アパート計画

住宅の計画的建設の最初の例を求めると、日本では大正13年に設立された同潤会によるものを挙げることができます。もっともそれ以前にも、例がなかったわけではありません。明治44年東京市によって浅草玉姫に細民救助のため67戸の一団地住宅が建設されたのは公営住宅の先駆例でした。また民間の社宅建設の例では、明治30年に設立された八幡製鉄所は、明治年間にすでに木造、レンガ造を含め1170戸の社宅をその敷地内外に建設し、また倉敷紡績がハワードの田園都市を手本に人道主義的見地から約150戸の社宅街を作ったのが明治39年でした。しかしこれらは、形熊の上では計画的住宅の主導的役割を果たしたとしても、当時の社会一般の住宅問題や住宅供給組織とは離れた存在であり、いわば閉じられた系の中における先駆例とみることが妥当です。

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間取り

大正12年9月の関東大震災は、東京、横浜を中心として70万世帯の罹災者を生みましたが、この住宅復興を目的として設立された財団法人同潤会は、応急の復興そのものよりもその後の恒久的な庶民住宅供給の機関として成長し、昭和16年までの18年間に果たした役割は、量こそ1万戸に過ぎませんでしたが、住宅計画の発展の上で高く評価されるものをもっています。はじめは応急木造住宅の建設を手がけた同潤会も、世間の一応のおちつきを見た2、3年後からは、普通住宅と同時に日本で初めての鉄筋コンクリート造アパートの建設、さらにはより社会的な問題として不良住宅地区改良事業へと手を拡げていきました。このような事業は、都市の幅広い一般大衆の住居を対象とするだけに、かつての特定個人の住宅を対象とする建築技術ではまかなえない新しい問題を数多く含んでいました。例えば居住者を個人としててなく階層として把握すること、その居住様式を設定すること、今後の都市住宅のあり方のモデルとして考えること、集団的な住宅として計画すること、等々です。これらの諸問題を抱えて、若い建築家たちが清新の気に燃えてその計画に取り組んださまは、当時の雑誌や記録を通してうかがい知ることができます。
彼らはまず外国例を熱心に研究しました。そこには先進例に学び、これに迫い着こうという意欲が見られます。しかし単なる模倣に終わらせず、日本独自の集合住宅の形式へと築いて行ったところに同潤会の計画の意義を見ることができます。
アパートというのは、日本にとっては全く新しい形式の住宅です。震災の経験をへて耐震耐火住宅を指向することは当然であったし、またこれによって都市を構成することを考えるならば、積み重ねられた共同住宅へと向かうこともまた当然の帰結であったと思われます。そして鉄筋コンクリート造、一見洋館風の建築でありながら、中身は畳敷きの和風の生活様式を容れたことは、一つの大きな特色といえます。大衆の住宅を目指す以上、生活に密着した昼は不可欠と考えられましたが、それにもかかわらず、衛生上の配慮からコルクの床の間を考案してみたり、換気についての工夫をしてみたり、意欲的な試みが多くありました。こうして日本独特のアパートの形式が定着して行ったのです。
集団的な建設による配置計画の問題も、全く新しい技術でした。しかもこの配置の技法はなかなか新鮮であり、当時の欧米における都市計画運動と新しい建築のデザインの流れをいかに鋭敏に感じとっていたかが明らかです。何棟かで広場を囲んだり、2層から4層にわたる高さの異なる棟を組み合わせたり、あるいは凹凸のある外形を作ったりして、人間的スケールによる空間の調利を生み出しています。たしかに隣棟間隔の狭さや、それにもとづく日照やプライバシーの点での欠陥など、明らかに私的はできます。後の第2次大戦後の公営住宅においては、日照時間の確保、プライバシーの確保、住戸の平等性等の計画の理念が導入されたため、たしかに一見健康的、衛生的な住宅にはなりましたが、その反面、無味単調なコンクリートの箱へと堕してしまいました。この意味から、同潤会アパートの人間臭い配置計画は再評価されます。
同潤会では、その事業の遂行と併行して各種の調査研究を行ない、これを次の計画へと役立てて行きました。居住者の生活状態、生計費等の事例調査、経営問題に関連して一般貸家の家賃や地代の調査、さらには室内気候の測定や火災実験など、種々の問題について実施されています。このような研究から計画へのプロセスは、多数人を対象とした住宅、繰り返し建てられる住宅の計画において、新しい面を開いたといえます。同潤会は18年間にアパート2500戸を含む約1万戸の各種住宅を建設し、第2次大戦中の昭和16年に住宅営団に吸収されましたが、その計画は広い層を対象とした住宅の考え方を初めて日本に定着させたものといえます。

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