてあれば、規約を改正しない限りは、その部屋に共用の電気設備、機械設備の恒常的設置のいかんに関係なく、依然として共用部分ということになります。その他、建物区分の仕方によって電気室、機械室が当然に共用部分となることがあることはもちろんです。これを要するに、電気室、機械室が共用部分であることは必ずしも規約によるとは限らないということです。そしてまた、以上のことは管理事務室についてもだいたい同じようにあてはまると思います。
 そういうことからすると、電気室、機械室あるいは管理事務室が規約共用部分であるか、性質・構造上当然の共用部分であるかを決める標準ないし基準は、規約の定めの有無、建物区分の仕方、共用の各種設備の恒常的設置の有無の三つでもって、あとの二つはいずれも性質・構造上当然の共用部分であることを決する標準ないし基準であり、はじめの一つ、つまり規約の定めの有無は専ら規約共用部分であることを決する標準ないし基準であるということです。根本的には立法批判にまでなってしまうのですが、建物区分所有法で建物部分としての共用部分を規約共用部分、性質・構造上当然の共用部分の二種類に分けるに当って、その分ける標準ないし基準に関する認識、把握に問題があったというように思われます。
 つまり、さきほど挙げた三つの標準ないし基準のうちで、第一の、規約の定めの有無、第二の、建物区分の仕方の二つについてはかなり認識、把握がされていたにしても、第三の共用の各種設備の恒常的設置ということは、成立の標準ないし基準としてはほとんど認識、把握されていなかったのではないか。そのために、規約共用部分と性質・構造上当然の共用部分との違いというのが、あいまいになってしまい、解釈上、議論が紛糾しているのだと思います。
 それでは立法が悪いのだから、現行建物区分所有法に改正を施せばよいのでぱないかというようなことになるかというと、必ずしもそうはならないと思うのです。立法的に新たに条文を設けて、電気室、機械室あるいは管理事務室は、性質・構造上当然の共用部分であるというようにしても、それだけでは問題はたいして解決されないと思います。というのは、すでに説明しましたように電気室、機械室あるいは管理事務室というのは、一概に共用部分であるとはいえず、専有部分ないしその一部をなすものであることもあるからです。
 そうなってくると、建物区分所有法に明文規定をおいて立法的に解決するといっても、おのずから限度があるのでぱないかということと、もう一つは、諸外国の立法例をみても、共用部分というものの取り扱いはなかなか難しいし、条文で紬かく決めれば決めるほど、一面においてははっきりしてくるけれども、他面において硬直的になって動きがとれなくなるおそれもあるわけです。
 したがって、電気室、機械室、あるいは管理事務室について、これを法律上当然の共用部分であるとか、性質・構造上当然の共用部分であると仮に条文で明定いたしましても、これに対する例外を認めざるを得ないことになってきて、結局、条文で明定してもそうたいしたメリットはないのではないかとさえ思われます。
 そのようにみてきますと、一応現在のところは、さきほど述べたような点で問題はあるにせよ、とにかく解釈論でいくのが適当であろうかと思います。その場合留意すべきことは、電気室、機械室あるいは管理事務室というのは一義的に把握することはできず、一種の相対性の原理でいくほかないということです。

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