抵当建物に対する強制執行

抵当権も、一つの物権であるために、債務者や第三者が抵当権の目的たる建物を破損したり、その価値を滅じるなどの行為をして、被担保債権が担保されなくなるおそれが生じたときは、物権の妨害排除権能としてその侵害行為の除去を請求することができ、また侵害によって損害を受けたときは、不法行為としてその賠償を請求することができます。しかし、抵当権はいわゆる価値権であって、もともと抵当権設定者が抵当建物を占有、利用することは抵当権に対する妨害とはならず、抵当建物の構造を変えるような事実上の変形も、その価値を滅少しない限りは抵当権の干渉を受けるものではありません。したがって、建物取去の強制執行が、抵当権の把握している担保価値に影響を及ぼすものでないために抵当権の侵害の間題は生じる余地がありません。

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建物収去の強制執行は、収去義務者の作為を目的とする債務の執行であり、それは、債務者に対し建物の取去を命じる給付判決や和解調書等に基づいてなされます。また、建物収去という行為は、債務者自身によってなされると、第三者によってなされるとにより差異はない代替的行為であるために、執行債権者は、取去行為を、債務者の費用で、債務者以外の者にさせることの授権を裁判所に申し立てその決定があると、執行債権者は、自らまたは第三者を用いて収去行為を行なうことができます。
建物は土地の上に存立し、これを収去するには、建物を屋根瓦、柱、金具、ガラス等持運び可能な物に解体しなければならないのが通常であり、実際にも、取去行為として、このような解体作業が行なわれます。
建物が解体されると、建物はもはや物権の対象となる一個の不動産ではなくなり、古瓦、古材等の動産に変じます。このように、抵当建物が古材等の動産となった場合には、抵当権の効力はその上に及ばないと解するのが判例や多数説の立場ですが、一部の学説では、物上代位に関する民法三〇四条の規定の解釈として、これらの物に抵当権の効力が及ぶこととなっています。この立場では、古材等の売却により抵当権の被担保債権が弁済されれば、抵当権の侵害とはなりません。しかし、一般には、建物は解体によって著しく価値を滅じるために、物上代位で被担保債務が消滅する場合は少なくなります。
このように、抵当建物に対する強制執行は、抵当権者が抵当建物について把握している交換価値を滅少滅失させるのが通常ですが、強制執行が直ちに建物抵当権の侵害になるかというと、そうではありません。抵当権の目的物である建物の価値を滅少減失させる行為であっても、それが法的に許された行為によるものであるならば、違法な浸害ではないといわなければなりません。逆に、執行債権者である建物収去権者が債務者または第三者との関係において、その執行の結果を取得するだけの実体法上の根拠を有しない場合には、建物収去の執行は、抵当権の侵害となります。
建物収去の強制執行は、土地明渡の執行方法としてなされることが多く、その典型的なのが、建物による土地の不法占拠の場合です。日本の法制のもとでは、建物は土地とは別個の不動産ですが、建物の存立は通常土地を難れては考えられません。したがって、土地の利用権を伴わない建物は、砂上の楼閣であって、土地所有者から建物収去の請求があれば、応じなければならない関係にあります。このような建物に抵当権を設定し、その登記を経ても、もともと建物が物権的制約を受けていたのであれば、その制約は建物抵当権者も忍受すべきものです。大審院は、借地人と無断の建物所有者との間に、一定の時期に建物を収去する約束がなされているとき、その建物に抵当権を設定しても、建物収去の強制執行に対し、建物抵当権者はこれを阻止することができないことを明らかにするにあたり、同旨の理由を述べています。したがって、建物収去の強制執行を受けるべき建物に抵当権を設定しても、その収去の執行によって抵当権の侵害の間題は生じません。
建物収去の強制執行が、建物所有者との関係では実体法上の根拠を有する場合であっても、建物抵当権者の関係では、建物収去の請求権をもって対抗できない場合があります。
建物抵当権の効力は、建物の効用を全うさせるために通常必要な敷地利用権に及び、その敷地利用権が地上権であるとき、地上権者がこれを破棄しても、抵当権者に対抗することができません。つまり、地主は、地上権の破棄があっても、建物抵当権者に対する関係では、地上権が存続するものと扱わなければなりません。地主は、建物所有者に対しては建物収去、土地明渡の判決を得ることができますが、これに基づいて建物収去の強制執行をすることは、建物抵当権の侵害となります。そこで、建物抵当権者は、第三者異議の訴えを提起してその排除を求めることができます。
敷地利用権が借地契約の場合にも同様の関係が生じます。借地上の建物に抵当権が設定されたが、その後地主と借地人たる建物所有者との間において借地契約が合意解除された場合、地主と建物所有者との間では借地権が消滅したといわざるを得ませんが、地主は、合意解除による借地権消滅の効果を建物抵当権者に対抗することができません。判例では、早くから、民法三九八条の法意を敷衍してこのことを判示し、この判例の態度は学界からも支持されています。したがって、この場合の建物収去の強制執行も、建物抵当権侵害となる可能性があります。

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