都市住宅の立地条件

以前の建築学や住居学には、住宅の敷地選定条件として、土地が高燥であること、日当りや風通しがよいこと、閑静であること、景色がよいこと、災害の恐れのないこと、などとされていました。その頃の住宅に関する教育や研究といえば邸宅学であったため、上にあげた住宅の立地条件というのも、当然、郊外に建つ邸宅などを前提としていたと思われます。大都市の市街地の住宅はほとんどそのような条件に適っていなかったし、住み手も、実際に居住地を選択する場合はそのような条件を第1に考えていなかったはずです。住む人の立場から住宅の立地条件を考えるならば、土地の良さということだけに限らず、もっと広い視野からみた住みやすさ、つまり社会生活の場としての住みやすさとは何か、ということが追求されなければなりません。

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間取り

住宅の立地条件を住宅の快適性という点から規定し、三つの条件があげられます。
1.自然的条件、狭義には地形的条件、広義には住宅配置によって生じる日照、通風、景観条件が含まれます。
2.施設的条件、職場との関係においての施設的条件、職場近接性、交通機関、道路の充足などと、日常生活との関係からみた施設的条件があります。
3.人間的条件、周囲にどんな人が住んでいるか、その住宅地は、どんな階層の居住者で構成されているかといった条件。
そして、これら条件に関する都市居住者の評価や選択は居住者の属する階層によって異なることが指摘されています。富裕層は、一般にその資力によって施設的条件をカバーしうるため、もっぱら自然的条件が重要となります。サラリーマン層は、生活を楽しむという生活様式から、施設利用の変化、豊富さを重要視します。労働者層は、労働条件から就業地に近接し、経済的に安上がりな生活を指向します。都市最下層になると、生活が不安定となるため、相互扶助的な積極的人間関係を求めます。
都市居住者の居住地選択は、居住者の環境に対する要求の差異によって異なり、生活の型や住要求の似た者同士が集まるようになります。これは、私達が都市の居住地を指して、俗に、山の手または下町、高級住宅地またはスラムという言葉で呼んでいるように、現実の社会でみられることです。
居住者の住宅に対する要求や住宅地に対する指向は様々であっても、階層的にはまとまった傾向を示しつつ、一定の居住地には一定の居住者階層が対応するという関係をもって都市の地域分化がすすんでいきます。ひとところに定着した層は、よりよい住みやすさを求め、不断に新しい要求を出していきます。その要求が、また階層的、地域的に新たな形に結集され、地域を変化発展させていきます。このように、居住者は住に対する様々な要求をもっていて、その住要求が階層的構造をもっていることが都市の居住地形成の原動力となっていることを、居住地分析にあたってまず認識すべきです。
しかし、都市の地域分化には、いま一つの大きな力が働いていることを見落としてはなりません。今日の都市社会は資本主義社会であり、大都市それ自体が資本主義の産物であるともみられるように、生活の場である以上に、資本の利潤追求の場になっています。資本のあるものが、資本の力によって事業にもっとも適した土地を占拠していきます。個々の資本の活動はバラバラであっても、工業、商業、金融、娯楽といった産業別にみると利潤追求の行動形態が似通っていることから、共通した立地を求める結果、工業地、商業地、業務地、歓楽街といった地域分化が進んでいきます。
居住者が住宅、環境を改善していこうとする力と資本が利潤を追求する力とが相対立しからみ合って、都市は変化発展していきます。都市居住者層は、都市生活様式の変化にともないより生活に便利な都市機能を求めますが、資本もまた利潤の拡大化をはかり、その立場から都市機能の更新、営利の対象としての土地の利用の高度化をつねに求めています。きわめて重要なことは、日本の近代都市形成の特徴として、都市環境の更新がもっぱら資本の立場からなされてきたこと、しかも資本の活動が居住環境をくいつぶす形で進んできた点にあります。資本の活動が主導的立場を占めてきた要因は、都市居住者一般は労働者として資本に対し被支配の立易におかれていたこと、居住地の核としての住宅も資本の経済法則に従っていることに求められます。つまり、資本主義経済は低賃金を軸として労働者を解体再編成しながら高度化していき、その過程で失業、半失業の貧困層をはじき出していきます。また、都市住宅の主体は、借家として供給されますが、居住の快適性がまず保証されるのではなく、営利の対象としてしか考えられず、住宅、土地の商品としての特殊性にもとづく需給関係の矛盾は、住宅の量的不足と質的低下を生み出すことを不可避としています。
このような点に注目すると、都市の居住地分化の考察の視点として、第1に、都市の成長は、都市居住者層と総資本の相対立する要求がからみ合い、その要求の矛盾が発展していく過程であると規定されます。第2に、その過程において貧困層の住宅難が拡大再生産され、都市居住地形成の主体である都市居住者層の住宅要求および居住地指向は著しく制約されていることが指摘されます。

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