建物管理委託契約の規約

 建物区分所有法の第二三条以下の定めるところですが、いったいこの規約でどの程度のことまで定めることができるかということが、一つの大きな問題になっております。しかし理論面はともかくとして、実際面から考えてみますと、現在行われている規約の多くは、結論的には妥当だと思います。
 ただし、若干問題があるのもありまして、例えば「この規約は区分所有者全員の合意及び管理者の承諾がなければ改正することができない。」というような定めをしたり、あるいは「このマンションの管理について○○不動産会社に永久に委託する。」というようなことを規約に定めてある場合がありますが、このような規約はいずれも建物区分所有法上認められないのではないかと思うのです。
 しからば、その理由はどこにあるかということですが、まずあとの場合からみてみますと、規約の中の文言としての「永久に」というのが問題です。これによく似た問題で従来からしばしば論じられてきたものに「永久の地上権というのは認められるか」という問題がありますが、この問題について一般説は認められないという否定的見解をとっています。

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 というのは、確かに民法は第二六五条以下の地上権の規定のところで期間の長さについて上を制際していないので、地上権設定契約で三十年でも五十年でも七十年でも長期にわたる期間を約定してよいということになっているのですが、しかし、永久という地上権を設定することはたとえ約定をもってしてもできないということになっています。それは所有権の性質に反するという理由からです。つまり、所有権というのは永久的なものなので、それに対して所有権を制限する権利は、必ず有限のものでなければいけないのであって、永久に所有権を制限するというのは所有権の性質に反し認められないということです。したがって、現在一般説は、永久の地上権という約定は無効だが、しかし、それを期限の定めのない地上権というようにみてその効力を認めることにしています。これはいわゆる無効行為転換の法理によるものです。
 そこで以上のようなことを参考にしながら、○○不動産会社に管理を永久に委託するという規約条項を考えてみますと、そのような規約条項は文言どおりの効力を認めるわけにはいかないが、しかし、それは期限の定めなく管理を委託した、というようにみるのが適当であろうということになります。つまり、期間の定めのない管理委託です。したがって、委託者である区分所有者側からも、受託者である不動産会社側からも、民法第六五一条の規定に従っていつでも管理委託契約の解除をすることができます。
 それから前の場合、つまり規約を改正する場合には管理者である○○不動産会社の承諾を要するというようになっている場合ですけれども、これも問題です。
 なぜかといいますと、建物区分所有法上管理者というのは、規約の設定、変更、廃止に関する限り、積極的な当事者として位置づけられていないとみるのが相当だからです。そのことは、建物区分所有法の第一八条で「管理者は規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。」となっていることから明らかです。管理者というのは規約で定められたことを、忠実に守り、実行しなければならない義務があるのであって、そういう意味で、規約の効力を受ける当事者、つまり労働的な受身の当事者なのですけれども、しかし、規約を積極的につくる当事者ではないということです。
 建物区分所有法の第二四条をみてみますと、「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者全員の書面による合意によってする。」とありまして、積極的に規約の制定改廃ができるのは区分所有者だけであって、管理者はそれについてとやかく言える立場にはないというように考えられます。
 しかし、それにもかかわらず、なぜそういう規約が実際上設けられているかというと、一つには実質的な理由としては、管理者である不動産会社の知らないあいだに、どんどん規約を改正されたのでは、不動産会社の利害に反することがきめられるかもしれないということで、それをチェックしようというねらいがあるのだろうと思います。
 いま一つは条文の根拠でして、おそらく建物区分所有法の第二四条第三項で「規約で別段の定めをすることを妨げない。」と規定しているので、この第二四条の第一項では、規約の制定、改廃は区分所有者全員が書面によって行うとなっているけれども、この第三根によって、規約中に、管理者の承諾がなければ規約の制定、改廃をすることができないというように、別段の定めをすることはさしつかえないことを考えているのだと思います。
 ところでこのあとの理由ですけれども、いもおう条文の形式的適用としてはそういうような考えも可能なようにみえますが、しかし、そもそも規約はいったいだれのためのものかというと、いうまでもないことながら区分所有者のためのものなのであって、そうだとすると、区分所有者側で決められるのが当然であり、区分所有者以外の者が承諾するとか、しないとかいえる筋合いのものではないのではないかと考えられますし、そればかりでなく、管理者というのはすでに述べましたように区分所有者各自がもっている管理権をいねば預かっているだけなのであって、そうである以上、預かっているだけの人間が区分所有者の規約の制定改廃について、積極的にそれを左右する権限かおるというのはおかしいのではないかというようなことにもなると思うのです。
 いずれにしても、このへんのところは、現行建物区分所有限の解釈上も疑問があって、規約でそういうことを定めるのは認められないというべきであるというように考えております。
 それからまた規約との関連で実際上しばしば問題になるのは、賃借人の取り扱いです。というのは、区分所有者からその専有部分を賃借してる人も、居住者たる区分所有者と同じように一つの屋根の下でつまり同一のマンションで生活しているのですから、そうだとすると、賃借人も区分所有者と同じ立場で規約によって拘束され、規約を守るべきであるとも考えられるからです。つまり、賃借人は区分所有者でないから規約を守らなくてよいということにはならないだろうということなのです。
 たしかにこれはもっともなことなのであって、規約に定められていることは賃借人にも守ってもらわなければならないのですが、しかし、そうすると、賃借人も規約について当事者としての資格をもつだろうか、ということになるわけでして、その点で現行の建物区分所有法上の解釈論として問題があります。
 考えてみますと、規約というようにひと口にいっても、中には所有権レベルに関する事項もあり、それから利用権レベルに関する事項もあるのでして、賃借人に直接関係があるのは、主として利用権レベルに関する事項であって所有権レベルに関する事項ではないわけで、所有権レベルに関する事項は専ら区分所有者にかかわりがあるといってよいでしょう。
 したがって、賃借人に守ってもらわなければ困るのは、利用権レベルについて定めてある規約事項であり、その限りでは、賃借人を当事者に含めても必ずしもおかしくはないと思います。しかし、所有権レベルのことについてまで、規約の適用上、賃借人に当事者的な取り扱いを認めるというのは行き過ぎではないかと思うのです。解釈論としても以上のようにいうことができると私は考えていますが、しかし、将来、立法的にその点を明定すればなおそれにこしたことはないでありましょう。

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