抵当建物と火災保険請求権

抵当建物が火災により滅失すると、抵当権はその目的物を失い、もはや建物の上にこれを行使することはできません。しかし、建物の滅失を契機に、抵当権設定者が建物の価値代位物を取得した場合には、抵当建物との経済的関連を認めて、それに抵当権の効力を及ぼすことが合理的です。抵当権設定者である建物所有者や、抵当権設定後の建物譲受人は、抵当建物につき保検会社と火災保険契約を締結していると、建物の焼失により、保険会杜に対し火災保険金請求権を取得します。この火災保険金請求権について、抵当権者は、それが抵当物の価値代位物であるとして、自分の優先的効力を主張することができるかでは、判例および学説の多くは、これを肯定しています。その理由は、保険金は、担保物権の目的物の売却代金や、第三者が目的物権を滅失、毀損した場合の損害賠償請求権と同じく、目的物に代わるものであり、物上代位の根拠規定である民法三〇四条は、代位物の発生が法律の規定に基づくか契約に基づくかによって区別をしていないというところにあります。しかし、近時この判例、通説の立場に対し、批判的な見解が示されています。それは、抵当権者にとっては、保険金請求権は他人間に行なわれた契約の効果に過ぎず、目的物の焼失は、保険金請求権の機縁ないし条件ではありますが、法律的には、その原因をなすものは保険契約ないしこれに基づく保険料の支払であり、したがって、保険金請求権をもって、目的物の滅失又は毀損に因りて、生じたものとはいえないということです。この批判は傾聴すべきですが、前記のように火災保険金請求権に対する物上代位を肯定するのが判例および通説であり、これに基づいてすでに金融取引上の慣行が形成されていることを念頭におかねばなりません。

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火災保険金請求権について抵当権の物上代位が及ぶものとすれば、これを行使するには、保険金が被保険者に払い渡される前にこれを差し押えることが必要であり、しかもその差押は、抵当権者自身がこれをなさなければ優先的効力がないというのが、判例の立場です。
抵当建物の所有者であり、建物につき保険会社との間に保険契約を締結している者が、抵当権者以外の第三者のために、将来生じる保険金請求権の上に質権を設定しているとします。建物が焼失して、保検会社に対する保検金請求権が発生した場合、これを目的とする質権と、抵当権に基づく物上代位権とのいずれが優先するかでは、裁判例には、物上代位権行使の要件としての差押についての前記のような考え方の帰結として、右優劣の基準を、質権設定の対抗要件を具備したときと、抵当権者の物上代位権行使のための差押の先後に求めたものがあります。しかし、学説においては、物上代位権の本質論に関係づけて、この優劣の基準を、質権の対抗要件其備の時点と物上代位権の流出源である抵当権の対抗要件具備の先後におくという立場が有力です。この裁判例の立場に立てば、保険金請求権の質権者が常に建物の抵当権者に優先することとなります。かくては、抵当権者の保険金請求権に対する物上代位は、質権設定におびやかされることとなります。
このように、建物の抵当権者は、抵当権には物上代位性があってそれは火災保険金請求権に及ぶといって安心してはいられません。第三者に対する質権の設定がないとしても、他の一般債権者がいてそれが債権差押、転付命令の申請をすることを念頭におけば、物上代位権を行使しようとする抵当権者は、火事見舞をいう前に、保険金請求権を差し押えなければ、自己の優先権を確保できないおそれがあります。
そこで、建物の抵当権者としては、抵当権の設定を受ける際、建物所有者をして保険会社との間に保険契約を締結させ、将来の保除金請求権について自分が質権の設定を受けるということが通常行なわれています。そうしておけば、建物が焼失しても、抵当権者は、物上代位権に頼ることなく、自らの保険金請求権上の質権を主張して優先弁済を受けることができます。しかし、この場合においても、保険金請求権の担保価値は、保険契約者や被保険者の作為、不作為により影響を受けます。例えば保険料支払怠慢のため契約が失効したり、被保険者が保険者に対し諸種の通知義務を怠ることにより、保険者が免責される場合、抵当権者兼質権者は不利益を免れ得ません。
そこで、これに対処するため、実務上、被保険者である債務者および抵当権者と保険会社の間で、損害発生時の債権額を限度として保険金請求権を抵当権者に譲渡し、保険会社はこれを承認し、また、被保検者である債務者に通知義務違反があっても保険会社は抵当権者に対して保険金支払義務があること、保倹契約を解除するには、あらかじめ抵当権者に書面による予告を要すること等を特約することが行なわれています。
このような方法とは別に、抵当権者が建物の焼失によってみずから受ける損害を被保険利益として、抵当権者自身が被保険者となって保険契約を締結する方法が考えられます。これが抵当保険といわれるものです。抵当保険については、抵当権者が被る損害が債務者の資力に左右されるところから、損害額の算定が困難であるとか、保険金の支払を受けても抵当権者の債務者に対する債権が消滅しないのは不合理である等の理由で、一般的にこれを許さないとする裁判例があります。しかし、抵当保険が一般に許されないとするのは行き過ぎです。この不都合を避けるためには、担保物の滅損の割合に応じて被担保債権を保険会社に譲渡して保険金を受け取る趣旨の約定をなすのが適当です。近時、この構想による保険が、債権保全火災保険普通約款の名のもとに行なわれています。

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