住宅工業化の必要性

昭和35年頃から始まった日本の高度経済成長は、人口の都市集中や家族の分解を生み、これが所得の増加による住居費の負担力の向上に裏づけられ、住宅需要の著しい増大をもたらしました。投資類についても30年代後半から40年代前半にかけては、対前年比20%から30%という急激な成長ぶりをみせ、43年には4兆円に達するまでになりました。しかし、こうした需要量、建設戸数の増加は建築費の低下をもたらさず、逆に毎年著しく高騰させることとなりました。製品の大量需要が生産手段の高度化による労働生産性の向上を通じてコストダウンに結びつく工業一般の法則は、建築、住宅については通用しないのです。住宅の主要材料である木材は、その生産に長年月を要し、しかも生産量が有限であるという性質から、大量安価よりも少量高価の供給に常に傾きがちで、したがって価格はたえず高騰を続けています。労働力不足のなかで賃金は一般に上昇を続けていますが、とりわけ建設労務の賃金は他産業に比較して従来安すぎたこと、建設労働への流入が農業人口の急速な滅少に伴って滅退し、労働力不足が一層激化したことによって著しく上昇しつつあります。

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住宅生産は、材料費や労務費のこのような価格高騰を生産技術の進歩による労働生産性の向上のなかに吸収しえずに、建築費の上昇としてはね返らせざるを得ません。住宅の大量建設の実績は一見旺盛な住宅需要に対応しえているかに見えますが、それが同時に建築費の高騰を招いているのでは本当の意味で対応しえたとはいえません。住宅生産が、これまでのように自然材料を用い、在来的な工法で分散的に小規模な単位で零細な建設業者によって行なわれるのであれば、こうした傾向は今後も続かざるを得ません。住宅生産をめぐる厳しい環境のなかで安価で大量の供給を可能にし、しかも今後ますます高まる質的要求を満足させるには、どうしても住宅生産の工業化をはかり、生産、供給体制を根本的に体質改善していかなければなりません。高度に発達した工業社会であり、脱工業化社会への展望までも語られている今日の日本において、工業化がこれから日程にのぽろうとする住宅生産はいかにも後進的です。後進性を強制してきたのはほかならぬ住宅の特質でした。こうした特質に起因する障害を解除していくところに工業化の道が見出されるのです。
住宅生産工業化の主張や実施は決して近年のものではありません。住宅生産をできるだけ現場から切り離し、工場加工に移すのが工業化の一つの有力な方法であり、そのためには乾式材料や部材を組み立てる工法をとることが当然でした。しかし、当時の日本の工業水準はまだそれにふさわしい乾式材料を生産するところまで達しておらず、このため在来工法よりも逆に性能が劣るような結果をもたらしました。工業材料は自然材料よりも高く、労働賃金は安かったため経済的にも成り立ち難かったのは明らかですが、その先駆的な役割は高く評価されるべぎです。
組立住宅は、その後、住宅営団によって徴用労働者のための集団的プレハブ住宅として受け継がれ、さらに第二次大戦後における応急簡易住宅へ発展します。世界のプレハブの歴史をみると、戦争がもたらす住宅の大量需要とこれと矛盾する関係としての資材、労務の払底によって、プレハブ住宅は戦時には開発が推進され、平時には衰退することを繰り返していますが、日本でもその例にもれません。これはプレハブ住宅の成立条件を考える上に興味深く、戦時下あるいは終戦直後の極度の住宅不足のなかにあっては、質よりも量が重視され、需要の個別性は問題にならないという需要側の条件があり、生産側では資材、労務の節約が最重要な条件となります。ところが平時においては住宅需要の緊急度は低くなって個別、分散、多様性が増していきます。品質の高さも求められるようになり、資材・労務事情も改善されます。
戦後の応急住宅のなかで、木製飛行機工場の遊体設備を利用して組立住宅が生産されました。これに参加した業者は最盛時には70社にも達しましたが、5年足らずですべて挫折してしまったといわれます。そのなかにあって、最も長く供給が続き、技術的にも経営的にも最も優れていたと思われるのはプレモスでしたが、これにしても量産化に大きな成果を挙げながらも結局は失敗に終っています。当事者の1人は住宅量産の難しさを次のように挙げています。土地への定着性、需要の多様性、輸送費の過大、低品質住宅との価格競争。失敗の原因はもっとほかにも見出されるでしょうが、工業化の成否は個別の技術水準よりも生産システムにかかっているように考えられるのです。建築や住宅の工業生産化は他の工業製品における機械化や自動化といった単純な方法ではなく、はるかに複雑で多面的な方法を総合的に通用しなければならないのです。

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