マンション管理組合規約の適用される範囲

 管理組合規約の適用される範囲ですが、範囲というのは、理論的にいって、(1)時間的範囲、(2)場所的範囲、(3)人的範囲の三つがあります。
 (1)の、いつから規約がその効力を生じ適用されるかですが、これについては、規約には必ず附則かおり、そこで発効日時を明記しております。発効日時は原則として不遡及ですが、特別の定めを設ければ遡及も可能です。しかし遡及させる場合は、いろいろと影響するところが少なくないので、慎重に定めを設けるべきでありましょう。
 (2)は組合の管理対象物の存在する場所であることは当然です。三つのなかでいちばん問題になってくるのは(3)の人的範囲で、規約の性格をどう解釈するかということとも深くかかわってくるものですが、この点については、次のように考えたらよいと思います。すなわち、売買とか賃貸借、金銭貸借などのような普通の契約においては一般的にその効力の及ぶ人的範囲は、契約の当事者および相続人(包括承継人)とされておりますが、これに対して、管理組合規約の場合は、先に述べましたとおり規則という側面がありますので、規約を最初につくった者(組合員)ばかりでなく、それ以外の者として相続人、再譲渡を受けた者や、それらの者の同居家族、同居人とか、建物区分所有法一七条の管理者にも適用されます。問題は、不在組合員である所有者から住宅を賃借している者、または、留守番といった人たちに対しても適用されるか、ということでありまして、特に、規約の賃借人に対する適用の有無に関しましては、建物区分所有法が制定される際に、国会の審議の過程において委員会で再三にわたり、委員と政府委員との問で質疑応答がなされているところであります。

