一般貸家の経営

一戸建や長屋建の貸家を所有する一般貸家経営は、古くから存在していました。資本主義の初期においては、労働者長屋の経営という形で、農業地主の農地経営に代わるものとして、あるいは商的、工的個人経営者の信用保持、生活保障のためのものとして、高利貸的、寄生的経営が成立していました。これらの経営は、不況期における、小規模経営の崩壊による大規模経営への集中と、好況期における小規模経営の乱立をくりかえしながら発展してきました。その結果戦前においては、経営規模のうえで小中大の3段階にわかれ、その性格のうえで経営の非採算性、採算性、確実な採算性と自己運動としての拡大活動の必然性といった特性をもつ、高利貸的、寄生的、投機的経営として存在しました。

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戦後小規模経営の一部は、戦災による所有貸家の喪失と、家主階級の没落によって消滅し、中、大規模経営も、経営を無視した家賃統制のため貸家経済を破壊され、その経営規模の縮小と経営自体の行き詰まりに見舞われました。その結果、既存経営が新たに貸家供給を行なうことが不可能になったばかりか、新しい経営の創設も困難となりました。戦後3年間に建設された住戸のうち、借家ないしは借家に近いとみなされるものは、わずか25%程度にすぎず、戦前市部で70%から80%を占めた借家は、この時期に約40%に減少しました。その結果、借家人階層の多くは住まいにあぶれ、一家族が一戸の借家を借りるという形式に代わって、同居、間借りによる相住まいに走りました。そして、相住まいを可能にするものとして、既存建物の改造、転用による貸間、あるいはそれに近い形の貸家供給が行なわれました。一部では、一戸建貸家を供給する新しい経営もあらわれました。しかし、特定人を入居させることを決定したうえで供給するものや、偶然的な建物取得から出発するものなどが多く、採算性を考慮することはほとんど行なわれませんでした。つまり、生活保障的、家計補助的経営を行なうことすら困難な条件の下で成立した、きわめて特殊な経営でした。他方で高利潤に対する投機的利益をねらって、店舗併用貸家の建設を行なう経営が一時期あらわれました。
その後、さきにみたような特殊な経営は急激に影をひそめ、アパート経営が一応成立するようになると、アパート経営が不可能なほど敷地が狭いか、あるいはそれほど資金が少ないにもかかわらず、なおかつ貸家経営を行なう場合にのみ、それは一戸建、長屋建によることとなりました。そしてアパート経営にくらべて、さほど大きな資金量を必要としないという点で、きわめて広い範囲のサラリーマン、自営業主層からこの種の経営を創設する家主があらわれました。しかし、あらかじめ敷地の使用権を確保していることや、建築費節滅の便宜を備えていることなどを、経営成立の前提条件としていたという点で、採算性はきわめて乏しいものでした。そのため経営の性格は、ますます生活保障的、家計補助的なものとなりました。家賃ひとつとってみても、貸家経営の必然性にもとづいて合理的に決定されるというよりは、むしろ家主家計の必要から恣意的に決定され、その収入のすべてを経営外に持ち出すのです。また、建物の質も、直接経営の採算性に左右されることなく、木造アパートに比べて質の低いものがあるかと思えば、逆にそれ以上高いものもあらわれました。そして、多少でも経営の採算性をもとめるものは、より大規模な木造アパート経営に向かうか、資金回転率の高い建売住宅経営に向かうのです。
木造アパートが市場で支配的な地位を占めるようになると、これまでのような粗悪な一戸建、長屋建貸家では、土地の集約的利用、建築費の低減が困難であるという点で、生活保障的、家計補助的な経営においてすらとりあげにくくなるのです。一方で建築費の安い小住戸を集積することによって成立するアパート経営と異なる方向で、土地の集約的利用をはかろうとすると、建物内容をデラックス化することにより、土地の単位面積当り投資額を高め、これに見合う家賃収入を得て経営として一定の採算性を確保する方向に向かわざるをえなくなります。このようにして生まれた高級貸家は、ある程度設備の整った二室以上の長屋式アパートより質の高いものであり、室数も三室以上で、ときには駐車場、門、塀、庭なども付設するものでした。都心部にある経営では、比較的豊富な資金をもちながらも、利用可能な敷地がアパート建設にその風格、規模のうえで通さないため、特に一戸建高級貸家を指向する傾向が強くありました。このような一戸建の高級貸家をもとめる高収入者が一定量存在し、地価の上昇に伴う家賃の値上げに応じうるかぎり、かなりの額の安定した家賃収入が得られるという意味で、土地所有者の副業として、自宅の庭先にこのような貸家を建てることが行なわれました。しかし、このような住戸形式では、土地の集約的利用には限度があり、はじめのころ都心に立地しえたこれらの経営も、地価の上昇とともに郊外に向かわざるをえなくなり、やがては都心をはずれた市街地に、やや質の劣る貸家を建て、そこて新しい経営が創設されるようになりました。ここでの経営は、土地所有者の副業的性格が強いのですが、地価が比較的安く、かなりの面積の敷地が得られることから、不動産取引業者、建設業者などで一定量の資金を準備し、高級貸家の経営を専門とするものがあらわれ、次々と拡大をつづける場合もみられます。そして、この種の経営のうちのあるものは、専門の住宅経営企業としてテッキンコンクリートマンションの経営にも進出するのです。

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