持家主義

持家がよいか借家が便利かは、昔からいわれてきた議論です。しかし本来、人間は住まなければならないから家を造るだけで,持家も借家もありません。動物がその巣を自分の居場所として本能的に感得していても、自分の所有だとは思わぬであろうと同様です。所有の観念は、階級社会の成立発展とともにおこり、強くなります。そして住宅は社会的地位、身分の指標となり、規摸の大小、恰好の立派さがそれを表現するものとされます。古い住居観では、住宅は自分の持ち物である以外に考えようがありません。独立した自分の住居を持たない者は、本家に同居したり、本家の所有になる家に住まわせてもらったり、一族外の従属者、使用人なら住居内の片隅、屋敷内の長屋部屋等に居所をあてがわれるという状態で、貸借関係というよりは給与、従属関係にあったといえます。したがって独立した住居を持つということは、家として独立することでもありました。

スポンサード リンク
間取り

名主に隷属していた百姓も、その屋敷外に居を構えて家持ち百姓となれば、持家主です。また家系、家を中心とする家族制度のなかで住居は、家と切っても切れない関係になります。家の独立性、社会的地位は家格となり、家格は住居で表現されます。今日でも家柄を重んじる農村地域では、縁組みのききあわせに、屋敷、住宅の程度が大いに問題にされます。家中心の観念下で、住宅は一代限りのものでなく、代々譲りつたえられる格式を定める財産として意識され、住宅を造ることは一世一代の大仕事として、できるだけ立派なものを備えようとします。これらの事柄は一戸の独立した世帯にとって、その住居は何の疑いもなく自分の持ち物でなければならないことを観念づけます。このような持家主義を第一義的所有観念と考えることができます。戦前の住宅所有観にはこの種のものが強くありました。しかし持家主義も、社会制度、住宅生産、需給関係等の歴史的な発展により、特に都市では種々の住宅事情の複雑化により多様化することとなります。戦後大都市圏居住者対象に行なわれた調査によると、持家指向理由からその傾向がわかります。つまり、先の所有第一義型、家賃がいらない、財産が残るなどの経済主義型、追いだされない、安心感があるなどの生活安定型、生活にあわせて便利にできる、住生活が楽しめるなどの住生活型など、種々のタイプが見いだされますが、所有第一義型は20%程度にとどまり、最も多い傾向は生活安定型約60%でした。また経済主義型も15%ほどでした。
このことは、戦後の都市における持家率が戦前に比較して異常に高いこと、また意識面においても先述のごとく持家指向が高いことなどが、決して持家に第一義的所有の意義を認めているのではないことがわかります。持家率が高いという客観的事実は、戦後の住宅復興が、住宅政策に期待しえず、自力再建による以外に頼れるものがなかったという事実を物語っており、安心型持家主義の比率の高さは、住生活面での不安感、例えば立退き問題、退職後の生活不安などのつよさを反映するものといえます。したがって持家主義は、現在の住宅問題、社会不安の反映であり、それをつくりだしている基盤が改善されるにしたがって、変化していくものといえます。考えてみれば、借家も持家も生きている間だけの生活空間が、満足できる状態で保障されれば、家族、個人にとって全く変わりのない事柄です。また持家主義にしたところで、戦前にいわれた家族の成長周期に応じて家をつくりかえていくという住宅理想はおろか、一世一代の仕事としても、大部分の勤労国民には不可能に近い現実となっています。
もっとも、持家政策にしたがって公庫、公団、住宅供給公社等による長期資金貸付けの持家供給制度が設けられ、民間の住宅供給企業でも、比較的長期のローンによる持家供給、分譲住宅の建設が行なわれています。これらは、持家を手に入れ難い階層にも、住宅購入の道を開いているともいえますが、この可能性を実現しうる人たちはやはり国民の一部であり、広範な勤労者層に対応する対策ではありえません。

間取り
住宅計画/ 住宅の普遍性と進化/ 洋風住宅の導入と日本化/ アパート計画/ 不良住宅区改良事業/ 住宅計画方法論/ 住宅建設での公共住宅/ 住宅調査と標準設計/ 家族型対応住宅/ 住空間の型/ 住様式変化/ 住宅地環境の拡大/ 市街地再開発における住宅計画/ 住居観と計画/ 住宅政策と住居観/ 格式としきたりの住居観/ 接客尊重意識/ 職住分離/ 持家主義/ やどかり意識/ 標準・規格化/ プライバシーと個室化/ 核家族と老後問題/ 住様式の地方性/ 生活行動の様式/ 履物と床の様式/ 衣生活様式/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー