住宅標準の確立

日本において住宅の水準を規定する法律としては建築基準法がありますが、これは建築の単体および集合体について、主として技術的側面から一般的に規定しているに止まっています。住宅については、居住水準を確保する立場からの法的規範は何ら存在していません。その第一の原因として、日本の近代国家への形成過程において、富国強兵の国家目標のもと、国民生活に常に犠牲を払わせ、住生活を低水準に押し止めて来たところに求められます。住宅の標準を公的に設定することは、その標準の達成に国や地方公共団体が責任を持たざるを得なくし、低い水準での標準の設定は逆に住宅政策の貧困を露呈する結果となります。国力の強大化とうらはらに、住宅水準は向上するどころか、戦争を契機としてかえって低下の方向をたどってきました。国力の増進と住宅水準の相対的低下との関係は、今日といえども基本的には変っていません。

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第二には、住宅および住生活の様式における急激な変化が挙げられます。明治期における洋風住宅の導入は、まず和風住宅と洋館とのむすびつけから始まり、次第に和洋の融合化に進んでいきました。さらに第二次大戦後の家族関係の変化は、住生活観の変革を伴って、伝統的な住宅と住生活との関係を崩壊させ、新しい様式を見出せないまま、それが住宅生産技術の進歩と無原則に結びついて、混迷状態に陥っている現状にありました。
このような結果、一方で技術の成果を最大限に利用し、巨額の資金を投入した豪華な住宅の一群がみられますが、他方では大多数の一般住宅は、最低限の質水準の保証もないままに大量の建設が進められています。例えば、畳はかつては地域別に京間、田舎間、中京間など伝統的な寸法尺度を持っていましたが、今日では、これらは短縮化の方向に大きく崩れており、一畳の面積に二倍もの開きがみられる場合すらありました。こうなると畳数による室面積の称呼は全く意味をなしません。古くから長い年月にわたって形成されてきた標準がもろくも崩れ、しかも新しい標準はまだ設定されないままにありました。現状のままで工業生産化が進められた場合、工業化が大量需要を前提とする以上、大勢を占める低い質水準に合せて生産が行なわれる危険性もあり、その影響は在来の非工業的生産におけるよりも一層深刻です。これまでも公的住宅に関しては、標準が設定されていました。例えば公団住宅は最も標準化の体系が完備している例ですが、ここでは設計要領、標準設計、標準詳細図、共通仕様書、監督要領、検査要領等によって設計施工の標準化が整備されています。問題となるのは公団住宅についてはこのような標準がありますが、これらは公団住宅にのみ通用される閉鎖的な標準であることです。したがって、設計要領は、標準設計へ一義的に結びつけられており、標準設計が規格設計の性格を帯び、硬直した設計となっていることです。公団住宅の平面は×DKという呼称とともに民間住宅にも普及していますが、単なる形式上の模倣に終始し、決して満足すべき水準とはいえません。公団の設計標準をすら下回る例が多いのです。
住宅標準は、公的住宅のみに適用されるものとしてではなく、国民の住生活の最低水準を保証する規定として、一般的な形で設定されなければなりません。住生活は住宅内で完結するのではなく、住宅をとりまく環境にも及ぶことからして、住宅のみならず、住宅環境、住宅の立地、敷地条件、生活施設等にわたっての標準も設定される必要があります。
住宅標準の設定は、その達成への努力によって裏づけられなければなりません。公的住宅はもちろんのこと、民間住宅についても標準以下の住宅は社会的に欠陥住宅として扱われることによって、コストダウンの品質低下への逃避を防ぎ、生産性向上への努力に向けさせる契機が与えられます。もし、現実と標準との間に格差があるならば、それは政策的努力を集中させるべき部分として、明確な形で国民に示されねばなりません。

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