住宅の生産

住宅の生産は住宅の計画から始まって、設計、部材製造、施工に至る住宅を造る活動の総体を指します。また、住宅生産は生産、供給、流通、管理という広義の住宅経営の一過程としても位置づけられます。生産の諸過程のうち、計画や設計を部材製造や施工と切り離して、後者のみを狭義に生産と呼ぶことがありますが、これは前者と後者の業務主体が分離していることの多く、住宅生産の特徴的な性格と関連しています。住宅生産過程は、まず建築主の建築意図や企画を受けた設計者が計画、設計するところから始まります。設計者の立場は建築主、設計を専門業務とする設計事務所、部材製造、施工者の三つの場合があります。それらのいずれによるかは住宅建設の目的、建築主のタイプ、住宅の種類や水準に関係しています。

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例えば公共住宅の計画、設計は建築主が自ら行なうか、または設計事務所に委託されます。施工者に計画、設計させることはまずありえません。これに対して、木造小住宅を建てる個人の建築主は、しばしば設計を施工とともに施工者に依頼します。設計が済むと、その設計に基づいて、施工者が工事を行ないますが工事に必要な部材は部材製造者によって製造されます。このように注文による住宅生産は、一般の製造工業において製造業者が企画から設計、製造に至るまで一貫生産するのと異なり、まず生産すべき住宅の内容を設計段階において設定し、価格を決定したうえで設計を現物化する過程をふむのが普通です。住宅生産においては、これまで生産のイニシアティブは需要側、計画、設計にあり、製作や施工はその技術水準が停滞的であったこととも関連して、不定形な需要にどのようにも応じる従属的な立場にしかありませんでした。しかし住宅生産に対する今日の要請は、不特定需要または特定大規需要のための商品生産を促しており、一方で生産技術は工業化に向って長足の進歩をみせてきました。計画、設計過程と製造、施工過程との相互の交流によってはじめて生産水準は高められていくのであり、生産活動を一貫したシステムとして問題にする視点が重要になってきました。
住宅生産の本来の目的は、人間の基本的な生活手段である住宅の質水準を向上し、それらを安価に大量に供給し、生活空間の全体系のなかに正しく位置づけていくことです。住宅生産を個別の建築主の需要に対する住宅建設としてミクロにとらえた場合には、個別解決のなかに問題が解消していることも多く、例えば富裕な建築主が巨額の資金を投じる邸宅は設計に粋を凝らし、材料、施工に数寄をきわめ、多量の労働力を集中して建てることができます。その成果が技術的、芸術的に高い水準に到達することも稀ではありません。しかしながら、問題はこのようなプロセスが広範な需要層に応えるものとして、一般化しうるかどうかです。資源面からみて,これは明らかに不可能になります。少数の高級住宅が現状において可能なのは、それが少数であるが故であって、現在の生産システムによっては、建設すべき住宅のすべてを高級住宅として生産することは出来ません。零細な個別プロジェクトの無計画な生産を基礎とした現在の生産システムは、資源的にみて大変な無駄が生じているという疑いもあります。たとえ現在の建設技術の水準を全く変えなくとも、適切なプログラムをそれに与えることによって3割から4割程度のコスト低下が可能であろうとさえいわれています。それが事実であるならば、住宅生産システムの変革と技術の革新によって、その労力を住宅水準の向上ヘ転換させるべきです。住宅生産の目指すところは、国民の膨大な住宅需要に応じる安価で高品質の住宅の大量供給であり、それを達成すべき技術の性格は、従来の建築技術には見出せない異質なものです。建築技術は鉄筋コンクリート造や鉄骨造による大規模建築を実現する技術と、小規模な木造を主体とする伝統的、経験的な技術とが併存する、いわゆる二重構造をなしており、在来の住宅技術はその下層に属しています。こうしたことから、住宅技術の向上が上層の技術の単なる住宅への通用によって、達成できると誤解されがちです。住宅技術が目標とすべきは、手工業を前提として一般的な新規性を開発するための技術ではなく、居住性にすぐれた空間を大量につくりだす技術です。要約していえば、住宅の工業化技術であって、建築技術内部からよりも、製造工業における工業技術から学ぶべきところが多く、住宅生産の問題は、住宅問題の領域のなかでは、これまであまり重視されてきませんでした。そもそも住宅問題は、住宅難や住宅不足という形で現われる資本主義社会の矛盾であり、特に低所得者階層に強い被害を与えていました。しかしながら、現下の住宅問題は決して特定階層に特有の問題ではなくなっています。問題の性質が住宅の過密、狭少、老朽、不足といった在来型を克服できねまま、遠距離通勤、人口の過密、過疎、スプロール、高家賃、高地価、公害など新規の型を発生させ、社会福祉、都市計画、および生産の各方向に多画化し複合化することを通じて国民一般に拡大してきているのが特徴です。
例えば高家賃は根本的には住宅政策の貧困が原因ですが、その背景には労働力の不足、資材価格の高騰、生産性の立ち遅れなど、数多くの生産上の問題が控えているのであり、個人レベルでは到底解決の困難な問題として社会的広がりをみせて来ました。従来の住宅生産は、低水準の住宅需要が日本経済構造の底辺部分の利用と照応することによって、辛うじて成り立っていたといえますが、需要、生産の両面における近年の著しい変化は、両者の矛盾を拡大せしめています。こうした矛盾を解決すべく登場する生産の工業化や産業化がまた新たな矛盾を生みだす可能性をはらんでいます。これまで単に技術上の問題としてのみ考えられていた住宅の生産は住宅問題と根底において係わり合っていることが明らかになってきました。

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