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 そのときの政府委員であった平賀氏は当時法務省の民事局長をしておられまして、そのときの氏の答弁は規約の効力は賃借人には及ばないとするもので、したがって、不在家主は賃借人との間の賃貸契約で、賃借人に対して規約を守ることを義務づけなければならない、というものでした。
 しかし、他方においては当時法務省の民事局の参事官をしておられた川島氏は、後に「注釈民法」第七巻の建物区分所有法の執筆を担当され、その逐条解説において、同法二五条を根拠に、区分所有者からその専有部分を借り受けて使用する者に対しても、必要な限度で規約の効力を及ぼし得る、と説いておられます。この説におおむね賛成の立場をとるものですが、ただし「必要な限度」という表現は抽象的で具体性に乏しいきらいがあるといえます。規約で定められている事項のうちでも、建物、敷地、付属施設の使用上ないしそこでの生活、いわゆる共同生活ですが、そのような生活上の遵守事項に関しては、区分所有者から賃借して居住する賃借人に対しても、同じように、その効力が及ぶと解するのが相当であるというふうに説明するのがよいと思います。なぜなら、建物区分所有法第二三条では「管理または使用」と規定しており、「管理」については区分所有者の専権事項であることはもちろんですが、「使用」のほうは日々の生活の問題で所有者、管理者に限らず、その家族、または留守番、賃借人にも密接に関わってくる問題であるという点からであります。
 結論として、現行法上でも解釈上、規約の効力を及ぼす範囲は所有者に止まらないと考えるのですが、なお、そのことを規約の条項においてはっきりと謳っておくことのほうが望ましいのではないかと思うものであります。ことに家族の場合は民法上、占有補助者という立場にありますから、準組合員と考えてしかるべきでありましょう。
 そう考えてくると規約の効力の及ぼす人的範囲は相当に広くなってくるといえますが、しかし、効力の適用を受けるからといって、規約の改廃に議決権を有するかどうかということはまた別問題でありまして、賃借人のような受動的な当事者には、規約の改廃についての議決権はなく、そのような議決権は能動的な当事者である区分所有者にある、と解釈するのが正しいと思います。
 また、ただいまのことに関連しますが、賃借人の場合でも組合員として認められるかどうかという議論が各団地などでもあるようですが、それについては私は管理組合の目的との関係において決まってくるのではないかと思います。
 管理組合というのは共有物の財産管理に限定されるのだと考える場合には、組合員はオーナーに限られてくるのは当然ですが、しかし、建物区分所有法二三条の「管理または使用」を広く解して、狭義の財産管理に限定せずに、管理組合の中に自治会的な性格を導入する場合などは、オーナーと限定しないほうが活動が盛り上がってくるという場合もあるかもしれません。したがって、いずれが是か非かということになると、各組合の政策的な判断の問題になります。
 ただし、管理組合が一般的な意味での自治会的性格をも兼ね合わせ得るかとなると、現在具体的な管理組合の目的が「共有物の管理」ということに限定されている以上、そこには自ら一定の線が引かれてくるはずで、共有物の管理とは直接関係のない自治会的な活動を管理組合の目的として掲げるとしたなら、それは現在の管理組合の目的を超える問題であろう、と思います。
 いままでに述べました建物区分所有法二三条の「管理または使用」の使用の捉見方につきまして、人によってはあまりにも広く解釈しているのではないかと見られる向きもあるかもしれません。しかし、そのように解釈するかといいますと、集合分譲住宅の場合は単なる住宅だけを個別的に譲渡するのではなくして、プラスアルファ、つまり共用施設、いい方を変えるならば公共施設的な側面も合まれた町としてセットされている住宅が譲渡されているわけで、そうである以上、そこでの管理は必然的に個人財産の管理という枠を超えており、いやおうなしに建物区分所有法二三条、「管理または使用」を広げて解釈していかなければならないだろう、と思われるからです。
 次に役員の問題に触れたいと思います。役員は組合員に限るのかどうかについて、実際の管理組合規約をみてみますと、最近、だいたいの組合では「組合員等」となっているように見受けます。組合員に限ると定めれば、規約条項としては簡明ですが、「等」として定めますと、その人的範囲はどこまで含まれるのかという問題もあり、一長一短です。
 役員を組合員に限るとしますと、役員のなり手を確保する困難、つまり役員難を招来する可能性もありましょうが、では、「等」で役員を選んだとしますと、仮にどういうマイナスが起こり得るか、を考えてみましょう。そうするとだいたい、次のようなことになると思います。
 これは最悪の場合だといえるかもしれませんが、組合員以外から理事長が出ていて、その理事長が組合の金を使い込むなどというような不始末を引き起こし、組合に莫大な損害をかけてしまったとしますと、法的にはその理事長に刑事責任はもちろん民事責任を問うことも可能ですが、理事長にこれというみるべき資産がないということで、「ない袖は振れぬ」ということになれば、組合は事実上損害賠償をしてもらうことができず、損害を蒙りっぱなし、ということになりかねません。考えてみますと、管理組合の理事長は一種の財産管理人、つまり管財人でありますが、民法上は管財人の責任は重いもの、とされていまして、管財人になるときには担保提供を義務づけられていることが多いのですが、管理組合の役員に担保提供を、ということになったら、それでなくとも役員難の組合が多いのですから現実には不可能ということになります。それだけに管理組合における理事長その他の役員の選出にあたり、慎重を期さなければなりませんが、しかしそれと同時により大切なことは、組合の金銭管理は一般の財産管理以上に万全の管理体制を確立しておかなければならないことを皆さんに声を大にして私は忠告しておきたいと思います。
 問題が起きた場合、役員は連帯責任を負わなければならないのかどうかということですが、あらかじめ規約の上で役員の責任はまったくゼロにしておくということはできないと思います。しかし、具体的に事件が起きた場合に、組合総会における決議によって免責することは可能ですから、このような免責決議があればその事件に関しては役員は免責されます。さきほど、あらかじめ規約で役員の責任を完全にゼロにすることはできないと申し上げましたが、なお、念のために申しますと、これは規約において一般的な形である程度の免責条項、つまり責任軽減条項を定めることができないかどうかということとは別でありまして、責任軽減条項をあらかじめ規約中に定めておくことは可能であります。例えば、「故意または重大な過失に基づく場合には連帯責任を負う」と定めておいたとしたならば、普通の過失に基づく問題には連帯責任を負わないということになるわけです。

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