指導要綱行政の由来

昭和三○年代の終り頃より昭和四○年代にかけて、経済の高度成長に伴い、大都会への著しい人口集中、高層ビルの建設による日照権紛争、大都市周辺における宅地の乱開発、レジャー施設の建設を目的とする大規模な環境破壊、等々の弊害が顕著にみられるようになりましたが、このような事態に対処するため、国および地方公共団体は、私人による土地の開発行為、取引行為に介入し、チェックするための様々の手法を考案し、実施するようになりました。いわゆる宅地開発指導要綱に代表される各種の指導要綱、そしてこれを活用したいわゆる指導要綱行政は、このような手法の一つとして、全国の地方公共団体が昭和四○年代に入って盛んに行なうようになった、行政作用の形態の一つです。指導要綱の登場自体はより古い歴史を持っていますが、このような意味をもつものとしては、兵庫県川西市の住宅地造成事業に関する指導要綱が、その嚆矢であるといわれています。介入の目的としては、都市周辺の乱開発を防ぐための、宅地開発事業の抑制、自然環境保全を目的とするための、ゴルフ場造成事業等大規模事業のコントロール、都市内部での日照被害等を防止するための、マンション等建設事業への介入、など様々であり、また、介入の対象たる行為も、土地の取引行為である場合もあり、開発行為や建築行為である場合もあり、これらのいくつかがともに介入の対象とされている場合もあるなど多種多様ですが、いずれにあっても共通するのは、土地所有権等の自由な行使に対し、法律、条例等、国民の権利し利益に直接法的効果を及ぼす、法規による規制でなく、理論的には国民に対して直接の法的効果をもたない指導要綱という手段によりつつも事実上は法規によるのとほとんど同様の強制力をもって介入することが意図され、実際にそのような結果となっています。

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介入の形態としては、通常は一定規模以上の開発、建設事業について、法令にもとづく開発許可、建築確認等の申請を行なう前に、地方公共団体と事前協議することを求め、この協議の過程で、これらの事業を行なうにあたって業者が一定の負担を負うことを約定し、現実の事業過程でこれらの事項に違反した場合には、例えば違反者名の公表が行なわれたり、様々の形で行政側の非協力が行なわれる等、なんらかの形で、事業者の不利益となるような制裁措置が取られるというケースが多く、このような指導要綱は法規範ではないため、私人としてはこれに従う法的な義務はなく、例えば要綱違反の事実があったからといって処罰をうけるようなことはありませんが、このような事実上の制裁措置が実際上私人の権利、利益に著しい不利益を与えるものであることはいうまでもありません。
このように私人の利益に著しい影響を及ぼすものであるような介入は、本来ならば法律または条例にもとづいて行なわれるべきはずのものですが、事態がそのように展開せず、このような指導要綱行政の隆盛をみるようになったについては、様々の原因が考えられます。例えば条例による規制には、様々の制約が伴います。そもそも条例は、議会による議決を必要とするため、地方公共団体の施策に機動性を欠く、ということもさることながら、条例による財産権規制については、憲法および国の法律との関係上、法解釈上様々の問題があります。まず憲法二九条二項には財産権の内容は法律でこれを定めるとあり、また、地方自治法二条三項では、地方公共団体の処理すべき事務について法律の定める ところにより、建築物の構造、設備、敷地及び周密度等に関し制限を設けること、法律の定めるところにより動産及び不動産を使用又は収用すること、という条項があるので、これらの規定をみると、少なくともこのような効果をもたらすような財産権規制は法律の授権なしに条例かぎりではできないのではないかという問題が生じます。また、一般に条例は、既存の国の法令に違反してはならないのであるため、国の法令がなんらかの定めをしている場合に、地方公共団体が条例で、地域の特殊事情にもとづきそれよりさらに新しい規制を住民の自由と財産に対して行なうことも、許されないのではないかという問題が存在します。これらの法律問題については、解釈論的にその関門を通過することは、必ずしも不可能ではありませんが、指導要綱による介入の場合には、理論的には、私人の権利、利益になんら直接の法的効果を及ぽさないために、このような問題自体が生じなくなることに注目する必要があります。他方、先にみたような土地問題の進展は、行政の責任者たる地方公共団体においても無視することができないほど深刻な事態にたち至っているとすれば、条例による規制の場合に存するこのような障害を回避しつつ、それにかわる有効な手段が、実務経駄のなかから模索されるようになるのは当然です。また、このような指導要綱行政が、法的にはなんらの強制力をもたないにしても、現実には相当に有効な行政手段として機能した、という事実もしばしば指摘されています。

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指導要綱行政の由来/ 要綱行政の長所短所/ 土地にかかわる災害防止法制/ 白地地域における開発規制/ 土地取引の規制/ 宅地開発と環境破壊/ 地盤沈下や土壌汚染の防止/ 開発協定にもとづく開発負担金/ 公共事業に伴う事業損失/ 収用委員会の補償金額への不服/ 区画整理事業計画への取消訴訟/ 公有水面埋立てによる不利益/ 宅地造成等規制法による規制/

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