建設業の経営比率の特色

建設業では決算が工事完成基準で行なわれるのが普通で、進行中の工事に対する支出や受入は、末成工事支出金、同受入金として処理されています。しかし、未成工事支出金は製造業の仕掛品と異なり流動資産とされていますが、すでに相手の土地に固着しており仕掛品のように流動性がありません。特殊な支払慣行によりほぽ同額の未成工事受入金で裏付けられている場合が多いために、それが大きくても必ずしも運転資金の圧迫とはなりません。そしてこのような性格をもつ未成工事勘定が資産、負債及び資本総額の3割から4割を占めているため、資産、負債及び資本、特に流動資産、流動負債が実質より大きく示され、これらを分母あるいは分子として計算される経営比率は実態を必ずしも正確に示すものとはいえません。慣用的な経営比率の建設業における意味には制約があります。したがって絶対値を他産業と比較するにはこのことが考慮されなければならず、建設業の決算を工事進行基準に直すとか、未成工事勘定の資産、負債及び資本への計上を未成工事支出金と同受入金の差額だけにする等の修正が必要となります。

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近年における建設業の経営比率の変化で、まず注目されることは、固定資産構成比率の上昇です。建設業は産業の性格上、経営の身軽さを特色とし、これを反映して資産構成において固定資産の総資産に占める割合が低いということは周知のとおりです。固定資産構成比率の上昇は経営の重量化を意味し、近年における元請経営の多角化に伴う投資の増大や立替工事の増加等とともに資金を固定化させました。そして資金運用面に現われたこのような変化は、資金調達方法にも影響し、同族的閉鎖的であった建設業も過少資本を是正する必要に追られ、自己資本を増加するため、昭和34年以後株式を公開するものが増加しました。株式公開の結果、著しく低くかった自己資本総資本比率は上昇し、負債比率は幾分改善され、設備投資の増加にもかかわらず固定比率はそれ程変化していません。これは製造業がこの間における設備投資の増大による生産力の拡大を主として他人資本で行ない、諸比率がいずれも悪化しているのと対照的です。建設業はこれまで資本が余りにも少なく、信用力が弱かったため、金融機関の限界的資本需要者にしかなりえず、製造業のように高度成長期の拡張を借入金で賄うことができなかったため、運用資金の固定化を追られたとき、借入能力を増大するためにも株式公開等により自己資本を増強せざるをえなかったためといえます。
しかし業種や資本金規模により相違がり、業種別にみれば、施工の機械化による設備高度化の著しい土木工事業では、建築工事業に比べ固定資産総資産比率は高く、資金の固定化に伴い自己資本総資本比率も高くなっています。しかし固定資産の増加が自己資本の増加を上回っているため、固定比率では建築工事業より悪く、設備、職別工事業の固定資産総資産比率、自己資本総資本比率、負債比率等はいずれも総合工事業より長くなっていますが、これは未成工事勘定の比率が総合工事業に比べ低いことによるところが大きい。また収益状況では設備工事業がもっとも長く安定しているのに対して、職別工事業は変動が大きく、総合工事業では土木建築工事業が良く、しかも安定してます。
資本金規模別では規模別格差が明瞭で、ほとんどすべての指標が規模の大きくなるにつれて良くなっています。例えば完成工事高から工事原価を差し引いた総利益の完成工事高に対する比率では規模の小さい方が高くなっていますが、建設業の一般管理費や支払利息割引料等の営業外費用が大きく、規模の小さい方が相対的に多いため、完成工事高経常利益率では逆に規模が大きくなるにつれて高くなっています。これは中小業者に多い小規模工事では工事単位の支出区分がつきにくく、工事経費的な支出が一般管理費として処理されるものが少なくないことにもよるでしょうが、主として大規模業者に多い大規模工事では一般管理費支出が相対的に効率的であることにもとづいています。工事費当りの職員数は大規模の方が少ないことなどはこの事情を示すものといえます。そして完成工事高経常利益率の差が大きいために、総資本経常利益率は資本の固定化が少なくない小規模業者の方が資本回転率は高いにもかかわらず、規模が大きくなるほど高くなっています。また流動性、安全性を示す諸比率では、施工の機械化を強いられた中小業者の方が固定資産総資産比率は大規模業者より高いにもかかわらず、自己資本の調達は困難で自己資本総資本比率は低くなります。中小業者のなかには設備資金を短期資金により調達しているものも少なくありません。そのために中小零細業者の固定比率、負債比率はともに大規模業者より悪く、流動比率も中小業者の方が低くなっています。

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