機関と施設の機能

一般に都市が発展する過程で、特に機関、施設的環境要素は、つねに相対的な不足の状態にあると考えられます。これらのうち計量可能な要素について測定し生活環境の指数化を行なうことによって、施設環境の水準を示そうとする試みがあります。厚生省の総合生活指標とやスラム・クリアランスの地区決定のために設定されたアメリカ公衆保健教会の減点法による地区の指数化などは、その例です。また、東京都が発表したいくつかの環境要素の数量的規定は、シビル・ミニマムの行政理念、すつまり近代的な都市が当然備えていなければならない条件の最低限度、住民が安全、健康、能率、快適な都市生活を営むうえに必要な最低条件を具体化しようとする作業の現れとみられます。しかし、これらの施設環境系が人々の生活機能の充足にとって真に機能し効果を果たしているか否かは、さらに機能的分析を進めなくては明らかになりません。例えば投資額や施設の数または利用者の数のみで効果を判定することは、一般にゴールの転換と呼ばれる現象を生むことになります。つまり、職業安定所職員が数量的基準で報償されるようになると、ゴールはできるだけ多くの依頼主を処理することに置かれます。しかし、処理した依頼主の数は、そのまま識業紹介の真の実績を示しません。大部分の依頼主にとって、それは意に満たぬもので、供給された仕事への定着率は低いかもしれません。紹介数が少なくても要求に合致した定着率の高いケースを紹介した職員のほうが真の実績は高いと考えられる場合があるのです。

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このような事例はいくらでも挙げることができます。居住者に真の充足感を与えない公営住宅、利用度の低い有料自動車高速道などは、ある意味では無効の投資であり、施設系として人々の生活に真に機能していないのです。実質的にはそれは無機能ということができます。また、勤労青少年のために投資された青年の家や青少年センターが実際には学生によって最も多く利用されていたり、都心地域の区立図書館は区民でなければ借り出せないために通勤サラリーマンはこれを利用することができず、実際は地元の高校生の勉強部屋になっているとか、さらには、都市機能の分散を伴わない郊外への公営住宅団地や民間住宅の無計画な投資が緑地の荒廃化や通勤人口の増大による交通難を促進し道路や交通施設への無限の投資努力をほとんど無効にしている傾向は、一般に逆機能と呼びうるのです。もっとも、これらの点は、都市計画の整合性の欠如ということのほかに、財政上、法制上の障害や官僚機構のセクショナリズムによる意志決定の過程での障害などが起因していることもよく知られた事実です。したがって、投資効果の真の側定のための基準を設定する研究が今後の課題であるといえます。
機関、施設系は、他の環境系と異なって、全く人為的、技術的なものであるために、それがただ存在するだけでは機能を果たしません。それが供給機関によって有効に運用され、また需要者によって現実に利用されなければ、実際の機能はう生まれないのです。
また、人々の生活環境における機関、施設系の効果は、様々な社会的諸属性の差異によって、生活の要因の差異によって異なります。最下層の主婦にとっては、明日の糧と少しでも多くの収入をはかることが最大の関心事です。このような要因が充足されずして、教育的、文化的要因は開発されないのです。主婦達にとっては、文化、教育施設を提供されることよりも、少しでも有利な仕事を供給してくれる施設がはるかに望ましいのです。これに対して、中流知識層の主婦にとっての最大の関心事は子供の教育であり、何にもましてよき教育施設への要求が高いと考えられます。
ホワイトカラーは、少々の通勤コストを投資しても郊外のよい居住環境と教育環境とを欲するでしょうが、ブルーカラーにとっては、一般に劣悪な衛生、居住、教育環境を我慢しても職場に近い住居が望ましいのです。都心、下町地域の人々にとって、古き良き伝統的都市文化とコミュニティ感情とは貴重な遺産であり、コミュニティの諸施設への関心は高いのですが流動的なインテリのホワイトカラーの関心は、地元からますます遊離する傾向にあり、職場と直結した都心やターミナルの一層高度な機能を供給する施設系の利用度がきわめて高くなる傾向にあります。
それぞれの階層的、地域的特性を反映した住民の生活要求の差異や要求水準の差異、施設自体の立地条件の可否、施設水準の可否などの分析は、今後の重要な研究課題です。一般に生活要求の高度化に応じて、利用する機関、施設は選択的になり高度化するのであり、施設自体が供給する財やサービスの水準が各層住民の要求内容や要求水準との関係において問題となるからです。

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