住空間の型

住宅計画の考え方のうえで家族構成との対応は比較的とらえやすい問題ですが、より難しい問題として階層との対応があります。職業や収入によって住居の規模や平面形についての要求が異なるであろうことは理解されても、それがどのような差異になってあらわれるかは判然としません。また逆に住宅そのものについても、大住宅と小住宅の性格の差については明瞭ではありません。特に市浦健によって作られ、そして建築設計資料集成に載せられた住宅組織図では、大住宅も小住宅も基本的には同一の性格要素をもち、これはつきつめて行くと単室住居においても存在する褥、単、炉、流に代表される4要素であるとしています。そして大住宅では、これらの要素が機能に応じて分化し、それに従って多くの室となり、小住宅ではこれらが複合されて少数の室に重ね合わされると見るのです。このような住宅論に対してはっきりと異を唱え、大住宅と小住宅とはそもそも機能が異なり、また国民の階層によってその要求する住空間の型の異なることを主張したのは西山夘三であり、これは最近の住宅計画の考え方に大きな影響力を持ちました。

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西山の論の特徴は、今日の国民各階層の住宅を広く眺めたとき、それは一種類の住まい方における単なる水準の違いと見るべきではなく、異なった住様式、異なった住意識が併存していることを明らかにした点です。西山は、日本の小住宅がその平面構成の原理においていくつかの種類に分類されることを示すと同時に、そのおのおのがそれぞれ異なる住み方のタイプ、住様式に対応するものであることを明らかにし、さらにそれらが住まいに関する意識と対応し、また居住者階層とも対応関係をもつことを主張しました。つまり、住意識、住空間の型、住様式、階層の4者の対応関係についてのモデルを組み立てて示したのです。住空間の型としては、ねどこ型、食寝型、労働型、公私室型、作業型、接客型、格式型の7種に分類しました。ねどこ型は最低限の単室住居で、これはただ帰って寝るだけの食寝休養型の生活に対応します。住空間の最初の秩序化は食寝分離であり、食事の室だけは独立させるという食寝型の空間構成となります。これらは主に筋肉労働者層に対応します。これに対し戦後の小住宅、特に最近のそれでは、家族を中心としたたのしみ意識が強まり、住空間の型も家族の集まる部屋と個人の私室とに分化する公私室型への傾向が強まっています。これのさらに徹底したものとして、台所などを家の中心に押し出し、家事作業をもたのしみの対象とするような労働型ともいうべき型があります。これらは主としてホワイトカラー層とくにその若い層に対応します。一方で昔ながらの接客を重視し、客間を家中の一番良いへやとしてもつ接客型があります。按客型に近いが職業上の必要から家内作業場として応接室をもつ作業型という型もあります。さらに古い型として封建的な身分意識に支えられ格式的な接客構えをもつ格式型ともいうべき存在があります。これは次第に死滅しつつあるとはいうものの、なお現代に生き続け、併存していると見られます。
この論は、実証的な研究というよりも、日本の住様式、住空間を概観したうえでの大胆な仮説といえます。そしてこの論の最大の功績は、住宅を一本の筋の上にのったものとしてとらえずに、多くの型が共存し、しかもそれが居住者の階層や人間の意識とかかわりあいつつ次第に変化発展して行くことを描いた点にあります。その意味では、住意識として、ねぐら、しきたり、みせびらかし、たのしみ、をあげ,次第にたのしみ意識が拡大して行く中で住宅平面型が変化して行くというとらえ方は、きわめてユニークであり説得力があります。住宅の計画は、これからの生活の姿を描くものである以上、このような住様式発展の考え方は極めて重要であり、新しい型の住宅に一つのよりどころを与えたと同時に特に公共住宅の計画に大きな影響力をもったのです。

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