担保の登記の流用

民法での担保物件は、債権の担保を唯一の債権が存在しないのに目的として存在するものであるために、担保物件だけが存在することはありません。これを担保物権の附従性といいます。例えば抵当権の被担保債権が当初から無効または遡及的に取り消されると抵当権もまた無効または遡及的に効力を失い、被担保債権が弁済、放棄、混同その他なんらかの事由によって消滅すれば、抵当権もまた消滅します。この結果は抵当権設定登記の抹消と関係なしに絶対的に生じます。

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例えば、債権者甲が債務者乙に対する貸金100万円の債権担保のため乙所有の不動産に抵当権を設定してその登記を行ない、後に甲が乙から債権の弁済を受け登記をそのままにしていたところ、新たに甲が乙に対し100万円を貸し付け、もしくは丙が乙に対し100万円を貸付けた場合、甲または丙が乙との間でいまだ抹消せずに残っている旧債務のための抵当権設定登記を新債権の担保に流用する合意をすることは有効であるかが、登記流用の問題です。
担保の附従性を厳格に解すると、被担保債権が弁済により消滅した以上、抵当権も消滅しその登記も無効となるために、無効登記の流用は許されないということになりますが、一方で登記簿上に無効となった登記が抹消されずに形式的に存在するとき、登記を抹消した上で再び抵当権設定登記手続を取らねばならないとすることも不便、不経済であって、登記をそのまま利用できるならば便宜でもあり、また経済的でもあります。登記に関する判例理論は、登記が不動産物権変動の過程及び態様を如実に反映しなくとも、現在の真実の状態を公示すれば足りるとしています。中間省略の登記が許されるのもこの考え方によります。甲が現に乙に対し債権を有し、旧債務のための登記によって公示されている被担保債権と現在の債権とが符合するかぎり有効であると取り扱うこともまた可能です。しかし民法上の原用として、例えば前例で、乙の不動産について甲の一番抵当権が存在し、同一不動産につき丁の二番抵当権が存在する場合、甲の一番抵当権が消滅することによっての二番抵当権の順位が上がり一番抵当権となるため、甲、乙もしくは丙、乙の合意で甲の一番抵当権を復活することは許されず、またそのような合意をしても第三者である二番抵当権者の丁に対抗させることは絶対的に認められないところです。
そこで多数説では、制限的に登記流用の効力を認め、登記流用までに利害関係を有する第三者がでてこないかぎり有効としています。基本的にはこの考え方に立つと思われるますが、二つの場合に分けてこの問題を取り扱っています。つまり抵当権消滅の時から無効登記の流用の時までに第三者がその不動産上に正当な利害関係を取得した場合、例えば、一番抵当権消滅のときに第三者が二番抵当権を有し、またはその後第三者が抵当権もしくは所有権を取得して別にその公示をへた場合においては、第三者は一番抵当権を取得し、または抵当権の附着しない所有権を取得するのであるために、一番抵当権を公示するものとしてこの無効登記が真実の権利状態を反映するに至るということは少なくともこの第三者の権利が存続する間はこれを考えることができません。したがって、この場合には無効登記の流用ということはありえません。
無効登記の流用の時までに第三者が存しない場合、この場合には登記は抵当権消滅によってその効力を失ったものであっても、その抹消されない間はなお形式上抵当権を反映しているのであるために、後に第三者が同一不動産上に同一債権額につき抵当権を取得するときは、その登記に譲渡の附記登記をなすことにより、その登記は現在の真実と符合することとなるのであり、したがって無効登記の流用はこの場合には有効と解されるべきです。
これに対し判例では、原則的に否定的で、大判昭六・八・七民集一○巻八七五頁は、抵当権の被担保債権の消滅後に当事者間に同一金額の債権が発生したとしても、消滅に帰した抵当権の登記を利用して同一物件に同額の債権担保のため抵当権の設定があったとする契約は無効であるとして、抵当権消滅の後、登記流用までの間に抵当物件の所有権を取得したものからの抵当権設定登記の抹消請求を肯定し、大判昭八・二・七民集一二巻二六九一頁は、第一順位の抵当権と第二順位の抵当権が存在しましたが、第一順位の抵当権の消滅後に新たに第三者から金員を借りた抵当権設定者が第三者に対し抹消されていない第一順位の抵当権を第三者に譲渡する附記登記をしても、その第三者は第一順位の抵当権を取得することはないとしています。これに対して、大判昭一・一・一・一四民集一五巻八九頁は、抵当権設定者が他から借入をして被担保債権を弁済した上そのもののために一曲の抵当権を譲渡する附記登記を経由した場合、その後で同物件を取得した第三者は、その時価から被担保債権を控除した全額で同物件を取得しているために、附記登記の抵当権者からその抵当権を対抗されても損失はないので、附記登記が無効であっても登記の欠陥を主張する正当の利益は有しないとし、最判昭三七・三・一五裁判集五九号二四三頁は、抵当権設定者が元利金を弁済した翌日新たに同一人から同額の金員を借り受け旧債務のため抵当権設定登記をそのままその後の債務のために流用したという、いわば順抵当権付債務の借り替えとみられる事案において、たとえ不動産物権変動の過程を如実に反映しなくとも、登記が現実の状態に吻合する限り、それを後の抵当権のために流用したからといって第三者に対する関係は暫く置き、当事者間においては当事者自らその無効を主張するにつき正当の利益を有しない、として、登記流用の合意を認めることに種々の問題があるとしてその効力を否定して、第一審判決を取り消しています。前二者の判例は、前説の第一例に該当し、後二者は同じく第二例に該当する事例に関するものといえます。しかしながらその後者においても、この判例が正面から無効登記の流用の合意が有効であると判示することなく、登記の欠陥もしくは無効を主張しうる正当な利益を有しないとするより制限的な考え方で処理していることが注目されます。
以上のように多数説では制限的に登記流用の効力を認めるのですが、無効となった登記が現在の真実の権利状態を反映するとは、どのような要件を充足すればそのようにいえるのか必ずしも明らかではありません。単に現在債権者であれば、その発生原因、金額、弁済期、利息、遅延損害金の約定について厳密に一致しなくともよいか、同一種類の債権で金額が一致すれば他の条件が一致しなくともよいか、その基準をいかに解するかは困難な問題です。下級審の中には、利害関係人がいない場合の無効登記の流用の合意を肯定するものもありますが、判例が大勢としてなおこの問題について慎重であるのもこのような事情に原因するのではないかと考えられます。

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