履物と床の様式

日本独特といってもよい住様式の一つに、上下足の区別があります。この区別は、古代の高床式住居あるいは平地住居における土間と床の生活空間の分化により床面を直接起居の場とする床坐様式と結びついて、きわめて自然に形成されたものと考えると、起居様式の一端でもあります。また、床坐の清潔さを維持するための行為の規制が、様式化されたものである点で、住生活の行動様式ともいえます。床を踏むのに靴腹きのままか、履きかえるか、素足か、この行為にかぎっていえば、履床様式ともいえます。日本独特の履床様式が、起居様式の変貌つまり椅子式生活の普遍、さらにそれが寝床のベッド化にまで及んで、靴ばき生活に変わるか、変えるべきか、いまの様式を肯定するか、住生活のあり方として一応考えておくべき問題です。この様式は、今のところ変わらず、また容易に変えられません。なぜなら住生活のあらゆる面で内と外との区別がついているからです。履物や衣生活はもちろん、室内の装備、家具、住宅構造自体が靴ばきのままに適していない繊細さがあります。また行動様式にも、生活意識にも、内外を区別する仕方が身についています。それらをにわかに変えることは容易ではありません。たとえ容易でなくとも、改革することが合理的であれば、踏み切る決断が必要です。しかし、現行の履床様式は案外合理的な面をもっています。また、種々の点で日本の風土や生活事情に適している面が考えられます。

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間取り

合理性の点では、第一に家屋の維持管理の容易さがあげられます。土足で住まいの中を歩きまわるアメリカの主婦は、細かい土砂のしみこんだ絨椴類のクリーニングを、頻繁にやらなければならず、その家事労働は相当なものらしい。アメリカは自動車を脚にしている生活で靴の裏がきれいという説もありますが、泥足の始末に往生することもよくあることらしい。入口の近くに履き替え部屋を設ける家もあり、それが生活改善の一点にもあげられています。また日本の玄関システムを羨む主婦もあるようです。欧米の家庭生活では、書架から本を取り出したり、台所に立ち向かうのに、男は大段にスタスタ歩き、主婦はハイヒールで闊歩しています。大邸宅ならいざしらず、日本の普通の家庭で同じ行動様式をとれば、たちどころに壁に鼻をうちつけ、すねを家具にぶつけます。居住面積が広いことも悪くありませんが、日本の国土の生活条件、さらに都市生活の高密度化を考える時、それに合理的な居住面積、それに適合した行動様式なり生活様式が、独特に創られなければなりません。家具の隙間を縫い、低い机をまたぐような現行の狭小住宅は、ほめたものではありませんが、それにしても素足だから何とかやっていけるのです。また、欧米と異なる湿潤な気候条件を考えるとき、脱靴の要求は生理的なものです。下駄、草履から靴が主体の覆物になった今日では下駄にかわる日本特有のサンダルが発明されていることはその証明でもあります。

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