建物区分所有法の規定と敷地の権利の種類

 建物の区分所有、とくに横割りの区分所有、あるいは横割りでかつ縦割りの区分所有における敷地の取り扱いについて、建物区分所有法では次の三か条があります。一つは第六条で、区分所有者の敷地に関する権利は、先取特権の行使、つまり競売の場合には当然、同人の専有部分、共用部分に関する権利とともに一体的に取り扱われなければいけないというような趣旨の条文があり、それから第七条で、敷地に関する権利を失ったあるいは権利を有しない区分所有者がいる場合には、その区分所有者の専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができるということを定め、もう一つは、第二三条で、敷地も含め建物や附属施設の管理とか使用に関する区分所有者相互間の事項について規約を定めることができるという条文があります。

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 しかし、この三つの条文をみても、敷地の権利が、どういう性質の権利でなければいけないか、つまり所有権でなければいけないのか、借地権でもよいのか、また借地権の場合地上権でもよいのか、賃借権でもよいのか、あるいはまた地上権でもない賃借権でもない、無償の使用賃借上の権利、つまり使用借権でもよいのかということについて、何も明文で定めてないわけで、建物区分所有法上何も明文規定をおいていないということは、民法の一般原則が適用されるということです。
 それからまた、敷地について、区分所有者たちが所有権を有する場合、それは単独所有あるいは個別所有なのか、共同所有なのか、仮に共同所有であるとしても、それは共有であるのか、合有であるのか、いろいろあるのですけれども、それらのうちのどれであるのかということについても建物区分所有沢は明文規定で何も定めておりません。なんら明文規定がないという点は、所有権の場合だけでなく、地上権、賃借権などの場合も同様です。つまり、これらの点についても全部民法の一般原則にゆだねるということなのです。
 ところが実際の実務においては、とくに分譲マンションの場合が中心かもしれませんけれども、建物の区分所有における敷地は、所有権の場合は共有、借地権の場合は準共有であり、これらについては民法第二四九条以下の共有規定が適用されるというようにいわれております。確かに、はじめから分譲マンションを建ててそれを販売、つまり分譲しようということで計画的に区分所有関係を成立させ敷地の権利関係を設定する場合には、共有でも準共有でもはじめからきめられるから問題ないし、共有、準共有でさしつかえないと思います。しかし、はじめは別に区分所有ではなかったのだけれども、途中からあるいは後発的に区分所有になったような場合には、必ずしも土地の権利関係が共有かどうか、はっきりしないことが少なくないようです。そのため共有とも考えられるし、そうでないとも考えられるし、ということで関係者間に紛争が生じ、裁判にもなるのであって、事実下級審の裁判例ですけれども、建物の横割りの区分所有ないし横割りでかつ縦割りの区分所有における敷地の権利関係をめぐっていくつかの判例示あります。それらの裁判例でみる限りにおいては、敷地の権利関係は共有よりもむしろ個別所有の方が普通のようです。とくに、これまで実際上裁判で問題になった敷地の権利は、いずれも借地権でありますので、借地権の場合に焦点を合わせていいますと、共同借地権ないし借地権の準共有というよりも、借地権をそれぞれ個別にもっているという個別借地権のほうが多いのです。しかも、個別借地権といっても、その場合さらにまた考え方が二つに分かれていて、第一は個別借地権が階層別にあるという考え方です。これは、例えば三階建の建物があって、一階部分を甲、二階部分を乙、三階部分を丙がそれぞれ所有し、その土地についての借地権を甲、乙、丙の三人の区分所有者が個別にもっている場合の考え方として、一階の区分所有者甲は一階の建物部分が位置する土地部分(空間)についての借地権をもち、二階の区分所有者乙は二階の建物部分が位置する土地部分(空間)についてこの借地権をもち、三階の区分所有者丙は三階の建物部分が位置する土地部分(空間)についての借地権をもっているというように、各自の借地権がそれぞれの所有する建物部分の位置に応じて、階層的にあるというようにみようということなのです。多少言い方をかえれば、各自の所有する建物部分の位置に対応して、それに必要な借地権が積み上げられているという考え方であって、この場合、民法第二六九条ノニの区分地上権の規定が根拠になりましょう。
 それから第二の考え方は、各自がそれぞれ借地権をもっているが、その借地権はいねば比喩的な表現になりますが、ちょうど地面つまり地表の上に重畳的に集約されているというようにみる考え方です。
 第一の考え方と第二の考え方のちがいは、簡単にあるいは粗雑にいうと、別個借地権が立体的な厚みのあるものとして積み上げられているかどうかということです。
