建設業の性格

建設業には他産業と比ベて、どのような特殊な性格があるのでしょうか。その特殊性は三つの面から考えられます。第一は生産される建設物のもつ特性にもとづくものであり、第二は建設需要のもつ特性であり、第三は生産構造面の特性です。まず、生産物の特性からみてみると、周知のように生産物である建設物は土地に固着され、完成品としては移動性を持ちません。そのため生産は製造業のように固定的な生産工場で完結することはできず、生産現場がそのまま仮設的工場となります。したがって、生産過程は時間的、空間的な連続性に乏しく、生産現場は屋外にあり、様々な場所に分散し、たえず移動します。建設業は移動産業であり、生産過程のこのような断続性は、次ぎに述べる建設需要の多種性、不安定性と相俟って、建設業が大規模生産の利益をうけることを著しく困難にしています。建設業において大規模生産の利益がうけられるとすれば、それは単位の工事が大規模である場合であり、分散している小規摸の内容を異にする工事をそのままの状態で寄せ集めても、工事現場の数が増え、施工高は増加しますが、大規模生産の利益はほとんど受けられません。大規模生産の利益の重要な要因の一つである施工の機械化をとってみても、工事規模が大きくなければ、能率的な機械を使用することはできず、工事内容が異なれば同一機械を利用することはできません。したがって、工事によっては大規模業者が必ずしも有利であるとはいえません。

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需要特性についてみると、需要総額は巨額になりますが、個々の工事はその種類、構造、規模、地域が需要の性質に応じて極端に異なり、しかも政府、企業、個人等幅広い需要主体による注文生産であるため、個別的、一同的です。そして工事が需要者の発注により着手されるだけでなく、設計施工の場合を除き、生産活動に重大な影響を及ぽす設計その他の業務の主導権が需要者側にあるため、建設現場の地理的条件や生産条件等だけでなく、需要者の嗜好によっても影響されます。特に住宅は四六時中そこで生活しているため多様の機能が要求され、現格化、標準化が行なわれにくく、一度使用した設計図なり工程図が再びそのまま役立つことはほとんど皆無です。したがって、建設需要は総額では巨額に上っているとはいえ、その内容は区々で、内容を同じくするものの量は著しく少ない。建設業の生産は注文による多品種少量生産で、規格化された生産のようにあらかじめ資材設備や労働力を準備して計画的に生産することはできにくくなります。
生産構造の特性についてみると、建設業は総合産業で鉄鋼、セメント、製材等の資材やその加工品の供給を製造業からうけ、実際の建設工事は大工、左官、鳶等多数の専門職を必要とし、多数の下請業者により行なわれています。生産は下請に自らは市場にというのが元請の行動原則であるといわれ、元請が経営内に常時保有しているのは大部分が職員で、生産労働者の組織は、工事に際してその都度臨時に編成され、経営に結びつけられ、工事が終るとその結合はとかれるのが普通です。これは建設需要の多様性、不安定性と生産過程の断続性のため、資本の固定化と固定的費用支出は企業経営上危険であり、元請がその危険を回避しようとすることと密接な関係があります。欧米先進国にあっても建設工事はほとんど全て下請に依存しており、下請依存は建設業の産業としての特色からくるものであり、下請は補助的な役割を果たすのでなく、主要な工程の主役であるといわれます。
しかし日本の建設業の下請機構には他国にみられない特色があります。つまり、元請、名義人、世話役、棒心、小頭、労働者と多数の段階にわかれ、重層酌で非常に複雑で、そのうえ非近代的な要素を多分に蔵しています。そしてこれは元請にとって危険分散と同時に利潤抽出、負担転嫁の機構となっています。元請は下請機構に依存することにより、自らは経営の身軽さを維持しつつ、需要の変動に対して下請機構の末端を膨脹あるいは収縮することによって対処することを可能にしています。他方、施主との間に決められた価格のもとで、多数の下請との取引によりその差額を利潤として獲得し、低価格工事にあってもその負担を下請に転嫁することにより採算割れの危険から回避されました。そして相対的過剰人口を背景に建設労働者が豊富であった場合には、このような下請機構に依存することは、元請にとりなんの支障もなくむしろ有利でした。しかし、伸縮自在な下請機構への依存は、必然的に工程分析、それにもとづく作業管理その他の科学的方法や機械の導入などによる生産工程の改善に対しての敏感さを失わせ、合理化による原価低減に対する刺戟を弱める一方で、間接的である労働者に対する元請の関心を低くし、建設労働者の地位を不安定にし、労働条件を劣悪にするという性格を持っていました。

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