収用委員会の補償金額への不服

土地収用法は、補償額については収用委員会が裁決することとしています。その根拠は、起業者と被収用者の間の合意によっては補償額が決定されない場合が多いので、公平な立場で当事者に正当な補償額を提示することにあります。それ故、その裁決額に不服のある場合には、理論的には、裁決の取消、変更を求めることができます。しかし、補償金額の多寡に関する争いを終局的に解決するためには、収用委員会に再び裁決させるというよりは、補償関係の直接の当事者である起業者と被収用者の間で争わせるほうが合理的だといえます。そこで土地収用法は、まず、裁決の審査請求においては、損失補償についての不服をその裁決についての不服の理由とすることがてきないと規定し、訴訟で補償金の増減を求める場合には、当事者訴訟によるべきこと、つまり裁決額に不服のある者は、その人が被収用者であれば起業者を、起業者であれば被収用者をそれぞれ被告として、裁決書の送達をうけた日から三か月以内に補償金の増減を求める訴えを提起しなければならないと定めています。このように、この訴訟は、実質的には行政庁たる収用委員会の処分に関する不服であるか、訴訟の形式として、法律上、あえて実体法上の法律関係の当事者が原告、被告となるべきものとされているということから、形式的当事者訴訟とよばれます。

スポンサード リンク
間取り

補償金の増滅を求める訴えにおいては、被収用者が裁決額の増額を、起業者がその滅額ないし過払額の返還を求めることになります。しかし、この訴えについて、大きく分けて、形成訴訟説と確認ないし給付訴訟説とが対立しています。
形成訴訟説は、この訴えが実質的には収用委員会の裁決額の取消、変更を求める抗告訴訟たることに重点をおき、その訴訟によって具体的な損失補償請求権が形成されるものとみられます。しかも、この説は、収用委員会の裁決に公定力を認める場合が普通なので、裁決額の取消、変更を求めることなしに、被収用者が増差額の給付を、あるいは起業者が過払い額の返還を請求することは許されないとします。
確認ないし給付訴訟説は現在ではこの説が有力となっていますが、この説は、収用に伴う具体的損失補償請求権は、憲法二九条三項により当然に発生するものとみて、この訴えは、補償請求権を形成するものではなく、憲法上すでに客観的に確定している補償額を確認するものにすぎないこと、また、収用委員会の補償裁決は公定力ある処分と当然にみなす建前にはなっていないこと、あるいは、原告の権利救済ということからすれば形成訴訟説はいかにもまわりくどいことなどを理由に、土地取用法一三三条がこの訴えを当事者訴訟の形式によらしめているのは、裁決額の取消、変更を求めなくても、いきなり確認ないし給付の訴えを提起できる趣旨であると解しています。この説をとると、補償額の取消、変更の請求は、給付の訴えの請求の理由として述べれば足りますが、例えば被収用者が増差額の給付を求めずに裁決の変更のみを求めてきた場合や、増差額の給付とあわせて裁決の変更を求めてきた場合でも、変更の請求を補償総額の確認を求める趣旨と解しうる余地があるため、訴えを不適法として却下しないでもよいとするのが正当です。
前述のように、補償金の増減を求める訴えにおいては、原告が被収用者であるときは起業者を、起業者であるときは被収用者をそれぞれ被告としなければなりません。しかし、事業の執行者と費用負担者が異なる場合、起業者を誰とすべきかについて争いがあります。例えば都市計画事業のように行政庁が事業の執行者と法定されている場合に、その行政庁を収用法上の起業者とみて訴えの当事者適格を認めることができるかどうかでは、この問題について、形式論埋的には、権利、義務の主体となりえない行政機関たる行政庁を起業者として、権利、義務の確認や給付を求める訴えを提起することはできず、費用負担者である行政主体を相手方とすべきです。しかし、行政庁を相手どって訴訟を提起した場合でも、実質的には、当該行政庁の所属する行政主体を拘束して、同一効果が得られると解して、行政庁を被告とすることもできると解してよいと思われます。
被収用者が原告となる場合は、立証責任は被収用者が負うべきものとすることに異論はありませんが、起業者が原告となる場合には説が分かれており、ある説は、この訴えにおいては債務の不存在確認ないし不当利得の返還を求めることになるので、民事訴訟の原則にならい、被収用者の側に裁決額が正当補償額を上回らないことを立証する責任があるとしますが、他の説は、すでに公平な立場で収用委員会が判断を下しているために、これに異議を唱える起業者の側に立証責任があるとして、説が対立しています。
同一人に対する一個の土地の収用において、収用裁決が土地の補償、建物の補償、移転料、営業補償などについて、それぞれ補償額を明示している場合に、被収用者が、そのうちの一部の項目についてのみ補償額が過少であるとしてその増額を求めるとき、起業者が他の項目の補償額が過大であるから補償額全体としてみれば、正当な補償額であるといいうるかどうかという問題がありますが、現在では、学説判例ともこれを認めています。

間取り
指導要綱行政の由来/ 要綱行政の長所短所/ 土地にかかわる災害防止法制/ 白地地域における開発規制/ 土地取引の規制/ 宅地開発と環境破壊/ 地盤沈下や土壌汚染の防止/ 開発協定にもとづく開発負担金/ 公共事業に伴う事業損失/ 収用委員会の補償金額への不服/ 区画整理事業計画への取消訴訟/ 公有水面埋立てによる不利益/ 宅地造成等規制法による規制/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー