共用避難施設の区分所有

 ベランダやバルコニーというような名前で呼ばれる建物部分に関連した問題では、ビルには建築基準法などの関係からしますと、共用の避難設備、避難施設というものは当然に必要なものとして設けることが義務づけられているのですが、しかし建物区分所有法の規定の明文上では、共用の避難設備、避難施設という言葉は一つもみあたらないのです。
 つまり、共用の避難設備、避難施設というのはどういうことになるのかということについては、建物区分所有法はなんら明定していないのですが、これらは当然区分所有者らの共用ですから、解釈は性質・構造上当然の共用部分であるという理屈になるだろうと思います。

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 ここで問題にしたいのは、とくに分譲マンションの場合に関してなのですけれども、ベランダとか、バルコニーというような名前で呼ばれる建物部分が共用の避難通路、避難施設を兼ねていることが圧倒的に多いようで、この点に関してなのです。
 建築基準法の第三五条とこれに基づく建築基準法施行令第一二〇条以下、とくに第一二一条二項但書などを見ますと、ある一定規模以上のビル建築の確認申請あるいは許可申請をするときには、そのビルの共用の避難施設はどうなっているか、というようなことをはっきりさせておかなければいけないことになっておりまして、例えば共用のベランダとかバルコニーというものが、火災等々の有事の際には当然共用の避難施設として関係者が利用できるような構造に設計し施工してあれば、それ以外の特別の共用の避難施設などを設けなくてもよい、というようにされることもあります。
 もっとも、例えば十五階建以上のような高い建物の場合には、建築基準法施行令第一二二条、第一二三条で特別の避難施設を設けなければいけないことになっているようですけれども、いずれにしても三階、四階あるいは五階建程度のマンションですと、各共有部分、つまり住戸ごとの出入口、玄関のほかに、ベランダとかバルコニーが共用で避難施設になっているということであれば、これでいわゆる二方向避難が可能なわけですから、それ以外に特別の避難施設は要らないことになっておりますが、そういう実態からすると、ベランダとか、バルコニーという名で呼ばれている建物部分が共用部分なのか専有部分の一部なのかということを検討する上で、それが共用の避難設備、避難施設を兼ねている場合には、そのような共用の避難設備、避難施設を兼ねていることを無視することはできないと思います。
 ところが従来の議論をみてみますと、そういう点についてなんら考慮されていないようでありまして、さぎほどの話をもう一度むし返すようなことになるのですが、ベランダとかバルコニーというものが共用の避難設備、避難施設を兼ねている場合には、共用の避難設備、避難施設が性質・構造上当然の共用部分であることからしますと、そのようなベランダ、バルコニーは性質、構造上当然の共用部分と考えるべきであって、専有部分の一部と考えるべきではないか、ということになってもおかしくはないように思われるかもしれません、しかし、私は必ずしも当然にそういう結論になるとは限らないと思います。
 というのは、ベランダとか、バルコニーを専有部分の一部というように考えて、なおこれに共用の避難設備、避難施設としての役割も認めるというような論理も可能だからです。例えば分譲マンションにおける隣との仕切りが、容易に壊せる薄い板でできているベランダとかバルコニーの場合を考えてみますと、これには専用性と共用性という二つの性質かおるということができると思います。
 専用性ということはどういうことかといいますと、ベランダとかバルコニーというのは部屋ないし居室の延長、つまり居住空間の延長部分ということができ、また庭の代用というような役割があるということです。言い換えると、ベランダとか、バルコニーというようなものは、これに接する部屋ないし居室の所有者なり居住者の、個人的な居住性を高めるための私的な空間なわけで、これが専用性です。ところが、このベランダとか、バルコニーが、さらに共用の避難通路、避難施設というように設計されているということでありますと、そういう面では共用性があるということができます。
 しかしながら、専用性と共用性というのは、ある意味では矛盾する性質あるいは機能であって、完全に同等の比率で両立することはできないのではないかという感じがします。そうすると、どちらか一方を中心にこれを第一次的に考え、他方を第二次的なものとして考えざるを得ないというようなことになるのですが、その場合、考え方としては二通りありうるのであって、一つは、専用性を中心にしながら共用性をとり込むという考え方であり、他の一つは、それとは逆に共用性を中心にしながら、専用性をとり込んでいくという考え方です。さきほど述べたのは後者、つまり共用性を中心にしながら専用性を考慮していこうという考え方です。したがって、ベランダとかバルコニーというのが、一朝有事の際には共用の避難通路、避難施設として使われるように設計されている場合には、そういう面に重点をおいて性質・構造上当然の共用部分とみるのですけれども、普段は、一種の私的な空間として、これに接する居室部分の所有者の専用使用にゆだねられているというようにみるわけです。
 これに対し前者、つまり専用性を中心にしながら、共用性も考慮しようという考え方では、どういうような理論になるかというと、次のようなことになります。すなわち、ベランダとかバルコニーというのは、各仕切られている範囲はそれぞれの専有部分に属しているが、ふつうの専有部分、つまり本来的な専有部分と追って、一朝有事の際にはそこを通ってお互いに隣に逃げ出せるようになっていて、そこにはそのような特殊な通行権があり、これは一種の役権ないし相隣権ですが、ベランダとかバルコニーはそういう特殊な通行権の付着した専有部分であるということです。
 法律上の理論としてはどちらも成り立つと思うのですが、しかし、その点についても従来はなにも議論されていないようです。とにかくそういう二つの考え方かおり得るのですけれども、共用部分だが特定区分所有者の専用使用にゆだねられているという考え方のほうが、実際上適当なのではないかと思います。
 それについては、いろいろな理由があるのですが、一つは通行権の付着している専有部分という解釈は条文の解釈としてはかなり技巧的であって、法律の専門家ならば、役権あるいは相隣権として通行権ということは問題ないかもしれませんけれども、ふつう一般にはなかなか理解してもらいにくいところがあるのではないかということ、また専有部分だということであれば、その所有者は自分の思うように使ってよいのではないかと思い込んで、そこに段ボールを積み上げたり、いらないものをしまうための物置小屋を設けたりして、結局一朝有事の際には境の仕切りをこわして隣にいこうとしても、隣にそういうものがあってどうにも通れないということになるおそれが大きいこと、さらにまた、日本の分譲マンションの区分所有者、入居者の利用状況からみてみると、共用の避難設備、避難施設を兼ねたベランダとかバルコニーを専有部分だというようにいいきってしまうと、避難通行権というようなものは無視される、あるいは軽視されてしまうのではないかという感じが強いことや、日本では共用部分だけれども専用使用にゆだねられているという専用使用の考え方がかなり不動産業界を中心に定着してきており、そのような実情からするとそのほうが一般にわかりよいということです。

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