平等主義と住宅の公的供給

価値財の公的供給は、それが公的に供給される理由を参加原理、より具体的には社会の統合に求める場合にも、結局は分配の公正の問題に帰着しますが、それは単なる分配問題に終わらない事を含んでいます。もし、単に分配だけが問題ならば、支出対象を指定しない貨幣によって所得を再分配すれば済むはずだからです。市場機構は、そのままでは分配の不平等を拡大する傾向があります。所得や財サービスの消費水準に関する不平等の拡大は社会の統合を乱してゆくことになります。その場合、経済学者にとっては、社会の統合を回復、より平等化するためには、支出対象を指定しない貨幣による所得再分配と、財サービスによる直接的再分配のいずれがより効率的に目的を達成できるかという点が問題になります。経済学者の多くは、伝統的に支出対象を指定しない貨幣による所得再分配の政策の方が財サービスによる直接的再分配よりも経済の効率性を阻害することなく、分配の公平を達成することができると考えてきました。それは、外部性とか費用逓減とかいった事情が存在しないかぎり、特定の財サービス市場に政策的に介入することは、効率を阻害することになると考えられるからです。しかし、実際には、多くの国で医療、教育、交通、食料、住宅等の基礎的部分を通じての再分配政策が行われています。こうした、ある特定の財を通じての平等主義をジェームズ・トービンは、特定財に関する平等主義と呼んでいます。それでは、特定財に関する平等主義が、現実に採用されているのはなぜでしょうか。カール・シャウプは、その理由として次の二つの点をあげています。つまり、分配する側に立つ人々は、分配を受ける人々が、ある特定の財サービスの消費水準を引き上げることができるように援助することには同意しますが、使途を指定せずに、貨幣によって所得を再分配することには容易に同意しません。特定の財サービスによって再分配すれば、それらの財サービスが再販売可能でないかぎり、分配を受けた人々は確実にそれらを消費する。通常、財は再販売可能であるので、再分配されるのは、財でなくサービスである場合が多い。

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シャウプが指摘した事は、二通りの解釈ができるように思われます。一つは、特定の財サービスを分配する側の人々が、分配される人々によるその特定の財サービスの消費から外部効果を受けるというハロルド・ホックマン、ジェームス・ロジャーズ流の解釈です。この場合には個人は自分が消費する財と他人が消費する財との間のトレードオフを示す一つの効用関数を持っていることになります。言い換えれば、分配する側の人は、自分の消費水準をある一定水準犠牲にしたときに、自分の効用を一定に保つためには、分配を受ける人のある特定の財サービスの消消費水準がどれだけ増加すればよいかを知っていることになります。
もう一つは、個人は自分が消費する財に関する個人的な効用関数とは別に、他人の消費、特に他人の基礎的サービスの消費に関する社会的な効用関数を持っているという解釈です。この場合には各個人は貧しい人の消費水準を引き上げるためには、自らの私的消費水準を引き下げなければならないということを、明確には意識していないと考えられます。しかし、人々が持っている社会的な効用関数の要素の中には、人々の所得分配の状態ばかりではなく、特定の財に関する分配状態も含まれているかぎり、分配の公正を達成するためには、貨幣による再分配政策のみならず、その特定の財に関しても再分配政策を実施しなければなりません。一般に人々が低所得者層に対して公的に住宅を供給することに賛成する場合には、私的な効用関数と社会的な効用関数とが独立に存在している場合が多いように思われます。人々が一方で福祉の充実を主張しながら、他方では税負担の増大に反対する場合は、その典型です。
それに対して、貨幣によって所得を再分配する場合には、分配された所得は、人々が望ましいと考える財サービスには必ずしも支出されず、遊興費や贅沢品に支出されるかもしれません。
住宅サービスについていえば、人々は一般的な貨幣による所得再分配政策も必要ですが、低所得者層が住宅サービスのある一定水準を消費できるようにする再分配政策も必要であると考えているように思われます。

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