職場と住居の分離

伝統的な社会では、都市と農村とを問わず多く職場と住居が一致していました。農民は職場である農地に接して住居を構え、商人や職人は店舗や作業スペースに附属して居住スペースを設けました。これら小生産者のもつ労働の形態、労働時間、家族労働の必要性、零細な経済力が、職・住空間の結合を必然ならしめたのです。村や町という伝統的なコミュニティは、職・住一致の生活を基盤とする生産労働の共同化、例えば農村の生産儀礼、水利、共同作業、同業者町における社会的分業、つまり相互依存による集債効果の形成の必要にもとづいてつくり出されたものでした。

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間取り

資本主義的な生産様式は、より大規模に組織された大工場や大事務所といった専用労働空間と、そこから切り離された雇用労働者の専用的な住宅環境をつくり出しました。近代建築運動の中心人物であったル・コルビュジエは、生活時間を職場、居住、レクリエーションの三つの要素に分け、生活空間を職場、住居、レクリエーションの場という三つの機能空間とそれらを連結する交通手段によって組み立てようとしました。この考え方は、成長期の資本主義的な合理性につらぬかれた生活空間のあり方を楽観的にいい表したものでした。労働時間の短縮とか大量通勤交通手段の開発により、人々は薄よごれた住んでいるだけでも気がめいる工場地帯を離れて、明るく緑につつまれた専用住宅地に住むことができ、一方で識場は住居を排除することでより大規模に組織され生産能率をあげることができると考えたのでした。
資本主義の華やかな成長期にあったル・コルビュジェがその後の都市空間の動向で見落としていたのは、資本主義的な産業組織の多層段と底辺的な跋行性でした。つまり、すべての職場が専用的な地域を形成するのではなく、大企業を中心にその下請や関連、さらには底辺的な家内労働という資本主義産業のもつ二重構造の都市空間への反映についてでした。大企業に働く職員や労働者層は、たしかに一部において近代的な職場と効外住宅を通勤で結合するという明解な職・住の空間分離パターンを実現させています。大量通勤手段の発達は、職場に対する住居立地の選択を大いに自由にしたようにみえますが、中小企業や零細自営労働者の多くは、長くかつ不現則な労働時間や家計を補助する主婦労働とかいった条件に制約されて、職場をはなれて遠くから通勤することができないため、工場や作業場の隙間や環境の悪い近接地に居住をつづけなければなりません。また、場合によっては、併用注宅といったかたちで住居そのものの一部を家内労働空間として転用しなければ生きてゆけない状態がつくり出されています。このように、都市では、一方で職場から明確に分離された専用的な居住地が生まれ、他方で職場と住居が混在し相互に干渉し合う混合居住地が大部分の市街地形態として再生産されてきました。いいかえれば、資本主義産業の二重構造が職・住空間関係を規定し、大企業、中小零細企業、自営業者、農民といった労働条件の異なる社会階層の生活パターンに対応する様々な職・住の空間関係を生み出してきたのです。現在では、職場と住居の併用と混合は、公害や災害、交通事故、過密居住、さらに心理的圧迫など、多くの生活環境破壊の起因となっています。一方で職・住分離の場合でも、郊外からの長時間通勤という半拘束的な生活時間とエネルギーの膨大な浪費となってその弊害が表れています。職場と住居をどのように分離しかつ再結合させてゆくかは、今後の生活空間構成上の大きな課題です。

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