都市化と社会環境

人間の生活環境を考える場合、人間的、社会的環境の諸条作はきわめて重要な意味を持っています。人口が稀薄で流動性に乏しく、自然環境と直結した生産活動に従事する同質的な人達が主として血縁的、地縁的な紐帯によって閉鎖的な共同体の生活を営んでいる事実が、農村生活における人間的、社会的環境でした。このような環境系は閉じた体系であり、また変化や発展性に乏しい静的、停滞的な体系であるといえます。苛烈な生産条件や自然の脅威に対して人々は団結し、強くてかつ伝統的な共同体的規制に同調する形で、農村社会における人間、社会環境系はきわめて安定した体系をつくり上げてきました。ときとして表れる私的要求が、多くの悲劇的な不適応を生みながらも、人々の様々な生活要求は未分化のまますべてこのような環境系のなかで集団的に充足されてきたといえるのです。これに対して、都市の人間、社会環境系の性質には際立った変化があらわれています。都市が次第に発展するにつれ、その社会系は高度に有機的、動的体系となり開放的となってたえずその境界を拡大させ、また人々の生活要求の分化、専門化、高度化に応じて、構造的にも機能的にも分化の傾向を進めつつあります。

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大部分の社会系は、絶えず一定の人口を吸収しながら、交通網の発達による人口の高度の流動性と通信網やマスコミュニケーション網の発達による人々の複雑なコミュニケーション体系によって維持された全体として高度に有機的、動的な体系です。つまり、大都市地域は、農村地域に比べて経済的、文化的生活水準の優位性のために強い吸引作用をもち、人口や都市機能のたえざる集中現象を生み出しています。人口の著しい集中傾向が、特に首都圏、近畿圏、中京圏のいわゆる3大メトロポリス地域をはっきり志向しています。これに対して、特に低生産と都市的上活様式の普及による現金支出の増大とのアンバランスが集中的にあらわれつつある山村地域の著しい人口流出を示しています。この事実は、山村社会の人間、社会環境系が生産機能すらも十分に維持することを不可能にしつつあるいわゆる過疎現象を端的に示すものです。このような人口の都市への流入は、都市消費市場の拡大を意味し、新しい行政需要や消費需要の増大を意味します。そして、この傾向は、行政規模の拡大や新しい企業の誘引を促し、ひいては再び新しい労働人口を吸引する結果となりますこうした都市の社会体系は、人口と都市機能のたえざる膨脹によってたえず新しい価値の再生産をつくり出し、プラスの集積効果、社会的利得がうみだされてゆきます。これは、都市の社会環境系のプラスの要因と考えられます。もちろん、このような人口の集積が、様々な施設的環境の相対的な機能低下をもたらし、巨額の社会資本投下を要求する一方で多くの公害現象を生み、生産効率を低下させる点は、マイナスの集積効果、社会的費用として考察されねばなりません。これは、都市の社会環境系のマイナス要因と考えられます。
次に、都市人口はその移動性と流動性の点に特色があります。つまり第2次,第3次産業の発展が、まず生産機能を血縁的、地縁的な前都市的集団から企業組織へと分離させ、消費、教育、文化、娘楽、レクリエーションに関する人々の分化した生活需要は、その大都市的高度化に応じて、第1次的集団とは別個の機関、つまりそれらの対価を供給し充足させる諸機能を持つ様々な私的、公的な諸機関を、高度に分化、発達させるようになります。このような都市機能の分化は、都市地域の発展とともに地域的な分化作用を促し、住宅地域、重工業や軽工業地域、卸売問屋街、文教地区、商業、金融センター、娯楽センターなどが分化することになります。このような都市機能の地域的分化に伴って、人々の職業的、地域的移動や、通勤、通学の定期的流動、さらに不定期流動人口を生むに至るのです
このような人口の移動性や流動性の増大は、物資やサービスの流動をも伴って交通網の発達を促しますが、他方、通信技術の発達は、人口の移動を伴わない情報伝達の手段を開発することになります。広義の生産活動のための各種の情報は、人間の直接接触によらない間接的通言手段によって交換が可能になりますが、その結果は、郵使物の輸送量、電話の通話量、さらにはマスコミュニケーション網の発達となってあらわれています。つまり大都市の社会体系における広義の生産性は、一面ではたえず増大する交通量、通信量によって維持され発展しつつあるとみることができます。しかし、同時にまた、このような流動的な人間、社会環境系は交通規制や通信規制などの新しい型の法的規制なしには恐るべき機能麻痺というマイナスの要因をつくり出すことになります。
また、このような移動性、流動性の増大は、人々の接触の範囲を拡大させ、人々をマス的状況におく結果、かつてはかなり閉鎖的な機能単位であった血縁、地縁的な人間関係にも強いインパクトをもたらしました。人々は、強い共同体的規制から解放され自由な私的活動が可能になると同時に、強い連帯的感情や集団的保障機能を失い、様々な人間関係における暮藤現象が家族解体の様々な兆候としてあらわれています。また、人々のコミュニティ意識は稀薄となり、地域社会に対する公共的感心を弱める傾向をみせています。

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