建物の区分所有の管理者

 建物の区分所有における適正規模ということは、何も集会だけでなくて、管理者についてもそれがいえるのです。例えば、一棟限りのごく小さな分譲マンションの場合ですと、管理者は一人でもよいでしょうが、大きな分譲マンションでありますと、管理者が一人ではとてもきりまわせないということになりましょう。したがって、そういう大きな分譲マンションでは、管理者ないしその補助者の人数をふやすとか専従者なり専従の事務員をおかなければならないというわけです。実際にも管理組合の理事長が管理者で、あとの理事はその補助者ということになっているようですが、とにかくそのような管理者の職務内容の点から考えてみても、適正規模というものが必要ではないだろうかと思います。

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 ところが管理者ですが、建物区分所有法ではその資格などについて制限していませんから、これは別に個人でなくて会社その他の法人であってもさしつかえありません。しかし、どちらにしましても、建物区分所有法では、管理者の権限がはっきりしているような、はっきりしていないようなところがあるように思います。次に具体的な判例を参考にしながら述べてみましょう。
 これはアメリカのカリフォルニア州の裁判所における一九七一年の判例ですが、メリリイウッドアパートメントという名前の分譲マンションに入居しているロナルドホワイトという区分所有者が、ある日その分譲マンションの共同の庭にあるスイミングプールヘの歩行者専用通路を歩いていたとき、庭の草のしげみのかげに設置されていたスプリンクラーがみえなくてこれにつまずいてころんで怪我をしたために、それで治療費等がかかったということもあるのでしょうが、その人は区分所有者全員をメンバーとする法人格のない社団である管理組合を相手どって、管理に過失があったということでその責任を問う訴えをロスアンゼルス地方裁判所に起こしたという事件です。
 この種の事件を日本法のもとで考えてみますと、管理組合があればその性質については見解の分かれるところかもしれませんが、とにかく結論的には民事訴訟法の第四六条で管理組合を相手に訴えを起こせるということでよろしいと思いますけれども、管理組合がない場合には、だれを相手に訴えを起こすことになるのかは問題です。
 自分以外の区分所有者全員を相手にして訴えを起こすのか、あるいは管理者がいれば管理者を相手に訴えを起こすことができるのかですが、この点がはっきりしないといえます。とくにあとの場合は、建物区分所有法の第一八条で規定する管理の権限範囲の問題ですが、第一八条では管理者は区分所有者を代理することができると規定しているけれども、その代理という言葉の中に訴訟上の被告適格、原告適格まで認める趣旨であるのか、それとも、あるいは被告適格、原告適格を認めるものではないが訴訟代理人になることは認める趣旨であるのかが明確でないのです。本来はどちらも認めないつもりで立法されたようですけれども、しかし、実際上は当事者適格ないし訴訟代理人たる資格を認めないときわめて面倒であるということがいえます。あるいは民事訴訟法とか弁護士法、信託法との関係があるのでしょうが、この点は解釈上認める方向で検討されるべきだと思います。
 ところで、管理者の権限の範囲がはっきりしないところがあるということとの関係で、まだいろいろ解釈上問題があります。皆さん方の中には、さきほどあげた判例の事案を問いておられて、ちょっとおかしいなと思われた方があるのではないかと思うのですが、分譲マンションの場合、管理しているのはいったいだれなのかということは、まだある解釈問題の一つです。
 分譲マンションの場合、実際には管理者がいて、その管理者が管理していることが多いでしょうけれども、究極的な管理権は区分所有者各自にあり、区分所有者全員で共同で管理しているわけです。しかし共同で管理するといっても、実際に共同で管理するのは、船頭多くして船山へ登るのたとえではないけれども、うまくいかないことが多いので、各区分所有者のもっている管理権を、ある特定の人のところに集めて、その人に委託して行使してもらおうというのが管理者という制度でして、そうである以上、管理者あるいは管理組合というものが設けられている場合であっても、究極的な管理権というのは各区分所有者にあり、さきほどの判例の事案でいえば怪我した区分所有者もその意味では管理者の一人であるわけで、そうすると共同で管理権をもっている区分所有者仲間のうちの一人で怪我したからといって、その人が他の仲間の者を相手に訴えを起こすことができるのかどうか、そもそも自分の不注意、責任でもあるのではないかとも考えられます。
 日本民法では第七一七条の工作物の設置、保存に瑕疵があったということであるのでしょうが、怪我した区分所有者が同じ仲間の他の区分所有者に対してその責任を問うことはできないというのも時と場合によっては過酷なようにも思うのですが、さきほどのロスアンゼルス地方裁判所は、共同所有者法理を適用し、共同で責任があることについて、仲間のうちの一人が怪我したからといって、ほかの仲間の者を相手に訴えを起こすことはできないとして訴えを認めなかったところ、これに不服で控訴に及び、控訴審で逆転して、そういう判例法上の原則を理由に責任を認めないのは適当でないとして訴えを認めたのです。日本民法のもとにおいても、結論的には同じように責任が認められてしかるべきではないかと考えられます。
 いずれにしても、管理をめぐってはいろいろと問題があり、かような意味合いにおいても管理者の職務権限というようなことがおおいに議論されなければいけないと思うのです。

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