農家の土地ブローカー化

通勤限界地に都心通勤者が持家を建てるための土地需要が発生するという前提を置いて、地価の上昇に対応して農家がこれまで達しえないでいた消費的欲求を充足しようとすると、その結果として必然的に農家による近隣限界外地に対する土地需要が発生して、限界外地までの地価上昇をきたす必然性があるということです。このように農家相互の土地売買によって限界外地までも含む地価の上昇傾向が一般化し、時の経過とともにこの傾向が激化すると、当然次には土地需要は経営規模の維持といった堅実なものではなく、投機的需要に転化せざるをえません。原則的には、通勤限界地を買う者は持家を建てる都心通勤者であり、限界地を売る者は表面はなお農家として農業を経営しているのですが、内実は土地ブローカー化して限界外地を買うために売るのです。限界外地を売る者は当面は自己の消費的欲望を充足するためですが、次の段階では、その限界外地が限界地化して、その農家もまた土地ブローカー化し、次に限界地に転化しそうな外側の限界外地を買います。こうして、限界地の外側への移動に伴って、限界地周辺のすべての農家は一時は土地ブローカーに転化します。農家が自己本来の所有地について値上がりを待つことも土地ブローカー化といえますが、さらにこのような積極的な形態をとるようになるのです。

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もう一つの要因として、農家の土地所有の分散性をあげなければなりません。農家の平均所有耕地面積は1ヘクタール未満というような零細なものにすぎませんが、それも一般に1ケ所に所有しているのではなく、住居から半径1キロメートル程度の範囲内で数力所、多い場合には十数力所に分散して細切れのように所有しています。したがって、なお限界地外に住居がある農家でも、限界地が近寄ってくると、限界地のなかに地片を持つようになります。限界地とその近隣では、全て農家が一方では限界地内に相対的に高価な土地を、限界地の外では相対的に安価な土地を持ち、全ての農家が売買行為に巻込まれてゆくのです。
いうまでもなく、このような投機行為を可能にする経済的要件は、限界地の地価上昇率より、それに近接する外側地の上昇率が高いことです。両方の上昇率が等しい場合には投機は成立しません。ある土地が限界地になって後の地価上昇は、新たな限界地が外側に移動するに伴って、新限界地との相対的地理的優位にょって高まるだけです。
急激な都市化の条件下では、零細所有の特性として農家は一時的に土地ブローカーに転化する必然性を持つのですが、その投機対象としての土地は、当然のこととして、純粋の意味の不動産業者の設機の対象にもならざるをえません。売る方の農家にとっては、相手が誰であろうと高い方に売るのです。
地価の異常な上昇の原因を不動産業者の土地投機によるものと思っている人が多のですが、限界地の外側への急激な拡大という条件下では、農家自身が土地ブローカー化する必然性があるわけで、これを不動産業者の土地投機と区別することはできません。表面は農業を継続していても内実は不動産業者のやっていることと変ることのない土地投機です。このような農家の傾向に不動産業者も加わって、土地需要が増大しているというだけのことです。供給が限定されているのに需要は増大するために、地価の上昇が加速されることはいうまでもありませんが、地価上昇の機構は同じく、限界地が移動するという条件の下で限界地内を売って限界外地を買うという行為の繰返しです。不動産業者が限界外地を安く買うことができるのは、限界外地に消費的欲望を充足させるために安いうちに土地を売ってもよいとする農家があることを意味すると同時に、不動産業者が、その買った土地が限界地化した場合に、高く売って高利潤を獲得できるのは、同じ限界地を売る農家が狭く限定されていることと、限界外地を売る農家も狭く限定されていて、不動産業者が買う規模が限定されるためと見る外はありません。
限界地を売ってもよいとする農家あるいは不動産業者が無限にあるとすれば、限界地の地価は上昇しえません。限界地の地価がきわめて高いということは、農家に供給を制限しようとする要因が作用しているばかりでなく、不動産業者にも供給を増大させないような要因が作用していることを意味しています。このことは、不動産業者が限界地がなお限界地になっていなかった時に買った土地の量が限定されていたものと考えざるをえません。この限定が生じるのは、限界外地を売る農家の売ってもよいとする量が限定されるからであり、この限定を決定する理由は、農家が安いうちに土地を売ってまで満たさなければならない欲望に限界があるためです。もし、このような限定が存在しないならば、不動産業者は無限に買って、無限に売ることができるわけで、そうした場合には買う地価と売る地価は次第に接近せざるをえないので、売買によって高い投機的利潤を獲得することはできないわけです。買う方が限定されているがゆえに売る方も限定され、それゆえに、高い利潤が保証されます。このように不動産業者の売買行為の基礎には、農家の売りに限定があるという、農家同士の売買の基礎にあると同じ要因が作用しているのであって、不動産業者単独の売買行為によってのみ地価の激しい上昇が生じるのではないのです。
不動産業者が農家と異なる点は、商才にたけた者が多いということや、狡獪な者が少なくないということ、あるいは大手不動産業者は資力の点で有利に立ちまわれるというような程度の差であって、本質の問題ではありません。もともと土地を所有していなかったはずの不動産業者が土地の売買によって膨大な中間利得を得ているために、見る人が現象にまどわされるのです。私鉄資本に属する不動産業者が、普通には簡単に通勤限界地化しそうもない土地に大規模な土地造成をやったり、交通路線を新設したりなどして、資本の力で新たに限界地域を造成するようなことがあります。このような場合には、その造成地に属する土地は広い地域にわたるため、農家が売りたくない土地までも買わなければならないので、売る方の農家の消費的欲望の範囲を越えて土地の売買が行なわれます。そのために、きわめて激しい地価上昇が生じることがあります。そして、その地域が限界地化することによって、その周辺の土地も、新設交通機関や商業地の形成などに対応して、限界地化することになります。あるいは、不動産業者に土地を売った農家が周辺に新たに土地を求めることによっても、周辺の地価までも上昇する可能性があります。このような現象は、単に農家が限界外地に土地を求めることによって生じる地価上昇とは区別すべき一つの特性といえますが、このような現象はその造成地の周辺あるいは、関連する交通機関の沿線に限定されるわけで、大都市をとりまく全近郊の急激な地価上昇の唯一の原因とすることはできません。全般的地価上昇は、関係農家全体の地価の上昇を待つという広い意味の土地ブローカー化によってのみ説明されます。

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