物上保証と抵当物の第三者取得

他人の債務を担保するために所有不動産に抵当権を設定した物上保証人も、その物上保証人から抵当不動産を取得した第三取得者も、債務者所有の抵当不動産を取得した第三取得者も、さらにそれらからの転得者も、いずれも対抗力ある物権としての抵当権の効力、つまり抵当権者は目的不動産につき競売換価を求める権利を有し、被担保債権額の優先弁済を受ける権利を有します。この抵当権者の権利行使を受ける点は共通です。そして被担保債権が消滅すれば、抵当権も消滅することは担保に共通する付従性の原則です。したがって時効消滅を主張する利益において共通であって、なんらこれを区別するところはないはずです。この真正面の論理に立ち向かう議論はないように思われます。

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請求権消滅時効制度をとるドイツ民法は、抵当権や質権は消滅時効によって影響を受けません。日本でも担保物権が消滅時効に親しまないことは定説ですが、被担保債権が時効消滅すれば担保の付徒性によって消滅します。抵当不動産の所有者は債務者の人的抗弁を抵当権者に援用しうるのですが、消滅時効の抗弁と限定承認の抗弁は援用しえないとされています。この消滅時効について人的抗弁が切断される根拠はドイツ民法の特殊規定のためであって、かかる現定のない日本では問題になりません。このことは我妻論文が周到に論じているところです。ところが担保物権によって担保される債権が、裸の債権と同様に消滅時効にかかるだろうかでは。担保の有無によって区別する現文はありませんが、占有を伴う質権、留置権の場合に、永続的事実に対する社会的信頼という点でも、弁済した証拠の保存の困難を救う法定証拠だという点でも、消滅時効は問題があります。債務が存在するがゆえに質草は債権者の占有にあるのだと社会的に信頼され、あるいはその占有によりむしろ取得時効が逆に働くはずです。また質草を取り返していない債務者は債務完済までたとえ一部弁済の領収書でも保存するはずです。しかし競売、流質など質権の実行がないかぎり請求を伴わない単なる目的物の占有は消滅時効の中断事由にならないので、一般に担保付債権も時効完成により消滅原因をみたすとされているのです。そのため消滅時効を援用して責務者が目的物の返還請求をなしうるという場合がありえるのですが、それは現実に多くあってはおかしいことになります。ところが抵当権は占有を伴わないものであり、登記は存在してもドイツのように占有と同じように強力なものではないので、担保物権の中で例外的に抵当権は債務者および抵当権設定者でない第三取得者などに対しては抵当権自体消減時効にかかるわけです。そして登記によって公示されていてもその債権は不行使により時効消滅するので、時効を援用して抵当権登記の抹消登記請求がなされるのです。判例上もこの種の事件がたびたび問題となって、第三取得者、物上保証人について援用を否定して請求を棄却してきたわけです。問題は物的担保までとって安固を期している債権が手やすく消滅時効にかかるということへの疑念ですが、さらに理論的間題は次の点になります。債務の履行確保のための裏付責任を人的担保から一層特定化し独立化している担保物権は、いわば人的関係を疎外化し物的担保として有限責任化し人的抗弁の切断をはかって行こうとしたものだとすると、債務者の債務とは別個に、元本相当額と二年間の利息相当額などの予測できる限定金額の物的負担付の所有権と理論構成しえないものでもありません。このことは抵当不動産を取得する第三者は、物的負担金額を控除した対価で取得するであろうということで、みずから抵当を供している債務者や他人の債務のため抵当不動産を供した物上保証人の場合とは異なるものがあると思われます。
保証人は主たる債務者の債務とは別に従たる保証債務を債権者に対し直接に負っており、保証人の一般財産により無限定に責任を負うのに対し、物上保証人は特定不動産を限度とし有限の責任で、なんら人的物的義務を負うものでないと一般に解されています。抵当権はその被担保債権の限度で実行、弁済されても、その限りで債務者の債務は弁済され消滅しますが、保証されない債務者の債務は依然存続し、他方、多くの物上保証人は債務者に対し委託を受けた保証人として弁済その他免責のあった日以後の法定利息や不可避の費用その他の損害の賠償までも求償しうる関係にあります。この物上保証人よりもさらに人的関係が希薄となっているのが第三取得者です。