住宅の新建材

住宅の工業化は、まず建築材料の工業化とその利用の著しい増加から始まりました。新築された住宅件数のうち普及率の高い新建材は、センイ板、合板、ボード類、床タイルなど、天井、壁、床の面を決める内装材であり、ついでビニールおよび金属の屋根材です。一方で建設材料の生産量の動きをみると、材料の種類によって成長率が非常に異なっていることがわかります。生産量の伸びの著しい新建材は三つのタイプに分類できます。第一のタイプは、これまで他の工業部門で用いられていた材料で、新たに建築分野に応用されるようになったものです。プラスチックやアルミなどがこれに当ります。ただしプラスチックは工業材料としてもまだ開発途上にあるため、全くの新材料であるとみなされます。第二のタイプは二次加工材で、生コンクリート、金属製建具などです。第三のタイプは、在来的な材料を加工または変形して、工業製品の形態を与え、現場での生産性を高めるか、もしくは材料価格の低下化を計ったタイプです。センイ板、石膏ボード、化粧合板、長尺カラー鉄板などがこれに属します。

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在来的な材料から新材料への変革は、資源的材料から工業製品材料へ、素材から加工材さらには構成材へ、片材から面材ヘ、湿式から乾式への移行として性格づけられ、これが現場段階における工法の変革と結合して、手作業の排除、機械の利用、作業の簡易化をもたらしました。建築生産の場合、技術革新は労働手段の進歩によってではなく、むしろ労働対象である建築材料の変革を通じて行なわれ易い性格をもっており、建築は生産性の向上しやすい形に自らをつくりかえることによって進歩したといえるのです。
工業製品の新建材が急速に普及した原因として次の諸点が挙げられます。第一には、技能労働力の不足と技能低下を補うための労働節約と作業の簡易化、第二には、一方で資源的材料価格が上昇し、他方で工業的材料価格が停滞ないし下降したことによる相対的価格関係の変化、第三には材料需要の質的高度化です。しかしながら、ここで注意しなければならないのは、こうした各種新建材は、住宅の工業化の必要上、建築産業が建材産業に対して注文を出して開発させたのではなく、建材産業が独自に開発して建築市場に持ち込んだものであるということです。建築投資額の約半分は材料費であり、建材市場は極めて巨大であり魅力的です。鉄鋼、アルミ、プラスチック、パルプ等の材料の建築材料への用途開発が急速に進められたのも当然でした。建材産業は著しい発達を遂げていったのです。
新建材は建築の需要に合せて生産され売り込まれましたが、それは決して建築生産の合理化や工業化を本来の目的としたものではありません。しかもそのことによって、結果的には建築は一つの方向での工業化が促進され、建築技術における主体性を喪失しつつ、急速に変容していくことになりました。これまで古い遅れた生産形態にとり残されてきた住宅生産は、特に強い影響を受けました。量産化によって大幅なコストダウンを実現したアルミサッシ、ドアが木製建具を駆逐し、それにとって代ったのが代表的な例です。技能の低下と建築費の高騰によって、ますます質の悪化を招きつつある木造住宅に、高度工業製品のアルミサッシが用いられて、技術水準のアンバランスを露呈しているといった事例が目立つようになりました。これまで素朴ではありますが、一つのシステムを持っていた木造住宅技術は、いまや新建材の気ままな侵入によって壊されつつありました。新建材は一般に見栄えがよいので、建築主に好まれ易く、施工者もまた施工のし易さから進んでこれを利用していますが、低コストの住宅にも普及を計ろうとするあまり、材料の品質低下を招く場合も少なくありません。新建材はもともと建材産業の主導において開発されたものであって、建築産業の受け入れ体制は必ずしも十分ではありません。したがって、その普及を計るためには、建材メーカーの側で建築への適用法を開発し、設計者、施工者を指導しなければなりませが、工事単位の設計、施工をメーカーが自ら行なう形をとることもしばしばあります。また、メーカーが建材店、工務店をつなぐ建材流通チャンネルを系統的に編成して、特定材料、特定銘柄の利用を誘導する傾向も現われています。建材産業はこれまで幾種類かの材料生産を除いては大部分が中小企業によっていましたが、建材需要量の飛躍的な増大によって、これらの経営規模は拡大するとともに大企業の新たな参入が起ってきました。そしてこのことが、技術的にも経営的にも、脆弱な零細規模の住宅生産者の基盤を大きくゆさぶる原因となっているのです。

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