価値財としての住宅

日本だけでなく、各国の実際の住宅政策をみると、住宅サービスに対する公的補助のすべてを、住宅の外部経済効果に求めることは困難であるように思われます。マスグレイブは、排除の原則にしたがって、市場システムによって効率的に供給されることが可能ですが、ある人々、おそらくは多数の人々によって他の人々の選好形式に干渉を加えて、ある対サービスの消費を助長するような選択を行った場合、その財サービスを価値財、それに対する欲求を価値欲求と呼び、公的に供給される低家賃住宅をその一つにあげています。その他の例としては、学校給食、教育や医療サービス等があげられています。マスグレイブは自身による議論を次のように補足しています。つまり、こうした現物による移転は、再分配が唯一の目的ならば現金移転の方がすぐれているので、選好への介入が望ましいことを示唆しているとして、こうした財の存在はいくつかの方法で説明できます。一つは支配的グループや権威当局の嗜好と価値観に基づく強制的、非個人主義的な選好決定を基盤とするものです。次に第二の説明として、消費者がその一般的な見解を是認する代表者に決定を委ねることであるという点をあげています。第三には、末成年者にはガイダンスが適用されなくてはならず、あるいは消費者の情報が不十分なために、消費者に末知の品目を示すことによる学習経験が必要であるという点があげられ、さらに、温情主義的慈善や、ある基本的な消費品目はすべての人が等量利用可能であるような社会的厚生関数が要求されるという説明も加えられていました。

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それに対して、西部邁は、マスグレイブのように、いくつかの理由を羅列的に挙げるのではなく、社会システムにおける統合機能を明示することによって、価値欲求の成立を説明しようとしていました。価値欲求は客観的な基礎の上におかれるべきであるとして、価値欲求の根源を社会に潜在する統合における共同的側面あるいは、共同の企てに求めます。統合における共同的側面とは、社会全体における共通の価値や規範のことです。この社会が共有する規範を次のようにして導出しています。
はじめに、コミュニティ全体の共有規範は、集団の分立性とコミニュケーションの間接性のために、不明瞭かつ不安定なものにならざるをえないと断ったうえで、コミュニティがいやしくもその名に値するものであるならば、諸個人および諸組織を統合する環がどこかになければならないはずであり、結局、コミュニティを統合する共有規範は参加の次元にまで下降することによって得られると考えられます。つまり、諸個人はその所属組織を各々異にしているといっても、諸組織の個別活動はコミュニティ全体の相互依存の網目に包み込まれています。この相互依存件の構造は、ゲシュタルト心理学の用語でいえば、図柄としての個々の活動に対する地の役割を果すことになります。諸個人の活動が対立、葛藤を起す場合ですら、この地としてのコミニュケーションシステムが前提とされています。換言すれぱ、相互依存性の規則化は相互依存的諸活動に対して論理的に先行するはずのものであるとして社会が共有している規範を実証的に導くことを試みています。より具体的に述べれば、コミュニティが統合された一つの全体として存続するためには、コミュニティの全成員の参加を確保することに関する規範がなければなりません。
コミュニティにおいては、コミュニケーションシステムに全成員が参加できるようにするための条件を整備すべきであるという共有規範が成立します。かくて、参加条件を重んじる我々の公正規範は、ソーシャルミニマムの実現に主たる関心を注ぐものだといえます。つまり、コミュニケーションシステムからすでに脱落している人々、あるいは脱落の危険にさらされている最下層の人々の救済を主たる内容とします。この意味で、我々の公正規範は参加原理もしくは最低保証原理と呼ぶことができるとされています。この参加原理は、一つの事実命題であり、それは社会的コミュニケーションの基底的レベルにおいて諸個人の同質性あるいは共同性が成立しているという認識から導かれたものであることに注意しなければなりません。
価値財を社会が共有する公正規範、あるいは社会の統合における共同の企てから導出しようとし、結局は統合における共同の企ては、実は生活必需品に関してシビルミニマムを維持せよという通俗の要求にほぼ対応します。
それでは生活必需品とは何でしょうか。ある財が必需品であるかどうかを社会が共有する公正規範に基礎づけられた価値欲求との関連が強いか弱いかということを基準にして判断することができます。より具体的には、社会の有効な統合にとっては、各人が健康に生存し、基礎的教育を受けて文化的に生存し、道路や環境などのコミュニケーションチャンネルを与えられて、他者と物的及び精神的にコミュニケイトしうる主体になることが必要です。このための条件整備にとって重要な役割をはたす財サービスが必需品です。市場にまかせたのでは必需品が不十分にしか供給されないとすれば、その場合には公的介入が要請されます。

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