家賃の負担と公共賃貸住宅の分配

住宅が公的に生産され、低家賃で貸付けられる場合には、新たに追加供給される公的住宅についてのみ所得分配が行われるのが普通です。その場合には、一旦公共住宅に入居し得た者の既得権益は絶対的にならざるを得ないように思われます。所得が上がったからといって、明渡しを強制することは困難だからです。そのために、公共賃貸住宅の居住者よりも、はるかに低い所得水準の者が公共住宅に入居できないという不公平な状態が恒常的に続くことになります。これは、現在、公営住宅がかかえている最大の問題の一つです。この問題に対処するために、34年の公営住宅法の第2次改正において、入居後3年たって収入が一定の額をこえるようになった人には、住宅を明渡す義務が課せられるとともに、事業主体に対しても他の適当な住宅への斡旋の努力義務が課せられました。

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公営住宅の家賃は、実際の建設費から国の補助を差引いた金額を基礎にして決定されますが、入居者の負担能力を考えてさらに一定額を地方自治体が補助して滅額しています。収入超過者や高額所得者に、このような家賃補助金を支給するのは不公正この上なく、収入超過者からは割増家賃を徴収していますが、その算定の基礎となるのは建設年度の現行家賃であり、著しく不合理です。このように公営住宅や公団賃貸住宅の家賃は建設原価を基礎にして決定されるので、ほぼ同じ住宅サービスを受けていても、建設時期によって家賃が異なるという家賃負担の不公平が生じます。このような不公平を是正するために、公団では空家になった住宅については、再評価額に基づく家賃と現行家賃との差の1/2程度を値上げするという、空家家賃制度を採用しています。しかし、これは同じ住宅に住みながら異なる家賃を支払うという、別の不公平を発生させるだけでした。
さらに、現行の公団の家賃体系の下では、公共住宅の維持、管理も難しく、近い将来スラム化するおそれさえあります。このように、公共賃貸住宅の管理状況は著しい不公平をもたらしており、混乱の極みにあると言えます。
このような家賃負担等に関する不公平を是正するためには、まず、公共住宅政策とは基木的に住宅サービスによる所得再分配政策に他ならないということを認識する必要があります。住宅サービスによる所得再分配政策は、必ずしも住宅を公的に生産して、低家賃で貸付けることだけを意味せず、その方法にはすでに述べたような欠点があります。分配の公平を図りつつ、資源配分の効率を達成するためには、家賃の決定を市場機構に委ね、一定の所得水準以下の者に関して適正家賃を定め、市場で決定された家賃とこの適正家賃との差額を補助するという家賃補助政策が最も望ましく、この制度は公共住宅の入居者のみならず、民間の賃貸住宅にも適用されなければなりません。現行の制度と家賃補助制度との最大の相違点は、前者が新規建設分の公共住宅についてのみ所得分配を、しかも割当によって行うのに対し、後者は新規建設分の住宅ばかりでなく、すでに存在している、すべてのストックの賃貸住宅も、ある一定期間、再分配されるという点です。したがって家賃補助制度の下では、現行制度のような既得権益保護に伴う分配上の不公正という問題は生じません。家賃補助制度は、イギリス、ドイツ、フランス等で住宅手当制度として採用されています。
住宅宅地審議会は、家賃補助制度にほぼ相当する、応能家賃制度を答申しました。この制度の採用にあたっては、公共賃貸住宅の入居者から強い反対が予想されましたが、応能家賃制度は合理的なものであること、この制度の採用なくしては分配の著しい不公平を回避できず、住宅の維持、管理も困難であること等を説明しつつ、実施すべきです。この政策に代えて、公共住宅の大量建設がしばしば主張されていましたが、公共住宅の建設には時間がかかり、また、大量に建設されたからといって、分配の不公平が解決されるわけではありません。ただし、家賃補助制度の採用にあたっては、同時に地価対策が採用されなければ、逆に地価の上昇と土地投機とを促進するという点に留意しておく必要があります。

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