町場の住宅生産の将来

工業化と産業化が進むにつれて、住宅生産の主流は零細な町場大工から大企業中心の住宅産業に移っていきます。これまでのところ、住宅需要が旺盛であり、産業化もまだそれ程進展していないので、大工による生産も好況ですが、建売分譲、プレハブの仕事割合の増加や新建材流入度の増大などの傾向を通じて、産業化の影響は深まりつつあり、心ある大工頭梁層や木材関係業者に、大工による住宅生産の将来について深刻な不安をいだかせています。町場の住宅生産を担っている大工をはじめとする左官、とび職、屋根職などの建築職人の技能者としての将来という意味では、悲観的な要素は殆どありません。建築技能者は現在非常に不足しており、将来プレハブ化や省力化がかなり進んだとしてもなお熟練技能者を多数必要とすると予測されるからです。

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工業化は建築材料の変換をもたらし職種の内容と構成に影響を与えますが、それへの対応性はかなり高く、例えば大工技能は、木材を扱う技能と部材を組み立てる技能とからなると考えられますが、仮に前者が生かされなくなるとしても、後者の応用できる面はかなり広くなっています。鉄骨系プレハブ住宅の組立てはすでに大工によって行なわれており、コンクリート板の組立てでさえ、イギリスではカーペンターの仕事となっている例があります。
問題は技能者の将来性ではなく、この生産形態の将来性です。大工による住宅生産の特質は、生産対象住宅が主として木造、独立建であり、民間の個人を建築主とし、注文一品生産で、アフターサービスが行なわれ易く、生産組織と経営が零細というところにあります。したがって、将来性も厳密には要素別に検討がなされ、総合してどうかの判断が下される必要があります。
将来の住宅がますます高層化、集合化に向うであらうことは、近年に行なわれた予測調査の結果からも推測されますが、一方で日本の風土的、社会的な環境からみて、木造、独立建住宅も長期にわたって高い割合を占め続けるものと思われます。もし、木材と他の材料との複合構造や低層連続建の住宅形式等を開発し生産種目に加えるとするならば、町場生産のシェアは一層高くなりえます。住宅の個人所有は今後も根強く存続するでしょうが、完全な注文一品生産は次第に困難となり、既製標準部品を多用したイージーオーダー的な形態に移行せざるを得なくなります。
住宅は将来、次第に耐久消費財化し、耐用期間は短くなり、使い捨てされるようになる、という考えもありますが、諸資源の経済と廃棄物公害の防止からみても、そうであってはならないはずです。各部材の物理的な耐用計画と家族のライフサイクルとがうまく組み合わされて、修繕、取替え、増設、取壊しが最小のエネルギーと廃棄物をもって行なわれるようなシステムの住宅をこそ目指されるべきです。町場生産組織は、このような無数の個別で零細な変更工事に応じるに適した素質を持っています。住宅に関する地域的なサービスを提供する主体として、新しい観点で町場を再評価する必要があります。
このように考えてみると、大工による住宅生産の問題点は、生産組織や経営の零細性にともなう生産能力、生産性、生産品質、技術開発における水準の低さにしぼられてきます。もしこの面において、新興の住宅産業に伍して行けないとしたら、大工による生産の存立基盤は次第に失われていくはずです。
経営規模の零細性の特質を崩さずに生産の水準を上げる方法はないものか今後の研究が期待されますが、考えられる一つとして企業協同化の方向が挙げられます。中小企業によるジョイントベンチャーはすでに多くの先例がありますが、ジョイントベンチャーが主に単位工事規模の拡大を目的とするのに対して、ここでいう企業協同化は生産水準の向上を直接の目的としているところが異なっています。受注、生産、輸送、技術開発、材料購入、用地取得など、協同化が効果を挙げうる面は少くありません。例えば技術開発については、新しい時代の要求に応える内容を持ち、木造の特質を最大限に生かした木造住宅システムの開発を建築家や技術者の強力を得て進めるといった構想もあり得ます。大工頭梁が新しい生産システムの創造に主体的、意欲的に取り組むのであれば、町場の住宅生産の将来は開かれるに違いありません。

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