建設取引の特質

建設業は造船業や機械製造業などとともに受注産業といわれ、これらと共通の性格を有しますが、建設業は工事のための固定した工場設備のないこと、生産過程における企業者の指揮監督権がはるかに強いことの二点において特殊性を有し、このため企業者と建設業者の関係は特に特定個人的色彩の強いものです。例えば民間工事の場合には企業者に信用のある業者は特命で工事を受注することが多く、また、官公庁工事においては入札の指名に入るかどうかは担当官その他との個人的関係に左右されることが少なくなく、さらに談合において話がまとまらない場合に担当官の意向が解決の鍵となるという。業界でいわゆる天の声です。
建設取引では、ひとたぴ注文者、請負い者となった両当事者は、その後も引き続き契約関係を反覆することが期待される高度に特定個人的な関係です。民間工事においては一度企業者の信用を獲得すれば、その後も工事を特命受注できる可能性が非常に強くなります。

スポンサード リンク
間取り

特定個人的関係は当事者間の信頼によって生じるものであるため、契約書も形式的なものとなりがちで、権利義務の不明確を伴い、住々にして紛議が生じるおそれがありますが、その解決は当事者の力関係に支配され、多くの場合建設業者の泣き寝入りに終ります。これは建設業におけるいわゆる値増問題の事例をみれば明らかです。
一般の商品取引と異なり、建設業においては、施工に当り、気象、地下条件その他自然条件および人為的障害に左右されることが多く、工事は遅れがちです。したがって特約のないかぎり工期は契約の要素とされず、工期遅延がただちに契約解除の原因とはならないのであって、違約金を取り、または取らずに工期の延長が認められるのが通例です。
以上は建設業一般の傾向であって、個人住宅工事の場合は必ずしも該当しません。例えば私達が個人的に住宅を建築する場合には、待殊の場合を除いて取引の継続性は考えられず、建築主が施工業者に泣かされる事例ばしばしば耳にするところです。
建設業界では工事請負契約建設業者と契約において、不可抗力、条件変更、物価労銀の変動等に基づく損害、設計変更および工事の中止または打切りによる損害、発注者の指揮監督権や疑義の認定権について発注者に一方的に有利に定められているとし、その片務性是正の運動が古くから行なわれています。これはいわゆる値増問題と密接な関係があり、これまで値増間題が発生するたびに片務契約是正の運動が起きています。
建設業界では値増問題はお願いの筋であり、法律問題ではないとする考えが強いため、建設業者は意識的に法律を無視する傾向を生じ、発注者側から与えられた工事請負契約書がいかに片務的であっても、無条件にこれに服する慣行が強くありました。しかし、昭和23年7月建設業法が成立し、25年3月には建設工事標準請負契約約款が制定され、建設業者一般の契約に対する関心もようやく高まりました。同年4月発注された米空軍基地工事に関して米軍当局者との間に契約書、図面、仕様書の解釈等につき紛議が生じ、建設業者は巨額の損失を被りましたが、鹿島建設、大林組、日本舖道の三社は共同して契約の定めに従いクレームを提出して多大の効果を挙げました。これが契機となって片務契約是正運動が促進され、標準約款を採用する向が増えていきました。このように、形式的には双務的な契約約款が普及されつつありますが、実際の運用においてはなお旧態依然たるものがあり、また契約条項の解釈はいまなお発注者側の一方的裁量に委ねられています。つまり発注者、特に官公庁と建設業者との関係は現実には依然として上級者、下級者、支配者、服従者の間の封建的な一種の権力関係におかれているのであって、建設取引における契約関係が名実ともに近代化されるには、日本人全体の法意識が高められる必要があり、なお時日を要するものといわざるを得ないのです。

間取り
住宅の生産/ 住宅生産の特徴/ 木造住宅生産の伝統/ 住宅における設計の導入/ 公共住宅の登場/ 町場での住宅生産/ 住宅工業化の必要性/ 住宅工業化の方法/ 住宅の新建材/ 住宅産業化の方向/ 住宅標準の確立/ 住宅技術の開発/ 住宅生産と供給機構/ 町場の住宅生産の将来/ 建設業/ 建設生産/ 建設業の従属性/ 新産業と建設業/ 住宅建築工事の種類/ 建設取引の特質/ 建設業での重層的下請制の崩壊/ 入札と随意契約/ 工事契約の種類/ 工事施工上の問題/ 建築家の沿革/ 設計の瑕疵と施工の責任/ 下請制度/ 建設業の性格/ 建設企業経営の身軽さ/ 建物プレハブ化/ 建設工事費の上昇/ 建設業の経営比率の特色/ 住宅生産の工業化/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー