自然環境の変化

生産技術の段階において、漁撈や狩猟が主たる生産生活である未開社会は別としても、一般に農村生活の環境は自然環境の支配という点で特徴づけられます。農耕、漁撈、狩猟、木材の伐採や製炭など、一般に第一次産業と呼ばれる自然的資源の直接的利用に基礎をおく生産様式は、土地、風土、水などの自然的条件によって直接の影響を受けます。また、人々が定着し居住し集落として立地する場所も、適度の日照や通風、地表水や地下水の入手しやすい地域が生存にとって必要です。自然環境をコントロールする高度な技術の欠けている村落社会では、自然環境は宿命的に受け入れなくてはならない生活条件であり、たかだか選択的に適合すべき条件でした。古い日本の村落の分布が、沖積平野、浜積台地、扇状地の瑞部、河岸、海岸の段丘、入江平坦地などに集中している事実は、当時の人々が食と性というもっとも基本的な生活欲求を充足させるうえで、いかに苦心して適合した自然環境系を選択していたかを物語っています。

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自然環境の諸要素は、抽象的にいえば、光、熱、空気、水、土地、動植物などですが適度の日照、通風、降水、地表水、地下水、温暖な気温、耕作に適した地形や地質、タンパク源としての魚介、鳥獣の存在などは、人間の生活機能を支持し、かつ高め効率化するプラス要因です。しかし、過度の日照による早魅、異常な温度や湿度による生活障害、豪雨による出水、山崩れ、台風による風害、豪雪による雪崩、落雷による山火事、昆虫や鳥獣による作物の被害、その他、高潮や地震などによる被害は人間の生活機能に障害を与え、これを低下させるマイナス要因となります。本能的な知恵によってプラスの自然環境の請要因を選択し、様々な工夫によって上述のマイナスの諸要囚に対し自らを守り、相対的な安定と通合性をつくり上げてきた農村生活における自然環境系は、その裏面に、人々の絶えざる自然との過酷な闘いと、その結果としての多くの不適応と犠牲の歴史がつづられてきたこともまた事実です。
しかし、村落生活における自然環境の諸要因は、単にその生産行為や居住生活の条件を規定するだけでなく、これらの生活領域をも含めて、政治や教育、宗教や芸術、娯楽やレクリエーションなどの諸生活領域にも色濃く投影しています。これらのさまざまな生活要因を充足するために生みだされた物質文化、制度や規則、諸観念の多くは、自然環境と人間との関わり合いの過程からの所産でもあります。
人間が都市をつくって都市生活を営むようになり、さらに都市社会自体が高度に発展してゆくにつれ、自然環境の持つ諸機能は人々の生活環境のなかで次第に第二次的なものとなり間接的なものになりつつあります。それに代わって、人工的、技術的環境や人間環境の諸要因が次第に前直に表れ支配的なものになりつつあるからです。
都市が立地し発展してゆくために、土地や水利などの自然的条件が重要な意味をもつことはいうまでもありません。近世以前の諸都市が防衛、軍事上の必要から丘陵上や水路に囲まれた土地を選択したり、近世以降の諸都市が産業上の利便、例えば労働力や物資の集中、移動に通じた平坦な三角洲や扇状地に立地しあるいは水路に恵まれた河川や海岸に治って発達した事例は、よく知られています。また、人口が集積すれば多量の日常の用水が不可欠であり、産業上の必要からも大量の工業用水の入手が前提となるなど、都市と水資源との関係は切り離せません。さらに、都市の発展とともに住宅地は快適さを求めて高燥な内陸へ志向し、商工業地は便利さを求めて海岸、河岸の低地に治って発展します。つまり、山手と下町の都市地域の分化も自然的条件と強く結びついています。
しかし、都市の立地や、その原始的な発展の段階から、次第に都市化が進行して、今日の高度産業化、技術革新下の急激な都市化の時代を迎えるにつれ、現代大都市に活動する人々の生活環境のうち田園的自然の諸要素は急速にその意義を失いつつあります。いうまでもなく都市人口の生産活動は、製造業、建設業、あるいは卸売小売業、運輸通信業、サービス業、公務など、非農業的な第二次、第三次産業が中心です。生産の場は田園から工場やオフィス内に移りました。大地は舗装され、太陽と緑の空間はコンクリートの高層建造物物によって次第に遮蔽されつつあります。気温や湿度は暖冷房、換気装置によって技術的にコントロールされ、屋内、屋外の照明やネオンサインは人間の生活を自然光線の世界から次第に遠ざけています。水のイメージも、清流や泉を連想させるより、上水道から流れ出る人口的な水や下水、工場廃水によって汚染された可川の水を意味するようになりつつあります。
都市生活においては、自然の諸要素は技術の発達によってコントロールされ利用されるものであり、その結果、都市の人間が適応する自然環境は人工的、技術的な自然環境にほかならなくなり、このような人工的自然を通じて、人々は自然環境に通応しているとも考えられるのです。

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