居住地コミュニティ

国土空間全体に広がる都市のネットワークとそれを結合する高速交通手段は、人々の生活の圏域を著しく拡大します。農村から都市への人口移動にかわって、都市から都市へ職業上または私的な理由で移り住むことが多くなり、かつての農村のようにその村に生まれそこで働きその土に帰るといった土着的生活ではなく、一生の間に何回も国土の各地に移り住む人々が多くなります。また、日常的な生活でも、通勤や通学、買物、文化活動、スポーツやレクリエーションのための行動圏域が著しく大きくなります。長い体暇制度が実現すれば、リゾートを目的とした第2居住地の形成すら考えられます。このように生活における移動性が高まるにつれて、定住生活圏域というものは大都市圏とか国土そのものまで拡大され、従来の農村的な自給自足生活の場である小コミュニティや都会の孤独のなかでわずかにサロン的な人間関係を回復しようとする近隣住区の理念はもはや役立たなくなります。私達より多段階のコミュニティ構造を持つことになるでしょうが、そのなかでの日常的な生活単位としての居住地をどのように設定すればよいのでしょうか。その第1の決め手は生活パターンの変化です。これまでの近隣住区は、主に初等教育、軽い近隣づきあい、日常的な購買といった低い次元の機能を中心に組織されていました。こうした小単位のコミュニティの構成は、もっぱら近隣的な手近かさと地縁的な人間関係にもとづいていました。都市空間の高密化と交通の発達は、このような手近かさの領域を著しく拡大します。

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間取り

人々が日常的に必要とするさまざまな社会的サービスも、もはや手近かに分散された低次元のものだけでは満足できなくなっています。人間的な接触も、地縁関係をはなれてより広く自由な選択の機会を持つようになっています。レジャーの増加が予想される新しい生活単位では、さらに高次の教育施設、文化施設、スポーツ施設、消費センターといったより専門的でかつ多様な施設を備えることが要求され、そのために多様なレクリエーションや消費の選択の機会と施設を経営維持できるだけの居住地人口が必要です。少なくともその人口規模は、現在の近隣住区の1万人前後といった小さいものではなくて、10万人が基本生活単位となろう、といっても上限は大きいほうがよいというわけでもありません。コミュニティ活動に参加する人々の比率が高まることを考えると、日常的にかつ参加者が自ら体験しうるまとまりとして100万人単位は大きすぎます。より多くの地域社会生活の可能性を備えた将来コミュニティは、近隣住区と100万人単位の大都市の中間に位置する規模を持つものと考えられます。
生活単位としての居住地を考える第2のポイントは地域づくりへの住民参加であり、その基本は住民による住民のための自治の確立です。とりわけ、地域開発や都市開発が資本の論理と国家権力によって強行されている現在では、住民自治の確立は生活の論理による都市づくりにとって不可欠の条件です。あらゆる居住地には自然的、歴史的、社会的な特質があり、そこで解決すべき問題も地区によって異なります。公害や災害の危険でも、地区差が大きく、また、様々な社会的サービスの充足度や要求内容でも、地区差があります。それぞれの地区の状況に対応した局地的な生活空間づくりを住民自らの意志で行なってゆくことが、新しい居住地のコミュニティに求められます。
これらの居住地を、すべて専用的な住宅地と考える必要はなく、かつての同業者町や農村のように、職場や職場地帯と中間単位の居住地とを組み合わすことで、多様な機能とタウンカラーを持つコミュニティを考えることができます。職場と住宅の再結合をこれら中間単位のコミュニティ、例えば定住人口10万人から50万人について行ない、大学都市、流通都市、工業都市、観光都市、農業都市といったタウンカラーを持つ中間規模の都市によって従来の大都市にかわる多核都市群を形成することが考えられます。これは、労働とレクリエーション生活の将来および都市づくりへの住民参加について前提を設けて考えた居住地の一つのビジョンです。前提のおき方によって、さらに多くのビジョンが描かれます。今日では、人々の生活は大都市社会という数百万人あるいは数千万人の巨大な渦に巻き込まれていますが、そのなかでこれからの居住地コミュニティが果たしうる役割が何かを追求することこそ、これまでのニュータウン計両論の蓄積をさらに発展させる上での大切な課題です。そのためには、今後予想される市街地再開発や地方都市の開発を含めて、都市空間の構造と居住地配置の関係および都市社会と居住地コミュニティの関係が、様々な家族構成、年齢構成、労働形態をもった集団について再検討されることが必要であり、住宅建設主義、団地建設主義から脱皮した生活空間としての居住地計画理論の新しい展開が期待されます。

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生活空間と住居/ 生活空間の多段階化/ 居住の機能/ 職場と住居の分離/ 住宅と居住地/ ニュータウン/ 居住地としての農村/ 日本の団地計画/ 住宅再開発/ 農村集落の再編成/ 居住地コミュニティ/ 生活環境の意味/ 自然環境の変化/ 人工的自然の形成/ 都市化と社会環境/ 人口の異質化/ 都市化と施設系/ 機関と施設の機能/ 都市住宅の立地条件/ 封建都市の住居地の特質/ 郊外住宅地の発展/ 零細長屋住宅街の発達/ 大都市圏の地域構成/ 居住地の型分け/ 居住地の型と居住者構成/ 居住者層の住要求の地域差/ 職住関係からみた居住地/ 不良住宅地区の規定/ 居住地の不良化の特徴/ 既往の都市計画の問題点/ 居住地改善の基本的方向/ 地域性と居住環境/ 居住環境の要素と条件/ 住居と健康/ 人工環境の影響/ 暖房と健康/ 人工環境の計画上の必要条件/

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