分譲マンションの土地の区分所有の権利関係

 土地と建物との関係なのですが、日本ではご承知のとおり、土地と建物は別々の不動産だということになっておりまして、これは民法上異論のまったくない明らかなこととされています。しかしながら、建物というのは土地なくしては実際上は存在し得ないわけです。したがって、そうである以上、建物の権利関係と土地の権利関係というのは相互に一種の対応関係にあり、建物の権利関係がこうだから、その反映、投影として土地の権利関係もこうなるというようなことかあるのではないかと思われるのです。
 その点について、建物の区分所有の問題とは離れるかもしれませんけれども、次のような場合を引き合いに出してみたいと思います。例えば一筆の土地とその上に一棟の建物を甲野太郎が所有していて、その建物の所有権を甥である乙野次郎に贈与したが、土地の権利については贈与するともしないともなんら明約しなかった場合、乙野次郎は建物の所有権を贈与によって取得しただけで、土地の権利のほうはなにも取得しておらず不法占拠になるのかというとそうではなく、なんらかの権利を取得しているはずです。
 というのは、土地の権利について特別はっきりした明示的な約束がないだけのことで、甲野太郎と乙野次郎との間には暗黙の了解、つまり黙約があるとみるのが至当だからです。それではどういう黙約なのかですが、いろいろ考えられますけれども、甲野太郎は乙野次郎に建物の所有権を無償で与えたのですから、少なくともその建物を維持するに必要な範囲での土地を無償で使わせるということなのではないか、つまり贈与というのは建物の所有権を無償で譲渡するのですから、それに必要な権利として、土地の利用権を無償で同人に与えるということに通常はなると思うのです。
 もちろん、その場合に土地の利用権が民法第五九三条以下の使用貸借上の権利、つまり使用借権なのか、それとも民法第二六五条以下の地代の支払いを伴わない無償の地上権なのかという問題がありますけれど、いずれにしても建物の所有権を無償で与えるのであれば、その土地の利用権も無償で与えるというのが筋であろうと思います。
 このようにいろいろ考えてみますと、建物の権利関係と土地の権利関係の二つは、互いにいわば対応関係に立っているということがいえるのであって、両者の対応関係ということは、建物の区分所有における建物の権利関係と土地の権利関係の二つの関係についてもいえるわけです。

スポンサーリンク

 建物の区分所有の場合、その一棟の建物は専有部分と共用部分の二つに必ず分けられるのですが、そうすると、少なくともその建物のある土地、つまり敷地は専有部分の存する敷地部分と共用部分の存する敷地部分の二つに分かれるとみても、理論的にはおかしくないというように考えられます。
 それ以外の周辺の土地はどうかというと、共用の通路の存する土地部分、それ以外の土地部分というように分かれるとみてもよいのではないだろうか。またそういうようにみるということは、実際的にもそれほどかけはなれたみかたであるとは思われません。
 建物の区分所有における敷地、つまり土地がいま述べたように四種の土地に分けられるからといって、それらの土地がそれぞれ登記簿上筆を異にする各別の土地として登記されるべきであるということにはなりません。むしろ、建物の区分所有における土地は全部合わさって一筆の土地として登記簿上登記されていることが望ましいと思います。しかし、実際には必ずしも一筆の土地として登記されているとは限らず、そうではない場合がかなりあるようです。
 というのは、建物の区分所有における土地は全部合わせて一筆の土地として登記されてなければいけないとか、あるいは分筆を禁止するというような、法律上の制限は現在までのところ一般にはないのですから、事実上、分筆されることはどうにもしようがないし、法律上チェックすることはできないわけです。
 したがって、立法的にその点然るべき手当をすべきであるかどうかですが、もちろん、立法的な手当をしたほうがよいだろうと思います。しかし、いまのところそのような立法的な規判がないのですから、分筆してはいけないというように法律上解釈論でしばることは無理だと思います。それはあくまでも立法論だろうと考えています。
