居住地改善の基本的方向

居住地改善を押し進めていくためには、住居の質について次の二つの点が注目されねばなりません。第1には住居の質を構成しているのは、建築としての質だけではなく、居住状熊としての質、環境としての質があるという点です。住居の質を構成するこれらの諸要素の全体を改善するのではなく、住宅の供結という形で住居の施設状態だけの改良に限られるならば、住居の質の構成、要要素の矛盾があらわれ、その結果は居住状態の質的低下という形に皺寄せられていきます。第2に住居の質は、それを規定している内的条件、外的条件の変化によって当然変質します。生活の貧困化や都市構造の変化にともなう住居の立地条件の変化といったことが、長期的には居住状態や住居環境の質を低下させるのです。このように、住居の質的状態は、住宅の供給が行なわれるとか住宅の修復がなされるなどによって施設状態が良くなれば維持されるというものではなく、質構成要素間の矛盾があるとか生活や環境の変化があらわれれば当然に変質していきます。しかも、それは質を低下させる方向にすすみやすく、都市住居全般にわたる質的状態の低さを向上発展させていくためには、住居の質を規定しているこれら諸側面全般について抜本的な居住地改善が進められる必要があります。

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間取り

住宅の改善は量の供給と質の改善という二つの側面を通じて行なわれますが、質的改善を徹底して押し進めるためには、その前提として住宅供給体糸の整備がなければなりません。世帯分離や社会移動にもとづく新規住宅需要に対する大量の住宅供給システムが確立されねばならず、老朽荒廃化している住宅の量を追い越す住宅の供給によってこれら住宅居住者のリプレイスが保障されなければなりません。さらに、供給された住宅の維持、修繕を恒常的に行ない、住居の不良化を防止する管理体制が供給体制にともなわねばなりません。以上は供給面での整情ですが、これとともに、既存住宅の質的低下を未然に防止するための施設状態の法的諸制限の整備、さらに個別に存在している老朽化の著しい住宅の改修、修繕の公的施策が必要となります。
供給される住宅について、間取りの便利さ、設備の充実、世帯人員と見合う居室の碓保、といった居住の質を保証する条件がまず整っていなければなりませんが、それら住宅における居住の質を向上させていく原動力として、居住者の注宅改善に対する主体的な意欲の形成が重要です。今日の都市居住者、特に下層住民は高度消費生活様式の普及によって窮乏意識を深めています。それが居住者をして見かけの生活改善に向かわしめ、その結果、窮乏感が一層深まるという悪循環に陥っています。しかも、居住者の受けとめ方の違いによって、居住状態には著しい格差があらわれています。このような居住状態の質的改善をすすめていくためには、居住者の個々別々の改善ではなく、家事、育児、教育、医療、労働などの生活組織全般にわたる再構成が住宅の社会化や生活の共同化を軸としておしすすめられていくことが重要です。居住者の自発的、民主的な組織化が行なわれ、住民が一体となって集団的な改善をすすめていくという方向に発展していくべきです。
環境の質的低下は住宅、地区、都市の各段階にわたって多角的にあらわれているため、環境の質的改善も都市の住居環境全体を組織的、段階的に再編成していく中においてすすめられなければなりません。零細錯綜化した土地所有とともに職、住の混乱した土地利用も抜本的に改められ、都市における健全な住民生活の確立を基調とした職住調和の社会が創出されていかねばなりません。適正な居住密度のもとに住居集団がそれぞれ特色ある景観をつくり出し、各地域には住民の要求する各種の共同施設、公共施設、都市施設が充足されるべきです。
地区改善の当面の目標は、生活空間の荒廃化から地区を守り悪化した環境を修復していくという点に集約されればよく、現在のところ居住地一般につき居住者の要求を基礎として幅広く地域を改善してゆくという道は開かれていません。したがって、住民が地区改善に自主的にとりくみ、自ら改善計画を立てる自治体にそれを認めさせるといった住民運動をおしすすめてゆくべきです。そのようなとりくみ方の試行錯誤の中から、住民個々の利害が調整され、やがては都市住民全体の連帯へと発展して、住民自身が都市のマスタープランを作成し、それを実現していく方策がうち立てられてゆくはずです。さらに長期的な展望としては、都市空間の一層の高密化と都市機能の一層の更新が予測される状況下において真に豊かな都市生活を実現する国民のビジョンが確立されなければなりません。構想の実現については、消費生活中心から生産生活中心の都市生活に転換せしめ、住宅の社会化と地域生活の共同化を軸とした都市生活をどのように創造していくかということが、究極的な課題になると思われます。

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