新産業と建設業

建設業は新産業時代のなかで重大な岐路にたたされています。成熟段階に入った技術革新や装置工業における生産規模の大型化、新技術の採用による高次の工業製品の開発、コンピューター性能の画期的な強大化等が質的に変化しつつある社会的需要の増加と結びついて、新しい産業を次々と登場させています。とりわけ社会経済構造の急激な変化にともなって生まれる需要が個人的なものにとどまらず、社会的公共的性格を持ちはじめていることに注目する必要があります。住宅産業、都市産業の場合はとくにその傾向が強く、都市の過密化、公害、住宅難、交通難はすでに深刻な社会問題、政治問題となっており、住宅建設も次第に個人的能力の限界をこえる問題となりつつあります。この社会的需要や要請に応えて、都市の再開発を行ない、都市機能の回復を進め、交通体系を整備し、既成の概念をこえる大規模な住宅建設を行なう事業が、住宅産業、都市産業の目標です。

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今日の都市における交通輸送体係整備について考えてみても、どんなにすぐれた乗用車をつくっても道路が混雑していては、その意味ははなはだ乏しいものになってしまいます。交通手段のほかに道路網の整備、高速化、交通情報の迅速化、あるいは都市再開発まで総合して取り組まざるをえません。そのためには都市工学、社会心理学、法律、税制など多くの分野の協力が不可欠です。新しい産業が最適なシステムづくりと現定されたり、あるいはシステム産業と呼ばれる所以はそこにあります。
これからの建設業を考える場合には、建設業が近年、急速に高まってきた住宅、都市開発を中心とする建設活動への他産業からの新規参入は、驚異的とさえいえます。それは今後予想される建設設資の成長と多角化を、有利な新市場として開拓しようとする資本の欲求ですが、このことは反面では在来の建設業が建設活動、建設事業の主体とならなくなったことを意味するものです。
建設業は伝統的に新規参入の容易な産業であるとされてきましたが、今日進みつつある他産業からの建設生産への参入は明らかにこれまでの参入と意味を異にしています。例えば住宅生産についてみればこれからは家を建てることだけではすまされません。建設省の住宅生産工業化の長期構想、住宅産業のあり方によれば、住宅は都市といういわばトータルシステムに対してサブシステムとしての関係にあり、工業化による大量生産システムが都市開発のシステムそのものと一体不可分に実現されなければならないと主張されています。そこで求められるのは大規模開発を推進しうる資金力と企画力をそなえたデベロッパーです。建設業以外の巨大資本が、それこそなだれを打つように建設活動の分野に進出しつつあるのは、その可能性を自負しているからにほかなりません。そこでは受注産業としての建設業の性格は次第に希薄となり、経営外の要因によって業績が変動するという特殊な概念は通用しません。さらに少量多種生産、一品生産のためにマスプロが困難であり、大規模生産の利点が少ないという今までの通念も、打ち破られてゆくはずです。
アメリカの建設業では、1940年から50年代の建設市場の変化や建設資材の開発の時期に他産業からの参入が激しく進み、近代的な多角化や体質の変革に成功した全業が一挙に上位ランクにのしあがりました。企業の上位進出を可能にしたものは、新しい建設資材の量産化や規格化による施工能力の飛躍的な拡大でしたが、それはいわば建設業の外部における技術進歩の成果というべきであり、古い建設業の枠のなかに留まっていた既存業者はこれに対抗できなかったのです。日本の建設業界の競争は依然として厳しく、工事の大型化によって企業規模別の市場分野は次第に固定化に向かい、競争は階層内に限られる様相をみせてはいますが、なお業者にとっての最大の念願はより多くの受注高、工事量を獲得することです。そのためにランクされた階層外へ進出することが業界のなかではしばしば問題になるのは、周知の事実です。しかし現実を直視するならば、最近では建設業が競争しなければならない真の相手は、むしろ建設業外から現われつつあります。在来の建設業が業界内でのシェア増加にのみ目を向け、近代的な経営体質への脱皮による機能やディベロッパーとしての機能を強化することを怠るならば、近代的な経営力をもつ他産業の大企業に成長分野の多くを浸食されることになり、その結果、大型工事の分野にだけ追い込まれることになります。建設業にとって企業体質の真の意味での近代化は、もはや先延ばしにできない段階にまできているように思われます。

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