 ところで、建物の区分所有における土地の権利が借地権である場合、それは準共有であるべきか、それとも空中権的な考え方、つまり民法第二六九条ノニのような区分地上権的な考え方でもよいのかという問題があって、法務省の民事局の通達、回答では、さきほど述べましたように、登記との関連においてですが、民法第二六九条ノニに準拠して区分地上権を認めることはできないということをいっており、これをもう少し広げていえば、区分借地権を認めることはできないということだと思いますが、しかしこれに対して、空中権あるいは区分借地権でもさしつかえないのではないかという考え方が判例にもあるし、学者の意見にもあります。
 しかし、どちらの見解をとるにしても、それはあくまでも専有部分の存する土地についてだけであって、共用部分の存する土地については、そういう議論はそもそも成り立たないと思うのです。というのは、共用部分は関係区分所有者の共有なのですから、その共用部分の存する土地はその権利が借地権であれば関係区分所有者の準共有になるのが筋であって、それを個別的に区分借地権が設定されているというように考えるのは、論理的に成り立たないことだからです。
 また、通路の存する土地も、共用部分の存する土地と同じように、その権利が借地権であれば関係区分所有者が借地権を準共有するのが筋であって、そこに個別的に区分所有者ごとに区分借地権が設定されていると考える余地は論理的にないということができましょう。ただし若干議論の余地があるのは、通路の存しないそれ以外の周辺地であって、その多くは空地であるのでしょうが、このような周辺地について、その権利が借地権である場合、その借地権は特定の区分所有者にあるというのでもよいのではないか、という感じがしないこともないのですが、しかし、原則として、やはり関係区分所有者の準共有ということになるべきではないだろうかというように考えられます。それでは、周辺地の場合、関係区分所有者による借地権の準共有以外は絶対に認められないかというと、それはそうともいいきれないわけで、借地権が特定の区分所有者にあることも認められるのではないかと思いますが、しかし、原則的には準共有のほうが望ましいということはいえるでしょう。
 専有部分の存する土地については、さきほど述べたとおり二つの考え方があり得るのですが、しかし、どちらの考え方にもそれぞれもっともな理屈があって、一概にどちらがどうともいいきれないと思いますけれども、しかしそれにしても、いずれをもって原則とするかについてはっきりさせておく必要はありましょう。
 そこで問題となるのは土地の権利関係を決める決め手ですが、これには二つあって、一つは当事者の意思であり、もう一つは法律の規定による強制です。
 ところで、建物の区分所有の場合における土地の権利関係については、こうしろという強制の規定がないのです。したがって、共用部分の存する土地、通路の存する土地については、その土地の権利が借地権であれば、関係区分所有者による借地権の準共有ということになるのは当然ですけれども、それ以外の専有部分の存する土地については、その土地の権利が借地権であれば、関係区分所有者がみんなで準共有にしようではないかということで借地権を準共有することもできるし、個別的に空中権あるいは区分借地権をもちたいということでそのようにすることもできます。また、以上のどれにも当らない周辺地については、その土地の権利が借地権の場合、関係区分所有者全員が借地権を準共有することもできますし、あるいは特定の区分所有者が借地権をもつということもできることになります。
 ただし、都市再開発法に基づいて建築される再開発ビルを区分所有する場合における土地に設定する借地権は、必ず地上権でなければならないのですが、この場合、地上権は再開発ビルの土地全体、つまりさきほど述べた四種類の土地の全部について、関係区分所有者が地上権を準共有することを法律で強制しているのです。しかし、これはあくまでも再開発ビルを建てた最初の時点、厳密にいえば、都市再開発法第八六条以下で規定する権利変換処分の効力の発生時点で強制されるだけであって、その後に関係区分所有者が土地の権利関係を変えることは可能なわけです。
 これは実際的にみて妥当でないといえば確かにそうかもしれませんが、建物区分所有法の適用対象の多様性ということからすると、一概に妥当でないともいえないでしょうし、また、妥当でない場合があることは否定し得ないにしても、法律の規定で禁止していない以上はやむを得ないともいえましょう。したがって、以上のような取り扱いをみることがどうしても妥当でないという場合については、立法的な措置をするほかないと思います。
