既往の都市計画の問題点

明治以降の日本の都市発展は、もっぱら産業中心に展開し、住居、居住環境はきわめて低い状態にとどめられてきました。都市計画は、当初から軍事上、産業上の都市整備に目標をおいてきており、しかもその内容は、都市発展の諸矛盾が産業、経済上の重大な欠陥となってあらわれたときその障害を最小限度に取り除くという対症療法的なものであったといえます。都市計画法の第1条で、都市計画の意義を交通、衛生、保安、防空、経済等に関し永久に公共の安寧を維持し又は福利を増進するための重要施設の計画にして、と規定していますが、その文脈から明らかなように、公共の福利に名を借りた軍事上、産業上の空間整備を意図したものでした。都市は人間生活の場であり、住みよい環境を整備していくことが都市計画の重要な目的であるという認識を欠いてきたところに、過去の都市空間の諸計画、諸事業に共通する基本的な問題点があります。

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間取り

今日の都市計画において骨子となっている理論は、用途地域論です。これは、職場と住居の分離を基本とした地域の純化を目標とし、商業地域、工業地域、住居地域といった地域の専用化をはかろうとするものです。しかし用途地域制の設定は、現状においては一般的な高・住、工・住という混合的な土地利用を現実迫随的に是認せざるを得ない結果になっています。ブルジョワの居住する高級住宅地や大工場の集中する臨港地区にのみ、資本による地域占有の成果として専用化の傾向がみられ、このような地域だけが住居専用地区あるいは工業専用地区としてその環境維持のため厳しい用途、密度規制がみられているにすぎず、その他の大部分の地域はザル法的規制によって混合のまま放任されています。用途地域制の採用は、自由放任の企業活動を最小限調整し、総資本としてみた活動の効率低下を防ぐことを狙いとしていますが、究極的には利潤追求の諭理にしたがう個々の資本の恣意的な立地要求によって破られていきます。
現実にみられる居住地の姿は、商業地域や工業地域に対する住居地域という単純な形をもってあらわれているのではなく、居住者層の階層分化、住宅供給の多様化、種々の職住混合などをもとに、様々な性格の地域に分化しています。これまでの居住地に関する計画といえば、極端に不良化のすすんでいる地区の改良計画か、郊外における新市街地の造成を目的とした住宅、団地計画がみられる程度です。団地計画にしても、たしかに新たな都市生活様式と居住環境を提示しはしましたが、都市居住地全体からみれば、ホワイトカラーの一部の層に受け入れられたにすぎません。他万では、それを上回る規模の低質住宅のスプロールが拡がっており、既成市街地の住居環境の悪化がすすんでいます。
近年では都市や国土の長期ビジョンの必要が盛んにとなえられるようになりました。都市の土地利用計画から国土全体の総合開発計画に至る一連の計画の公的策定化がすすめられようとしていますが、そのねらいは、高度経済成長の矛盾が国土的な規模で拡がり経済活動が抵下してきたことに対する新たなテコ入れとみなされます。今後は都市空間に対する新陳代謝の要請がますます強くあらわれてくることは間違いありません。
都市計画法はすでに改正され、都市再開発法の制定も急がれており、都市の土地利用を大幅に変えていくための諸方策が整備されつつあります。その内容は、居住地の私有権の制限を強化することにより産業活動の高度化への道を開き、生活基盤整備は受益者負担で、産業基盤整備は公共投資でという方向にすすみ、さらに大都市間の人口、産業の集中を積極的に容認し、その集積効果を資本が吸収していくための都市空間に対する民間資本活用がはかられるようになります。
都市整備がそのような方向にすすんでいくならば、居住地の不安定化、不長化はさらに強まり、居住者についても開発や再開発により浮かび上がる層と沈む層のふるい分けが一層激化します。そうなると今日において、住民主体の都市計画を住民の力によって樹立していくことが急務となっているというべきです。都市計画を生活空間計画として把握することから出発し、全般的に低劣な住居および環境の質を居住者層の改善要求を基礎として幅広く改善することを目標とした居住地計画論の理論化が積極的にすすめられるべきです。

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