建物の区分所有の管理委託契約

 管理に関して従来から議論されている一つの大きな問題は、区分所有者らが管理者を専門の管理会社に委託する場合、いったいこの契約はどういう性質あるいは効力のある契約なのかということです。
 従来から見解がいくつにも分かれていますが、そのうちでもとくに有力な見解は二つで、一つは請負契約であるという見解であり、他の一つは委任契約であるという見解です。結論からいいますと、委任とみるのが適当であると思います。なぜならば、建物区分所有法では第二二条で「この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。」と規定していることからも明らかなように建物区分所有法上管理の委託は委任であることに疑問の余地なしといえるからです。

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 ところがそれにもかかわらず、民間の不動産会社の人たちの中には、「管理の委託は請負である。」と強く主張される向きもあるようでして、私も何回かそういう意見を問いたことがあるのです。しかし、それはさきにあげた建物区分所有法第二二条に照らし認められないばかりでなく、建物の区分所有における共用部分とか敷地の管理ということの性質、内容からしても認められないと思います。
 というのは、共用部分とか敷地の管理は、もともと継続的、回帰的な仕事であって、いうなればエンドレスワークつまり果てしのない仕事であり、それを時間でいつからいつまでというように区切ることはできるにしても、ふつうの請負契約におけるような仕事の完成ということがないということができるのではないかと思われるからです。言いかえれば、仕事の処理という観念はあるが仕事の完成という観念はないのではないかということです。
 例えば、ビルの管理業務の全部か一括して委託した場合、委託された者は、ここまでやったらもう管理という仕事は完成し、それ以後やらなくてよいというわけにはいかないのであって、あしたがくれば、またやらなければならないし、あさってになれば、またやらなければならないというように仕事の性質そのものからは果てしがないといえるのです。
 ただし以上はビル管理の全面的一括委託のことについてであって、一部委託の場合はその委託の仕事の内容いかんによっては、仕事の完成ということもありえないことではありません。例えば、部屋のドアの入口のハンドルが快れたからそれを直すとか、ドアの蝶番がおかしくなったからそれを直すというような修理・修繕という仕事も管理業務の一部に属するのですが、そういうような類いの管理事項をとり出してみると、その委託は疑いもなく請負です。しかし、管理という仕事を全体的に把握すると、これは請負的な仕事というよりは、むしろ委任的な仕事なのではないかと考えられます。とにかく、そういうことで、はじめに結論したとおり建物の区分所有における共用部分、敷地などの全面的、一括的委託はその性質・効力を委任と理解するのが適当です。
 したがって例えば、共用部分の管理費用として毎月徴集した金銭をどのように支出したかということについて管理の受託者は委託者である区分所有者に対し、その収支報告をする義務があるのであって、報告しないというのは許されないことなわけです。
 それからまた、管理費用ということで徴集した金銭は、言うなれば預かり金なのですから、委託された管理業務の費用として支出し、余ればそれは当然受託者から委託者に対して返還されるべき性質のものです。ところが請負にあっては委任と違って、ふつう清算するという観念がありませんから、そのような余ったら返還するということはないわけです。そこで民間の一部の不動産会社の人たちは、請負ということにこだわるのだろうと思うのですが、しかし、とにかく建物区分所有法の条文のうえからいうと、そういう解釈は無理だということができるのであって、その根拠としてはさきほど引用した第二二条をあげれば十分であろうと思います。
 以上のようにいうことは、管理者あるいは管理受託者だからといって、無報酬で仕事をしろということではありません。報酬は報酬できちんと約束すればそれは法律上権利として報酬がもらえるのです。要するに、報酬は報酬、管理費用は管理費用で本来別のものであるということが明確に認識されることが大切だということなのです。

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