 東京地裁の昭和三四年一〇月二一日の判例は、第二の考え方を採用しています。これに対して、神戸地裁の昭和三九年六月六日の判例は、第一の考えを採用しています。
 ところで、法務省の民事局で出された回答では、民法第二六丸染ノニを適用して、区分所有者らの地上権の登記、つまり区分地上権の登記をすることができるかどうかという問い合わせに対して、それはできないと解するのが相当であるというのがあります。
 これは、地上権の場合に関してですが、おそらく賃借権の場合に関しても、民法第二六九条ノニに準じて、いうなれば区分賃借権の登記をすることはできないということだろうと思われます。とにかく法務省では、登記との関係においてですけれども、第一の考え方による区分借地権について消極的な見解をとっています。それでは、法務省では賃借権の場合に関し、第二の考え方による登記を認めるかどうかですが、この点については直接の通達、回答がありませんからはっきりしませんが、第一の考え方による登記を認めない以上、第二の考え方による登記も認めないのではないかと思われます。ですから登記実務との関わり合いでいうと、借地権の準共有しか認められないということであるといってよろしいでしょう。
 それでは、いったい法務省の通達、回答のほうが正当か、それとも裁判所の判例のほうが正当かということですが、これは一概にどちらともいいきれないのではないかと思います。法務省の通達、回答は、法律の解釈にはちがいないのですが、しかし、法律の解釈といいましてもモの性格上、行政指導的なニュアンスがかなり強いものであるということができましょう。つまり、分譲マンションを売り出す業者たちが敷地についてあまりへんな権利関係をつくらないように規制するという立場から、法務省の担当者が望ましい、あるいは適当と思われる一つの理想的な権利関係というものを頭の中において、なるべく実際の権利関係の設定をそちらのほうに誘導しようという気持が強く、民法第二六九条ノニで規定する区分地上権的な考え方は、建物の区分所有における敷地の権利関係として適当でないとみているので、その結果そのような問い合わせに対しては認めないという通達、回答が出てくるのであり、そのような立場からすると必ずしもおかしいとはいえないと思うのです。
 ところが、裁判所の判例の場合、その事案はいずれもはじめから区分所有しようということで権利関係が設定されたのではなく、当初は共同住宅の各戸の賃借権であったのですが、そのうちに持主が代わったり、賃借人が変わっていくうちに、その賃借人のうちのある一人がその共同住宅の大半の住戸を買いとってしまい、他の賃借人がその余りの住戸を買いとってしまうということで、結局区分所有関係にあとからなってしまった場合であって、その場合にきちんと敷地の権利関係が約定されていれば、もちろんそれにこしたことはないのですけれども、素人にそこまで期待しても無理なことが多く、いずれにせよ、とにかく敷地の権利関係がうやむやなままになっていて、そのためにもと賃借人であった区分所有岩間で争いになり、どちらも譲らないということで訴訟となったということのようです。
 裁判所としては、その紛争の焦点である敷地の権利関係について判断をしないわけにいかないわけですが、裁判所の考え方というのは、おそらく共有というのは相続とか法律の規定による場合は別として、当事者間に共有関係を成立させようという明示あるいは黙示の合意がなければ共有にはならないということなのだと思うのです。借地権の準共有の場合についてももちろん同じような考え方だと思います。したがって、あとからいわば自然発生的に区分所有となるに至った場合には、そういう合意がまったく認められないことが少なくなく、このような場合には、どうしても敷地の権利関係を個別的なものとみないわけにはいかなくなるわけです。
 このようにみていくと、裁判所の判例が間違っていて、法務省の通達、回答が正当であるとか、あるいは法務省の通達、回答が間違っていて、裁判所の判例が正当であるというような言い方はできないというか適当でないように思うのです。
 というのは、つまるところ法務省と裁判所では立場が違うからです。法務省の通達、回答は、これから新たに敷地の権利関係を設定しようとする者に対して、これこれすべきであるというようにいっているのですが、裁判所の判例は、敷地の権利関係が明確でないことから生じた紛争を解決するため、権利関係を確定する立場でものをいっているのですから、ものの見方が違うし、したがってまた見解が違ってくるのは無理からぬところで、それをとらえて不都合であると決めつけるのはいささか問題であろうと思います。
 むしろ、建物区分所有法の適用対象の多様性ということからいえば、敷地の権利関係が多種多様であってもやむを得ないともいえるのですが、しかし、やむを得ないということで放置しておくわけにもいかないでしょうから、種々さまざまな場合を通じて、そこに統一的な理論づけが考えられるかどうかについて検討してみることも意味なしとはしないでしょう。

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