 とにかく現行法では以上のようなことになります。したがって、例えば、分譲マンションということではじめから建築され売り出される場合において、その土地の権利が借地権の場合に、その土地全体について区分所有者が借地権を準共有することになることがよくありますが、これはいわば当事者の意思が土地全体の借地権を準共有しようというのですから、それはそれでよいわけです。これに対して、はじめは建物の区分所有ではなかったのだけれども、権判者が代わったり、居住者が変わっていくうちに、いつの間にか区分所有関係になって、土地の権利関係がはっきりしていないという場合には、その土地の権利関係は、共用部分の存する土地、通路の存する土地、それ以外の周辺地についてはその土地の権利が借地権であればそれは関係区分所有者の準共有ですけれども、専有部分の存する土地についてはその権利が借地権であればそれは空中権あるいは区分借地権として各区分所有者にあるということになります。
 つまり、当事者の意思がはっきりしている場合には当事者の意思で決まるし、当事者の意思がはっきりしていない場合には民法の原則に基づくことになるわけで、民法では権利の個別的帰属が原則であって、権利の共同的帰属はとくに不可避的な場合または法律の規定による場合に限られることになっていますから、それによって専有部分の存する土地の権利については、その権利が借地権であれば個別的な空中権あるいは区分借地権、それ以外の土地についてはその権利が借地権であればその準共有ということになります。
 以上は、建物の区分所有における土地の権利が借地権である場合についてですが、土地の権利が所有権である場合であっても基本的にはだいたい同じであって、共用部分の存する土地、通路の存する土地については当然に関係区分所有者の共有ということになりますが、それ以外の周辺地については、特段の事情があって特定の区分所有者だけの所有となることがあるにしても、通常は区分所有者全員の共有ということになりましょう。ただし、問題なのは、専有部分の存する土地についてでありまして、その土地の権利が所有権である場合、土地所有権を立体的、階層的に分けるということは、立法論はともかくとして現行法の解釈上できるのかどうかで議論があります。
 そして従来の一般説によりますと、土地所有権というのは民法第二〇七条に規定してあるとおり、地表とその上下に及んでいますから、地表だけの所有権とか地下だけの所有権とか、あるいは空中だけの所有権というのは、特別に立法しない限り、現行法の解釈上は認められないというのです。したがって、このような従来の一般説を前提とする限りは、専有部分の存する土地の権利が所有権である場合には、これは必ず共有ということになるのではないかと思います。
 これに対して、立法をまつまでもなく、現行法の解釈論として地表だけの所有権とか、地下だけの所有権とか、あるいは空中だけの所有権というものを認めることができるという学説があり、そういう見解によれば、専有部分の存する土地についてその権利が所有権である場合、それが関係区分所有者の共有であるか、それとも個別的な空中所有権または分損所有権であるかは当事者の選択によるということになります。もちろん、法律の規定で土地は関係区分所有者の共有とすると定められていて、それが強行規定であるということであればそのように扱われます。

間取り
建物区分所有法/ 建物区分所有法の適用範囲/ 棟数と建物の区分所有/ 区分建物の占有部分/ 木質的専有部分と非木質的専有部分/ 建物部分としての供用部分/ 法定共用部分と規約共用部分/ 共用避難施設の区分所有/ 建物区分所有法の規定と敷地の権利の種類/ 分譲マンションの土地の区分所有の権利関係/ 分譲マンションの専有部分と共用部分に関する権利/ 建物の区分所有における管理/ 共用部分の共有/ 区分所有者集会/ 建物の区分所有の管理者/ 建物の区分所有の管理委託契約/ 建物管理委託契約の規約/ マンション管理組合規約の法的根拠と性質/ マンション管理組合規約の適用される範囲/ 瑕疵補修についての法的見解/ マンション管理組合の法人化の問題/ 分譲マンション管理の対象/ 分譲マンション管理の管理物件/ 分譲マンション管理の法制面からみた問題点/ 分譲マンション管理の管理体制/ 分譲マンション管理組合の設立と法人化/ 分譲マンション管理の対象物件の明示と区分/ 分譲マンションの共用部分の権利留保/ 分譲マンションの共用部分の専用使用権/ 分譲マンションの事業者と購入者間の問題/ マンション管理体制の設備と在り方/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー