公有水面埋立てによる不利益

公有水面埋立ては陸地を造成して種々の人間活動の場を提供するという利点を持つ反面、次のような不利益ないし被害をもたらします。第一に、埋立ては水面を陸地化するものです。そのこと自体により、埋め立てられる海域に存した漁業権は目的を失って消滅してしまい、当該海域を利用してきた一般公衆の利益も侵害されます。第二に、埋立作業により汚濁水が流出し、局辺海域の水質が悪化します。その結果、周辺海域の漁業権者の漁業に被害を与えるほか、近隣の入浜権も同様に侵害されます。第三に、埋立地上における人間活動や工場操業などにより大気汚染、水質汚濁などの環境被害が生じます。特に発電所の温排水は重大な問題となっています。このような被害に不服ある者が埋立てを阻止するために有する裁判上の手段としては、埋立免許の取消訴訟という坑告訴訟と、埋立工事の差止を求める民事訴訟、仮処分の二つが考えられます。

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公有水面埋立免許は行政行為であるため、抗告訴訟の一種である取消訴訟の対象となることに問題はありません。しかし、取消訴訟においては、誰でもが訴えを提起する資格を有する民衆訴訟と異なり、訴えを提起できるのは、取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者にかぎられているので、ここでいう法律上の利益とは、誰が訴えを起こす原告適格を有するかが常に争いの対象となってきました。従来の通説、判例では、抗告訴訟を個人の権利ないし法的利益を救済する制度と把握し、実定法規が個人に権利を与えその利益を保護する趣旨であれば原告適格を認め、逆に、実定法規の趣旨が個人の利益保護というよりも公法的規制にすぎない場合には、たとえ行政行為により国民が重大な不利益をうけようとも、それは反射的利益ないし事実上の利益の侵害にすぎず、原告適格は認められないと解してきました。公有水面埋立法五条は、埋め立てられる海域の漁業権者の権利を正面から承認しているので、彼らが埋立免許により権利を害されるものとして、埋立免許の取消訴訟を提起する原告適格を有することに異論はないといえます。しかし、周辺海域で漁業を営む者や近隣の住民、海水浴場業者、釣具店、近隣住民などの権利を保護する規定は公有水面埋立法のどこにも見当らず、これらの者は、前述のように、埋立てによって種々重大な不利益を被るにもかかわらず、これらの不利益はたんなる反射的ないし事実上の不利益として、原告適格を根拠づけることはできないことになりそうです。こういった考え方が従来の通説、判例でしたが、最近では、諸外国でも、日本においても、従来反射的利益と解されてきたものを漸次公権ないし個人的利益と解するとが、事実上の不利益でも重大なものであれば、法律上の保護に備するものとみて原告適格を根拠づけるといった、反射的利益の公権化ないし、原告適格の拡大の傾向が判例、学説ともに顕著です。この傾向は埋立免許をめぐる紛争にも波及し、近年では、公有水面埋立免許にもとづいてなされる埋立工事海面に近接して養魚業を営んでいる者が、その埋立工事の実施および埋立完成によって海水が汚濁され、魚類の養殖に適する海水の取水が不可能となると主張して埋立免許の執行停上を申請した事件で、申立人適格が認められた例があり、伊達火力発電所理立免許取消訴訟一審判決でも、埋め立てられる海域の周辺で漁業を営む者に原告適格を承認しています。
埋立免許の取消判決を得ずに、直接に、埋立免許にもとづく埋立工事の差止を求めうるかどうかが問題となってきます。埋立工事は埋立免許と異なりたんなる事実行為であるとみれば、それを民事訴訟で差し止めるのになんの障害もないはずですが、埋立工事は埋立免許によって形成された法律関係を埋立権者において実現する行為であって、埋立工事が全面的に差し止められることは、埋立免許そのものを取り消したのと実質的に異ならなくなってくるともみられます。他方、埋立免許のような公権力の行使については、民訴法の定める仮処分は禁止されており、出訴期間の制約もあります。そこで埋立免許にもとづく埋立工事について、全面的に仮処分を許し、また、出訴期間を経過してのちに民訴の提起を認めることは、これらの法制度の趣旨に反し、埋立権者の地位を不安定ならしめるのではないか、といった疑間があります。そうなると海を埋め立ててはならないという主張は埋立免許取消訴訟においてなすべく、民事訴訟や仮処分ではできないことになります。しかし、この説でも、海を埋め立てること自体は認めつつ、その工事方法とか、埋立地上の操業による被害を民事訴訟で争うことは当然に許されるところです。また、環境権と入浜権が私権として承認されるならば、それは理立免許手続で正当に配慮されていないから埋立免許によって奪われることがなく、これらの権利にもとづいて民事訴訟によって埋立てそれ自体を阻止することも許されることになります。

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