格式としきたりの住居観

日本の住宅では、立派な門構えや玄関、床の間のそなわった広い座敷を構え、住居の格式を上げ形式をととのえることが好まれました。戦後この傾向はかなり衰えましたが、それでも形を変えてところどころに現われています。それは日本人の生活や意識のなかに、なお格式やしきたりを尊重するものが残っているからです。例えば戦後さかんにつくられるようになったりリビングルームの様子にもそれが現われています。リビングルームは、家族の生活が主体となるいわば洋風の居間、茶の間ですが、昔のそれのように家族の親しみのある部屋とはならないで、ここに一揃の応接セットを配備して、とり澄ました応接間と化している例をよくみかけます。そもそも椅子を入れるとなれば、統一されととのったセットを多少無理をしても揃えようとすることが、一種のあらたまった意識の表現であり、あらたまって上等なものをおけば、家族は使いにくくなり客向きに温存しようという気持が生じます。これも格式を尊ぶ気持のあらわれです。このような居住面の生活意識、つまり住意識は、階級の発生と同時に世界各地に古くから見られるものですが、日本の場合、現代の生活に直接結びつくものとして、前時代の武家社会の伝統があることを知るべきです。

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間取り

武家の社会は、将軍を頂点として大名、家臣、その家来、足軽に至るまでそれぞれ上下の身分関係でつらぬかれていました。また他の人民に対しても士農工商の身分階層を明確にし、封建的支配の確立維持のためには、この身分秩序を厳守し続けることが求められました。そのために所領、俸禄から衣、食、住、起居動作、教養にいたるまで生活のすみずみに、この秩序立ては浸透され、そこに格 式、しきたり尊重の生活意識が形成されていったといえます。
武士の住宅は主君から賜わる身分、格式を象徴する建物です。したがって屋敷、門構え、家屋の規摸、結構すべて分に応じて造られました。華美に過ぎれば分不相応になるが、貧弱でも主君の体面をさげることになります。
住宅平面は表と称する生活圏と奥と称する生活圏に截然と区別されるようになっていましたが、その表が格式の体面を表現する主要な部分になります。表には、床、棚、書院で飾られた最も立派で大きな部屋があてられ、部屋の周囲に縁をめぐらし、さらにその外に恰好な庭園を望むように配慮されていました。そこは当家の主人の居室であり、主人は来客、役向き等公的生活に対応する表を通じて主君に仕えることになります。したがって来客は、門、表玄関を通って直接この部屋に招じられ、家族達の生活圏である奥をかいま見ることもありません。表を立てることは、主君と自分との体面を維持することであり、俸禄のみに生活を依拠し経済的に富裕でなかった武士は、家族本来の住居である奥の生活を節倹することにより表の体面を守ろうとしました。この生活態度は、時代相を異にするとはいえ、現代ホワイトカラー層の生活方式にも一脈通じるところがあるではないでしょうか。武士のこのような生活態度は、封建制300年の間に、住居とはかくあるものという住居観を定着させ、格式と形式のしきたりを尊重する住意識をはぐくむことになりました。百姓以下の身分においても同様ですが、下の階級ほど格式をいうよりは、分相応、世間に違わないしきたり遵法の意識が、つよく沈潜していったといえます。そしてそれらの住居観が、居住空間の構成を規定する原理となり、独自の平面様式をつくりあげました。

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