宅地開発と環境破壊

大規模な宅地開発は通常、山林や農地、原野等を開発して造成されます。広範な樹木の伐採、表土の掘削などによる宅地造成は、調和のとれた自然の徴妙な生態系を崩し、湛水能力の滅少による河川の氾濫、洪水等をもたらします。他方、団地への道路の設置によって、車の排ガス、騒音、振動等が沿道付近の住民の環境破壊をひき起こすこともあります。そこで、大規模にかぎらず相当規模の宅地開発においても、事前に環境破壊を防止するため、環境アセスメント(環境影響評価)を行なう必要があります。

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アメリカでは一九六九年国家環境政策法(NEPA)が制定され、環境に重要な影響を及ぽす連邦政府の行為について環境アセスメントが義務づけられ、数多く実施されてきました。日本では、高度経済成長政策にもとづく国土開発の結果各地に深刻な公害が発生したため、政府は一九七二年六月、各種公共事業に係る環境保全対策についてという閣議了解を行ない、代替案の検討を含む環境アセスメントの実施を指導することを決めました。同年七月、四日市公害ぜんそく判決は、企業の立地についての事前評価の過失を認めました。そこで同年一二月中央公害対策審議会は、工業基地等に対する公害の未然防止方策についての中間報告を行ない、環境庁は、当面行政運用によって環境アセスメントの実施の指導をしながらアセスメント法の立法化を考え、一九七六年、七七年と同法案の国会への提案を図りましたが、いずれも財界、他省の反対で断念しました。一方自治体では、川崎市が環境影響評価条例を制定し、他の府県でも要綱を作成したり、条例案を検討したりしていました。したがって、大規模宅地開発が都道府県や市町村、公団、公社、土地区画整理組合等によって行なわれる場合は、公共事業として、前記閣議了解にもとづき環境アセスメントがなされるぺきであり、川崎市においては条例により環境アセスメントが要求されることになりました。民間ディベロッパー等による開発の場合は、開発許可や農地の転用許可などの各種の許認可を通じて環境アセスメントの指導がなされるべきです。
開発に対する環境アセスメントの考え方には大別して次の二つがあります。
具体的に特定された開発計画を前提として、それが実施された場合の公害や環境破壊の発生の有無を調査し、予測するもの。これはむしろ公害事前調査ともいうべきもので、工場立地法の産業公害事前調査や瀬戸内海環境保全臨時措置法における特定施設の設置の際の事前評価、公有水面埋立法にもとづく環境影響評価など日本で実施され、環境アセスメントといっているものはこれに属します。
構想段階から始まる各段階毎に、計画を実施しない案も含む各種の代替案について、調査にもとづき影響を予測し評価したうえ、いずれかの案を選択し、その判断過程を一般に公表し、関係各機関、団体、住民等の意見をきいて、再検討し、最終的な決定をするもの。これは判断形成方式とよばれるもので、アメリカのNEPAはこれに属します。判断形成方式にもとづく環境アセスメントは、幅広い視野と情報をもとに総合的、客観的判断形成によって合理的な環境管理を確保するためのアセスメント方式として優れています。しかし日本ではこの方式がほとんどとられていません。大規模宅地開発は自然、社会、文化、歴史などの広範な環境に影響を及ぼすため、総合的かつ客観的判断にもとづくアセスメントが必要とされ、判断形成方式アセスメントが適切です。
環境アセスメントは、各種の代替案について環境影響を比較評価し環境面からみて最善の施策を決定するものであるため、具体的な開発計画が決定しているものについて行なうのでは意味がありません。理想的には、府県の総合土地利用計画の段階でアセスメントがなされなくてはなりません。つまり、府県の土地全域についての生態系を含む環境の現況について調査し、それらに及ぼす影響の最も少ない開発可能地域はどこかを検素して生態学的土地利用計画をたて、無秩序な開発を防止すべきです。このような生態学的土地利用計画の策定評備を、アメリカでは環境評価ていい環境影響評価と区別されています。このような環境評価にもとづく適正な立地が定まると、大規模宅地の構想段階から環境影響評価を行なわなければなりません。つまり、各種の近隣地帯への交通網も含む構想案について環境への影響の比較検討がなされねばなりません。さらに、具体的な計画案、実施、建設案、個別的な道路、公共施設計画、管理計画等についても、それぞれアセスメソトがなされなければなりません。
環境の現況把握、実態調査は影響評価について不可欠であるため、従来の資料のみならず、計画地およびその周辺、過去の実施例の実態等に加えて住民の意見をも聞き、範囲、内容を決め、自然的、科学的、社会的、歴史的、文化的客種項目について調査すべきです。調査の客観性を担保するには、住民や専門家の参加が要求されます。かつて三島、沼津コンビナート計画のための調査では、政府側の調査の欠陥が住民側の調査によって指摘され計画を中止した例があります。
判断形成という面を重視すれば可能なかぎり環境への悪影響の少ない案を考えるべきだということになります。その場合の限界として、ある程度以上の悪影響を与える場合は許されないという意味での基準が問題となりますが、これは具体的安全性という点から考えるぺきで、環境基準や排出基準のような抽象的、一般的基準では不十分です。現在の科学水準では具体的安全性の程度が明確でない場合、十分な安全率がとられねばならず、住民の体験等が基準を定める大きな要素になります。
日本でアセスメントと称して行なわれているもののほとんどは代替案の検討を欠いています。しかしこれを欠いては比較するものがないため、視野の狭い、特定の計画を実施するための免罪符的なアセスメントになってしまいます。代替案が多数考えられ住民に公表されれば意見も幅広く出、それらの意見を取り入れて計画を考え直すことによってより適切な計画決定をなすことが可能になるのです。代替案は、計画を実施せずに問題を解決する案、位置、規模、内容等にわたり各種のものが必要です。
計画案の公開は、住民の意思を汲み取り、幅広い情報を集め、責任あるアセスメントを行なううえで不可欠の手続です。公開の対象は、構想、計画の内容、調査の資料、結果を始め評価案報告書にいたるまでを含みます。後者には評価結果だけでなく結論にいたる判断過程が書かれなければなりません。公開方法は、わかりやすく、いつでも容易に閲覧利用できるものでなければなりません。
宅地開発によって近隣住民のみならず、生態系の変化によって下流河川等の住民にも影響が及ぶために広範囲にわたり住民、専門家の意見をきく必要があります。参加の方法は多様であればあるぽどよく、調査に対する住民の参加、公聴会、評価書案に対する意見書の提出等が行なわれ、そこで出た住民等の意見と、それをどのように取り入れたかについて最終報告書のなかに記載し、公表すべきです。
以上の手続が完了するまでは事業またはそれに対する許認可を行なってはなりません。事業実施中、実施後においては事後監視、是正が行なわれなければなりません。

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