それは物的保証でなく物的負担として不動産の所有、利用を取得する第三取得者には、代価弁済や滌除により抵当権を消滅できる地位が与えられています。また消滅時効に関して、本来ならば担保物権は消滅時効にかからず、被担保債権が消滅時効にかかるときにはこれと運命を共にすると考えられているのですが、第三取得者や後順位抵当権者に対する関係においては抵当権自体も消滅時勅にかかるものとされています。つまり債務者や抵当権設定者たる物上保証人に対する関係では抵当債権が時効消滅すれば抵当権も消滅しますが、債権の時効が中断されて消滅しないかぎり抵当権自体の消滅時効は問題にならないわけです。このように時効に関しても第三取得者は物上保証人と区別して取り扱われるのは、抵当不動産の場合に物的担保が人的債務関係、保証関係を離れてひとり歩きをするというか物的負担付の所有、利用、処分の権能が流通下におかれているからであるといえます。
物上保証人も第三取得者も担保負担を受ける点で共通ですが、それぞれ被担保債権を弁済したり抵当権の実行を受けた場合に、その求償関係は、物上保証人の求償関係については保証の求償規定が準用されることは前述したとおりで、第三取得者についても求償権の範囲についてそれと同様の求償関係を認めることもでき、また事務管理の法理や不当利得の法理で処理することもできます。抵当債務者のその目的不動産を取得した第三取得者の求償範囲については、物上保証人からその抵当不動産を取得した第三取得者について、物上保証人が債務者の委託によって低当に供したものである場合には、その抵当不動産を取得する第三取得者は委託保証と同様の広い求償範囲が認められるとする判例があります。第三取得者には物上保証人から取得する考も債務者から取得する者も、それぞれの転得者もあるし、無償の贈与か代物弁済か売買か、現実の負担見込の債権金額を対価より控除しているのか、その取得価額のいかんなどは判断基礎としてかなり影響するはずです。この判例は物上保証人が委託をうけていたか否かによってその後の第三取得者はすべて同一に扱うかのような判旨ですが、そうとすれば問題を含むことになります。抵当債務者からの第三取得者が、仮に最大限の被担保債権総額を控除して取得している場合には、第三取得者が弁済してもまたは抵当権の実行を受けても、損失はないはずですから、認める必要がある場合でも狭い求償範囲で足りることになります。このように第三者のその取得態容を考えなければなりませんが、負担控除価格による第三取得者が債務者の消滅時効を援用した場合には、時効利益は第三取得者のみが受け、債務者は目的不動産処分の際に弁済したのと同じであるために時効利益を受ける余地がないことになります。もちろん特約により、債務消滅、不存在によって抵当権の抹消登記に成功したときには、第三取得者は追加代金を支払う約束などの特段の事情がないかぎり、時効援用による利益については不当利得返還請求を認めえない原則理論の下ではやむを得ないことになります。
そこで抵当権者が債務者にたびたび支払請求をしていたという場合に、請求後、半年内に訴えの提起などがなければ時効中断効はありません。その時効いまだ完成前に抵当物件が第三取得者の手に帰したので、債権者は第三取得者に対し抵当権を実行したが、他方ですでに債務者に対する短期商事時効が完成していたという場合であると、第三取得者の援用により抵当債権者は気の毒な結果となります。第三取得者に対する請求は債務者に対する時効を中断しないからです。主たる債務者に対する履行の請求その他時効の中断は、保証人に対してもその効力を生じるという規定はありますが、保証人ないし第三取得者に対する請求や担保実行によって主債務の時効が中断されるという方理はありません。もっとも、単なる請求でなく競売を申し立てると、その期日が責務者にも通知されるので、これによって催告の効力をみとめ、かつその競売手続進行中はその催告が継続しているとみることによって債務者の時効完成を妨げるような解釈理論も必要になりますが、ともかく容易に担保付債務の消滅時効が完成することは、抵当債権者にとって気の毒であるというだけではなく、第三取得者が代物弁済により負担控除価格によって清算取得している場合には、いわば債務者は債務を弁済しているのに第三取得者が時効を援用してその利益を得ることになります。

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