職住分離

格式や接客本位の住居観に対し、家族、家庭あるいは子供本位を強調し、住宅機能のあり方を住み手自身の生活に適合させようとする考え方が明治後期から大正時代にかけておこってきました。その主張の主な発言者、共感者は、都市の知識人、月給取りその他の中産階級でした。この時期には、社会的基盤の発展を伴わない欧化思潮がいちおう後退する一方で、日清、日露両戦役を通じて実力と自信を強めるにいたった日本の資本主義体制の中で、欧化に対する国粋的批判が勃興してきます。住生活への主張としては、木に竹を継ぐような折衷ではなく、和洋の長所を醇化した真の折衷様式の確立などが、種々の住宅、建築誌上で説かれるようになりました。その具体的内容として、家族、家庭本位の主張が目立ってくるとともに、椅子式生活導入による起居様式の合理化、台所の衛生的、能率的改善等、住生活近代化の主張が随所に見られ、大正期にはこれらの主張を目標にかかげた生活改善同盟結成などの動きも見られます。住まいを家族のもの、自分のものとして見る、このような住居観の変化あるいは拾頭が何故生じてきたか。本質的には仕事場と住居の分離、労働観念と休養との対立分離に根ざしています。

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間取り

明治以前の都市、農村の住民、職人、町人、農民の住まいは、すべて仕事場と住居とを兼ねていました。武士の場合は役宅といえます。また農民、職人の場合、労働は苛酷でしたが生産の目的と家業とは一致したものでした。明治以後の近代資本主義化の歩みは、この職住関係を急速に変化させていきました。日清、日露両戦争、第1次大戦は、その飛躍的発展の各段階ですが、これらを通じて都市には工場労働者、サラリーマン人口が急増し、明治以前に存在しなかった新しい社会階層が、都市の主要な住民となってきました。彼らは前時代の生活意識を身につけながらも、その生活構造は前時代と本質的に異なるものをもっています。自宅に職場はなく工場、会社に出かけていきます。自営の家職ではなく他人つまり資本の経営です。自立の生業ではなく、労働力、技術を売ることにより生計費を稼ぐことになります。
このような空間的、経営的、観念的な仕事と住居との分維は、生計のために余儀なくする労働に対して、家だけが本来の自分の生活という意識の分解を生じます。したがってそこに、外での労働に対して、住宅はそれを癒す憩いの場であるという観念がつよく招来されてきます。またそれにもとづいて家族の生活を優位におく住様式、住居形式が展開されることになります。その特徴をあげると、客座敷の比重が軽くなる。寝所との兼用を考えた間取りになる。居間の比重が重くなり、南面した有利な位置に計画される。子供部屋などの呼称が平面上にあらわれるなどです。これらの点を表現する具体的な住宅形式として中廊下型の住宅があります。都市中産階級に広く愛好されてきたこの平面は、宅地利用の合理性、ガラスの普及による廻り縁の合理的解消等外部的形成要因にもよりますが、内部的には中廊下による各室の独立性、各居室と付帯設備間それぞれの独立した連絡等の利点、家族の生活上の都合に応じた室の転用性、融通性に富む点が、家族本位の住居思潮に適合していたといえます。この平面形式は大正デモクラシー思潮を背景に出現して、やがて昭和にいたり戦前の都市サラリーマン階級の間に広く普及していきました。

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