処分禁止の仮処分のある不動産

処分禁止仮処分とは債権者が、係争物件に関する請求権の将来の執行が債務者の行為によって不能または著しく困難となる危倹を防止するために債務者に対し、同物件につき法律行為を禁止する目的で裁判所に申請してなされる保全処分の一種であり、係争物に関する仮処分に属し、非金銭債権である特定物についての請求権の保全処分である点で、金銭債権の保全のためにされる仮差押と異なります。通常その仮処分命令の主文は、債務者所有の特定の不動産につき、譲渡、質権、抵当権、賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない。との形式でされます。そして係争物件が不動産であるときに、仮処分命令の執行として裁判所の嘱託により登記簿に処分を禁止する旨が記入されます。このような処分禁止仮処分登記がされた不動産について、担保を設定することが法律上許されるかどうかでは、判例では当初、処分禁止仮処分に違反してなされた処分行為は絶対的に無効であるとしていましたが、大判大一二・五・一二民集二巻三〇五が、立木に対する処分禁止の仮処分の効力が問題とされた事案において、立木の所有者は、仮処分決定により売買その他の処分行為を禁止されたことにより、立木の処分権を絶対的に失うわけのものでなく、唯仮処分債権者に対する関係において処分が禁止されているに過ぎないとして、相対的無効の考え方をはじめて明らかにして以来、その考え方が戦後の最高裁に引き継がれています。したがって、処分禁止仮処分登記のある不動産について、仮処分債務者との間で新たに担保を設定すること自体は否定されず、担保設定をした当事者間では有効であるために、担保設定権者から担保設定者たる仮処分債務者に対し担保設定登記を請求したり、設定された担保権を実行することは可能です。しかし、処分禁止仮処分に違反してなされた担保設定行為は、仮処分債権者に対しては対抗できないために、仮処分債権者と仮処分債務者との訴訟の結果、例えば仮処分債務者の当該不動産に対する所有権がないことになると、仮処分債務者から担保提供を受けたものの担保設定行為は仮処分債権者との関係では焦効となり、すでに例えば仮処分に違反して設定された担保権が抵当権であって、それが実行されて当該不動産を取得した競落人があっても、その所有権取得をもって仮処分債権者には対抗できないことになります。それゆえ、処分禁止仮処分登記のある不動産を担保にとっても、訴訟の帰する如何によっては結局無意味なものとなり、これをあえて担保にとろうとするものは危険を覚悟しなければなりません。

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仮処分債務者のした担保設定行為が仮処分債権者に対抗できないということは、仮処分債権者が本案訴訟で勝訴して確定してはじめて仮処分債権者から仮処分債務者のした担保設定行為が否定されるということであって、仮処分債権者がたんにその地位にあるというだけで仮処分債務者の担保設定行為を否定することはできません。また仮処分債権者が中途で仮処分申請を収り下げ、あるいは仮処分命令が裁判により取り消されると、担保設定行為も当初から有効なものとなり、また仮処分債権者が敗訴して確定すれば、担保設定行為は完全に有効となります。よって処分禁止仮処分登記のある不動産を担保にとる前に、この可能性を調査しておくことが必要とされます。
それでは、処分禁止仮処分登記のある不動産を担保にとることは、前述のような仮処分債権者と仮処分債務者との訴訟の結果、あるいは仮処分申請を取り下げる等の機会を待たなければ仮処分債権者に対する関係ではすべての意味において対抗できないものになるのかどうかでは、近時相対的無効の意味について、仮処分は係争物に関する特定の給付請求権の保全を目的とするものであるために、仮処分債権者の仮処分違反行為が仮処分債権者に対抗できないということも、仮処分債権者の請求権の保全に必要な範囲で肯定すれば足りることであり、その方がより保全処分制度の目的に適うというべきであるために、より厳密にいうならば仮処分債権者の被保全権利に対抗できないというべきであって、仮処分債務者からの第三者の権利取得が仮処分債権者に対する関係において全面的に否定する必要はないとする説が有力となり、最判昭四五・九・八民集二四巻一○号一三五九貢はこれを正面から肯定するに至っています。これを本論に限定していくつかの具体例で説明すると次のようになります。
被保全権利が所有権に基づく場合、例えば甲が乙からその所有不動産を買い受けたが、乙が売買の効力を争い、甲に対し所有権移転登記手続に協力しないので、甲がこの登記請求権を披保全権利として不動産につき処分禁止の仮処分を得て、その登記とした場合であると、乙がその後に丙に対し不動産につき抵当権を設定し、あるいは抵当権設定自体は仮処分登記前にしたが、その抵当権設定登記が仮処分登記後にされた場合、甲は担保権の附着しない完全な所有権を取得しないとその目的を達することはできないために、丙が取得した抵当権設定登記は仮処分債権者甲に対する関係では否定されねばなりません。そうすると、被保全権利が所有権に基づく処分禁止仮処分であると、その登記後にされた担保設定行為は結局仮処分債権者に対抗できないことになります。
被保全権利が所有権以外の権利に基づく場合、これに対し例えば、甲が乙との間でその所有不動産について抵当権を設定しましたが、乙がその効果を争いその設定登記手続に協力しないので、甲が登記請求権を被保全権利として不動産につき処分禁止仮処分を得てその登記をした場合において丙が乙から抵当権の設定を受けると、甲の乙に対する抵当権と抵触するので、この場合においても丙の抵当権の効力は制限されなければなりませんが、しかしながらこの効力を全面的に否定する必要はありません。しかし抵当権が担保価値を把握する担保物権であり、かつ順位により効力が定まる性質のものであるために仮処分債権者甲に一番抵当権の効力を認め、仮処分後に登記された丙の抵当権に二番抵当権としての効力を与えるならば、それで甲の被保全権利の保全としては十分だからです。
このことはまた被保全権利が借地権等の用益権設定登記請求権である場合も同様です。つまり甲が乙との間で借地権等の用益権を設定して、その間に紛争を生じ、これを保全するために当該不動産に処分禁正仮処分をした場合であると、そのような不動産について丙が乙から担保の設定を受ける際には、丙としては用益権を負担したものとして当該不動産の担保価値を把握すれば足りるために、仮処分債権者甲との関係においても、丙の担保設定行為を全面的に否定することは必要でなく、甲の用益権を負担したものとして取扱えばよいことになります。そうなると、処分禁止仮処分の被保全権利が所有権以外の権利である場合には、その仮処分後に当該不動産について担保権その他の権利を取得する第三者の権利は、仮処分債権者の被保全権利の性質によって制限された範囲内でなお仮処分債権者に対抗できるといえるので、当該不動産について担保を設定する際には、被保全権利について検討してみる必要があります。ただこの場合に、処分禁止仮処分登記には被保全権利が何であるかまで登記されないので、処分禁止仮処分登記のある不動産について新たに担保を設定しようとするものは、仮処分裁判所で記録を閲覧して仮処分命今申請書についてあたるよりほかに方法はありません。
以上のように、処分禁止仮処分登記のある不動産を担保にとる場合、前述のような仮処分の被保全権利との関係でなお担保設定をする利益がある場合もあり、また事後的に完全に有効になる場合もありますが、訴訟の結果によっては仮処分債権者からその担保設定行為が否定されることになるために、慎重に対処する必要があります。

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