宅地開発と地方自治

生活関連公共施設の財政負担をめぐる問題は、現行の財政、特に地方財政制度が、急速に変化しつつある財政需要に全く対応できないために生じたものです。財政需要の変化は基本的には次のようにして生じました。戦後の経済の高度成長は、人々の所得水準を急速に高め、それに伴って所得弾力性の高い、教育及び公園、上下水道、ゴミ処理、快適な交通手段等住環境の改善に対する需要が増大しました。シビルミニマムと呼ばれる基本的な財サービスに関する平等主義的な思想の広まりは、この傾向を一層強めています。また、人々および企業の活動水準の上昇は警察、消防、防災といった安全保障に対する需要を高めつつあります。これらの財サービスは集団的に消費される公共財ないし準公共財であり、資源配分の効率性あるいは分配の公平という二つの基準からみて、価格機構に全面的に依存すべきではなく、なんらかの財政措置を必要とします。

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さらに人々の所得水準の上昇は、人々の私的財の消費水準を高めましたが、それにともなって、私的消費と集団的消費とのアンバランスが著実になってきています。現行の中央集権的政治機構、財政機構はこのような集団的消費を中心とする財政需要の増加によく適応できるものでしょうか。所得の増加と私的消費水準の上昇ということに限ってみれば、中央集権的に生産基盤公共投資を行い、企業活動を財政、金融等を通じてコントロールするという従来の政策は、かなりうまく機能してきたように思われます。所得と衣食を中心とする私的消費の増大が、最も切実な問題である場合には、どこに居住するかということはほとんど問題にされません。人々は高い所得が得られるならば、相当の通勤難や住宅環境の悪さ、あるいは農村から都会への出稼ぎによる家庭環境の破壊といったことにも耐えようとします。しかし画一的な所得の上昇よりも住生活を中心とする集団的消費に対する需要が相対的に高まり、また、その内容が多様化するにつれて、中央集権的な機構、中央集権的な財政機構の欠陥が明らかになりつつあるように思われます。それは住生活とは地域的なものであり、各地域の住生活の水準に対して責任を負っているのは、その地域の住民によって選ばれた地方政府であって、中央政府ではないからです。
例えばある地域の生活環境が企業活動に伴って発生する公害によって悪化したり、他の地域の生活環境に比較して著しく低くても、中央政府はほとんど責任を負わず、また負わせる政治的機構も存在しません。つまり当該地城の住民は、選挙、リコール等の通常の政治的手段によって中央の政権を交代させることはできません。また、中央政府の地方政府に対するコントロールが、隅々にまで複雑に入り組んでいる場合には行政の責任の所在も曖昧になりがちであり、地方が独自のアイディアで行政を進めてゆく余地はきわめて限られたものになりますが、現行の制度はまさにそうした状態にあります。
中央政府が地方政府を強くコントロールすればする程、地域住民がその多数の要求を地方財政に反映させることは、ますます困難になります。もともと地域住民の地方政府に対する要望とは、外交とか国防といった、一国にとって基本的、体制的あるいはイデオロギー的要素を多分に含んだ事柄にかかわるものではなく、きわめて地域的、日常的な生活水準にかかわるものです。地方自治の理念とは、そうした地域的、目常的な生活水準にかかわる地域住民の欲求を中央政府によって干渉されることなく、自律的に地域住民自らが政治的手段によって満たしゆく機構を保証しようとする考え方です。
都市化の波が広く農村部へ拡大するにつれて、公共財、準公共財に対する需要はますます増大していきます。それに対して,地方政府は中央政府の厳しい統制下にあり、自主的に決定できる権限をほとんど待たず、したがって、住民に対してその責任を果すことができない状態にあります。このように考えると、地方自治を確立しようとした24年のシャウプ勧告における地方財政制度に関する基本的考え方に立ち帰ることが必要であると思われます。
地方団体の機能は特に国民と密接なものがあります。これらの機能のうちには、教育、病院、疾病の予防、衛生施設、救済、母子厚生、警察、消防、街路リクリェーション、住宅および身体障害者の世話といったような重大なサービスおよび施設の提供が含まれます。それらは特に各個人のために機会とよりよき生活条件、より大きな安全保障および災難の防止を供給するように設計されるものです。日本でも、また他の国でもその将来における進歩と福祉とは、他のどのような国にも劣らず、地方政府によって提供されるサービスの量と質とに依存しています。さらに、地方政府は、民主的生活様式に貢献する潜在的な力を持っているものであるために、強化されなければなりません。強力な、独立した、実力ある地方政府が存在すれば、政府的権力は分散され、遠隔の地に集権化された非個人的な中央政府よりも、その地城の住民に密接したところに置かれることになります。地方政府は市民を教育し、民主主義の諸技術に関して指導者を訓練するためにも有効な手段を備えています。地方攻府が管理、運営される方法は市民が容易に観察、理解しえるものです。市民は地方政府から受ける利益とそれに要する費用との間の関係を明確にはかり知ることができます。地方の段階において発達した習慣と態度とは、国の段階において政府の行動に影響を及ぼすと期待されます。

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