個人住宅用地と地価上昇

個人住宅用地は地価が上昇してもそのことから利益を受けないといいますが、個人住宅用地であれ、企業用地であれ、土地所有者が地価上昇によって利益を受けることに変りはありません。例えばある人が一定額の資金で土地を購入して居住する場合と、ほぼ同じような家を借り、同額の資金を定期預金してその利子でちょうど家賃が支払えます。したがって、年々の利子はすべて消費されてしまうという場合を考えてみるとします。さらに、いま問題にしている人が10年後に死亡し、その財産は彼の配偶者と子供によって相続されるとします。この場合、もし地価が10年間不変であれば、相続財産は同じですが、地価が上昇していれば相続財産の方が、地価上昇率×当初の投下資金額、だけも大きくなります。相続人が相続前と同じ水準の土地用役を消費するとしても、相続財産額が大きいほど有利であることは自明です。

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特に標準的な大きさの個人住宅用地は、地価上昇の利益をほとんどうけないと考えられると、傍点部分が強調されています。このように強調するのは、標準的な大きさの個人住宅用地の所有者である個人は、地価が上昇するかしないかにかかわらず、その土地を居住用に必要とし、売却できるほどの土地を持っていないので、地価上昇によって利益をうけないと考えているためです。地価が上昇する時に、売却できるほどの土地を持っていれば、より利益は大きくなることは言うまでもありませんが、売却できるほどの土地でなくても、とにかく土地を持っている方が持っていない場合よりも利益を受けるのです。もし、さきの引用文が正しいのならば、個々の事業にとって標準的な大きさの用地もまた地価上昇から利益を受けないということになるはずです。
確かに、土地に対する固定資産税が地価上昇とともに増加すれば、地価上昇による利益はその分だけ滅少します。しかし、固定資産税の税率が地価上昇率と同じ率で上昇しないかぎり、土地所有者は所有地の値上りによって利益を受けるのです。企業の立地は、そこから受ける便益とコストの比較衡量にもとづいてなされます。しかし、個人も、その土地に居住することによって得る便益とその土地に居住するための費用、つまり地価とを比較して、その土地に居住するかどうかを決定しているのです。例えば便益に比べて費用である地価が高すぎれば、人々は便益は少し劣るがより安い土地を探すことになります。この場合に、以前からある土地に住んでいる人にとっても、彼にとってその土地に住むための費用は、土地の取得価額ではなく、時価総額であるという点に注意すべきです。なぜならば現在の消費や他の資産への投資を犠牲にしている金額は土地の時価総額であって、取得価額ではないからです。つまり費用とは機会費用であって、実際の支出とは必ずしも一致しないのです。
以上の検討からすれば、構想のような効率性の基準に従って、固定資産税の課税にあたって、個人住宅地と企業用地とを区別することは、妥当であるとは思われません。実際には,宅地価格の高騰にともなって、固定資産税が急増するのを避けるために、固定資産税は評価額に基づいて課税されることなく、負担調整措置が採られており、また、評価額そのものも時価よりもかなり低く、また、市街化区域の農地は、47年度以前は宅地としての価格で売却されているにもかかわらず、宅地評価額よりもはるかに低い農地評価額に基づいて固定資産税が課せられていました。そのため、隣接する土地であっても、一方は宅地として高い固定資産税を、他方は農地として安い固定資産税をそれぞれ支払うという不公平な状態が生じていました。そこで、47年度から、市街化区域農地の固定資産課税の適正化を図ることになりました。
経常的な公共サービスの価値は現在の土地用役の価格である地代、帰属地代に反映されるために固定資産税は地代、帰属地代に対して課せられるべきです。しかし、現行の固定資産税はフローとしての土地用役ではなくストックとしての土地の価額を評価して課税されています。経済の成長率が低く、したがって地価もゆるやかにしか上昇しない経済の場合には、地価を課税標準としても、土地用役価格を課税標準としても、課税額に関して大きな差は生じません。しかし、日本の都市圏の土地のように、地代としたがって地価がかなりの期間にわたって急速に上昇してゆくと予想される場合には、土地の時価と現在の地代との間には、地価は現在の地代の何倍になるといった一定の関係は存在しません。他の事情を一定とすれば、地代としたがって地価の上昇率が一般に高いと予想されている土地ほど地価は高くなるので、そのような土地、例えば生活関連の公共投資が近いうちに行われると予想されているような土地ほど地価を課税標準とした場合の固定資産税と地代を課税標準とした場合のそれとの乖離は大きくなります。したがって、時価を基準にして固定資産税を課すことは、分配上必ずしも公平ではありません。このように考えると、実際の固定資産税課税にあたって、土地が時価よりもはるかに低く評価され、さらに負担調整措置がとられているのは、むしろ土地のキャピタルゲインに対して100%課税することなく、地価を課税標準とするかぎり、次善の政策として、やむを得ない措置といえます。

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