生活行動の様式

住宅がうまく住みこなされるためには、まずその間取りや設備、建物構造などが、住み手の生活の仕方に適合していることが必要です。したがって計画を合理的に立てるには、動的に発展していく生活を知る必要があります。住意識、住様式その他の生活様式が、住宅計画前の問題として、しかもこれと深い関係をもつものとして、考えられる理由はここにあります。しかし、そのようにして計画された住宅においても、なお、それを住みこなすには、生活行為のあり方や人の動きの方を合わせていかなければならない面があります。つまり住生活における行動の様式がそれです。最も単純な事柄をあげれば、身のこなし方があります。しかし身ごなしは、複雑な住生活の各面、住様式、生活用具等と結ぴついて展開されるため、様々な行動の様式面をもっています。そのようなものが時代社会の生活内容と結びついて様式として定型づけられたものの一つが礼法でもあすます。また居住のしきたり、慣習でもあります。それを身につけておれば、生活は秩序にのってしやすくなるわけです。したがって行動様式は、一つの生活様式ですが、すぐれて文化的現象です。このような住面の行動様式は、計画以後の居住に関する問題であり、家政学、住居学本来の問題ですが、生活様式として定型づけられたのちは、また計画にはねかえっていくものです。

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住生活における行動の様式化を、それを特色のある生活側面で具体的に考えてみると以下のような面があります。住宅の維持管理、保守などの面での行動規制、つまり汚れず損われず長持ちするよう大事に扱う行為の慣習化です。敷居や畳の縁を踏まないで歩く、ふすまや戸の開閉には、よく見定めて引手金具に指を掛けてあける等、いずれも破損しやすい部分、取替えの面倒な部材、手垢のつきやすい個所を、行動の制御によって保守しようとする法です。住環境の衛生的側面の維持、例えば畳生活では昔から埃をたてないため静かに歩くこと、日本の木造家屋の構造条件下では、階下の生活を、ゴミ、音響から保全するため、2階ではとくに静かにふるまうことが要求されました。この他入浴の手順など考えると、湯の汚れをできるだけ少なくする配憲がしつけられた慣習のなかには存在していたことに気づきます。衛生面の規制は、入浴例のように各種の局部的生活行為それぞれにあり、またさらに住居の清掃、維持管理の方法、慣例までふくめて広く考えるとはなはだ広範囲になります。それらの多くは、その時代相なりの合理性をもっていますが、日本では衛生観に似て非なる不浄観があります。これは必ずしも合理性にもとづかない主観的立場をとりますが、それによる行動の様式も多くあります。それをどう評価するべきかは現代の問題です。
住生活を円滑に進行させるための行動様式、秩序化、機能化、合理化等多少ニュアンスの異なる方向がありますが、例えば接客の坐位の決め方や、食卓の坐順等はそれです。昔からよく引例される炉辺のヨコザ、キャクザ、カカザ、キジリ等の厳しい坐位規制は、その典型的なものです。この中には格式的秩序観と合理性とが入り混っています。このような坐位も時代相により変貌していくもので、主人のヨコザも、テレビの出現によりそれを見易い仕置へ崩れてきた例があります。
倫理的あるいは生活の区切りのための秩序として要求される面、例えば起床、就寝の挨拶、接客の挨拶等があります。
また、行動そのものの美しさを目的として求められる面もあります。行儀、作法の形式にはその要素が多分にあります。このようなものは形式的性格がつよいため、時代の生活内容、生活観の変化によって意義の詳価も変わりやすい。例えば戦前正式の坐法としてしつけられた膝を折り曲げて坐る正坐法は,戦後起居様式の発展、正坐の生理的不合理性、封建時代を背景とする格式的性格のゆえに、現代の坐様式としての強制力を失ったといえます。
以上にあげた各種の生活側面は、さらに細分できるかもしれませんが、分類はともかくとして、各面における行動の様式は、それぞれの時代的な意味をもってつくられてきたのです。戦後、生活全体にわたって著しい変化がもたらされ、旧い秩序は崩壊したようにみえますが、しかし、実際には非合理的な古いものが残存する一方で古いながらも継承、発展せしめるべき合理的なものが消え去るという面もあります。それらを再検討して、新しい生活に即応した行動の様式をつくりだしていくことが必要です。その方向づけの軸となるものは、皮相的な近代化ではなく、生活にとってのより深い洞察にもとづく合理性です。

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