公的住宅の生産と住宅の公的供給

分配の公平、あるいは社会の統合という基準からみて、一定の所得水準以下の低所得者層に住宅を公的に供給することは望ましいと考えられます。しかし、このことは住宅そのものを公的に生産すべきであるということを意味していません。低所得者に住宅を公的に供給すべきであるとしても、政府によって生産された住宅サービスを無料ないし低家賃で供給するか、あるいは私的に生産された住宅サービスの消費に対して補助金を与えるかのいずれが望ましいかは、別の問題です。

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政府によって生産された住宅サービスを無料ないし低家賃で供給するか、あるいは私的に生産された住宅サービスの消費に対して補助金を与えるかのいずれが望ましいかは、産業組織論上の問題と分配の公平とを考慮して決定すべきです。まず、産業組織論上の問題とは、次のようなものです。つまり低所得者に住宅を公的に供給するためには、単に住宅だけでなく、交通、道路および下水道、ごみ処理施設等の生活関連施設が同時に供給されなければなりません。その場合、公的な主体が、これらすべてを計画的に生産し、宅地と同時に建物も供給する方が、垂直的統合の利益が発生するかもしれません。
分配の公平という観点からは、政府によって生産された住宅サービスを無料ないし低家賃で供給するか、あるいは私的に生産された住宅サービスの消費に対して補助金を与えるかのいずれが望ましいでしょうか。住宅が公的に生産され、低家賃で貸付られる場合には、新たに追加供給される公的住宅についてのみ所得分配が行われるのが普通です。その場合には、一旦公的住宅に入居し得た者の既得権益は絶対的になりがちです。財サービスを直接分配する場合には、居住者に住居の明渡しを求めることは、物理的な権力の発動を伴わなければならないことが多く、したがって、既得権益はどうしても絶対的にならざるを得ないように思われます。そのために、公的住宅の居住者よりも、はるかに低い所得水準の者が公的住宅に入居できないという不公平な状態が恒常的に続く傾向があります。実際に、ある水準以下の全ての所得者に、同時に公的に生産された住宅を供給することは不可能です。しかし、入居し得た低所得者に対してだけ有利に作用するというのでは、分配の公平は達成されません。
それに対して家賃補助政策はフローの概念である住宅サービスを消費することに対する政策であり、補助金を受ける資格は所得水準や家族構成によって規定されます。この場合には、すでに存在している、全てのストックとしての賃貸住宅が、ある一定の期間、再分配されることになり、住宅の公的生産の場合のような既得権益保護に伴う分配の不公平という問題は生じません。た だし、アメリカの住宅補助政策にみられるように、補助が新しい建物に限られるのであれば、公的生産の場合と同じような分配の不公平が生じることになります。
以上のことから、一方で、スラム・クリアランス、日本の場合は住宅地区改良事業、や公共賃貸住宅の団地建設の場合のように、生活関連共同施設と住宅とを同時に公的に生産して垂直的統合の利益をはかり、他方で、分配の公平を達成するために、所得や家族構成等について一定の基準を満たす、全ての家計について妥当と思われる住宅サービスの水準と能力家賃とを定め、その能力家賃と市場で決定される家賃との差額を補助する攻策とを組合せて採用することが、最も望ましい住宅政策であると思われます。後者の家賃補助政策は公共賃貸住宅の居住者にも適用されます。したがって、一定所得以上の公共賃貸住宅入居者は、家賃補助を受けられず、民間家賃並みの家賃を支払わなければなりません。このようにすれば、公共住宅の供給に伴う分配の不公平という問題はほとんど解決されると思われます。

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